
Vol.3 ヨーロッパで広く発生するダニ媒介脳炎
ダニ媒介脳炎(以下TBE)は、ヨーロッパ域内でも特に西ヨーロッパと北ヨーロッパで局所的に流行することがあります。世界の他の流行国を合わせると、毎年約5,000~10,000件の症例が報告されていますが、その数は年により大きな変動があります。
ダニ媒介脳炎(TBE – Tick-Borne Encephalitis)
イタリア語 Encefalite Trasmessa da Zecche
オランダ語 Tekenencefalitis
スペイン語 Encefalitis Transmitida por Garrapatas
チェコ語 Klíšťová Encefalitida
ドイツ語 Durch Zecken Übertragene Enzephalitis
ハンガリー語 Kullancsos Agyvelőgyulladás
フランス語 Encéphalite à Tiques
ポーランド語 Kleszczowe Zapalenie Mózgu
症例と疾患発生率
症例がもっとも多いとされているのはシベリアを含むロシアですが、疾患発生率がもっとも高いのは、バルト諸国 (エストニア、ラトビア、リトアニア)、チェコ共和国、スロベニアと、いずれもヨーロッパ域内の国々となっています。他にも、症例が報告されている、あるいは流行地域が知られているヨーロッパ諸国は、オーストリア、ベラルーシ、ベルギー、ボスニア、ブルガリア、クロアチア、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、ハンガリー、イタリア、リヒテンシュタイン、モルドバ、オランダ、ノルウェー、ポーランド、ルーマニア、セルビア、スロバキア、スウェーデン、スイス、ウクライナ、イギリスと、広域にわたります。
TBEの症例数については、ヨーロッパ疾患予防管理センター(European Centre for Disease Prevention and Control)のウェブサイトに掲載されている「人口10万人あたりの国別感染性ダニ媒介性脳炎確定症例の報告率」を示した地図をご参照ください:
www.ecdc.europa.eu/sites/default/files/images/tick-borne-encephalitis-2-december-2024.png
Map produced by ECDC on 02 December 2024. Cases reported by Finland without specified importation status or place of infection have been classified as autochthonous.
ダニ媒介性脳炎(TBE)感染の経緯
TBEは中枢神経系に影響を及ぼす感染症で、感染したダニに噛まれることで起こります。潜伏期間には幅があり2〜28日とされていますが、多くの場合は1〜2週間以内に症状が現れます。
第1段階:
発熱、疲労感、頭痛、筋肉痛、吐き気など
第2段階:
神経系に影響が出始め、髄膜炎(脳と脊髄の周囲の炎症)や脳炎(脳の炎症)などの症状
※症状のない感染症も見られます。
人への影響
TBEが蔓延している地域では、屋外で活動する人への感染リスクが高くなります。ウイルスには3つのサブタイプがあり、病気の重症度はウイルスの種類によって大きく異なります。
ヨーロッパ型サブタイプ:
死亡率は0.5〜2%。感染者のうち最大で10%が長期または永続的な神経学的問題に悩まされます。
極東型サブタイプ:
死亡率は最大35%。長期または永続的に重篤な神経学的問題の発生率が高くなります。
シベリア型サブタイプ:
死亡率は1〜3%で、患者は慢性または長期の病気を発症する傾向があります。
感染経路
TBEは、感染したダニに噛まれるか、感染した未殺菌乳製品を摂取することで感染します。妊婦と胎児の間を除いては、人から人への感染は確認されていません。
ワクチン接種と治療法
TBE予防のためのワクチンは存在するものの、特別な抗ウイルス治療はありません。髄膜炎、脳炎、髄膜脊髄炎は、症候群の重症度に応じて入院と支持療法(TBEそのものに伴う症状や、治療による副作用・合併症・後遺症による症状を軽くするための予防・治療・ケア)が必要です。
予防策
ワクチン接種はTBE を予防するもっとも効果的な手段の 1 つです。感染の可能性が高い場所を訪れる方は予防接種を検討しましょう。
最も基本的かつ有効な予防策は、そもそもダニに噛まれないようにすること。流行期に草の茂った場所に入ったり、山歩きなどをする場合には、肌の露出を控え、屋外活動後には体や衣服にダニが付いていないかを確認しましょう。また、低温殺菌されていない乳製品の摂取は控えましょう。
参考資料:ECDP(www.ecdc.europa.eu)
https://living-in-eu.com/health/202507_vol03_tbehttps://living-in-eu.com/wp-content/uploads/2025/07/03_2507_tbe2.jpghttps://living-in-eu.com/wp-content/uploads/2025/07/03_2507_tbe2-150x150.jpgダニ媒介脳炎(以下TBE)は、ヨーロッパ域内でも特に西ヨーロッパと北ヨーロッパで局所的に流行することがあります。世界の他の流行国を合わせると、毎年約5,000~10,000件の症例が報告されていますが、その数は年により大きな変動があります。 ダニ媒介脳炎(TBE – Tick-Borne Encephalitis) イタリア語 Encefalite Trasmessa da Zecche オランダ語 Tekenencefalitis スペイン語 Encefalitis Transmitida por Garrapatas チェコ語 Klíšťová Encefalitida ドイツ語 Durch Zecken Übertragene Enzephalitis ハンガリー語 Kullancsos Agyvelőgyulladás フランス語 Encéphalite à Tiques ポーランド語 Kleszczowe Zapalenie Mózgu 症例と疾患発生率 症例がもっとも多いとされているのはシベリアを含むロシアですが、疾患発生率がもっとも高いのは、バルト諸国 (エストニア、ラトビア、リトアニア)、チェコ共和国、スロベニアと、いずれもヨーロッパ域内の国々となっています。他にも、症例が報告されている、あるいは流行地域が知られているヨーロッパ諸国は、オーストリア、ベラルーシ、ベルギー、ボスニア、ブルガリア、クロアチア、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、ハンガリー、イタリア、リヒテンシュタイン、モルドバ、オランダ、ノルウェー、ポーランド、ルーマニア、セルビア、スロバキア、スウェーデン、スイス、ウクライナ、イギリスと、広域にわたります。 TBEの症例数については、ヨーロッパ疾患予防管理センター(European Centre for Disease Prevention and Control)のウェブサイトに掲載されている「人口10万人あたりの国別感染性ダニ媒介性脳炎確定症例の報告率」を示した地図をご参照ください: www.ecdc.europa.eu/sites/default/files/images/tick-borne-encephalitis-2-december-2024.png Map produced by ECDC on 02 December 2024. Cases reported by Finland without specified importation status or place of infection have been classified as...LiE 編集部LiE 編集部 toyo@a-concept.co.ukAdministratorLiving in Europe