オーストリア 住まいの探し方から契約まで
物件の探し方
オーストリアでは、賃貸でも購入でも、さまざまな物件から選択することができます。ワンルームマンションや都会のアパート、山間であれば木造キャビンやコテージまで、個々のニーズと好みに合ったものが見つけられるでしょう。古い家屋も魅力的ですが、新しい建物の多くは高品質で環境に優しい建築であることも心に留めるべきポイントといえるでしょう。
物件に関する情報は、以下の方法で入手できます。
不動産業者(Immobilienmakler/Immobilienmaklerin)
不動産業者は電話帳の「不動産(Immobilien)」の項目で探します。知り合いに紹介してもらうのもよいでしょう。オーストリアの不動産業者は、不動産仲介の国家資格(National Certificate in Real Estate Brokerage)取得が必須なため、市場の動向を的確に把握している地元の不動産エージェント(Immobilienmakler)は、最適な物件を見つけるのに大きな助けとなるでしょう。学校制度、飲食店、公共交通機関の利便性など、地域に関するさまざまな情報にも精通していることが期待できます。不動産に関する法律や規制についてのアドバイスをし、買い手と売り手間の連絡役も務めます。一般的に、不動産業者の手数料は物件価格の3%程度です。
駐在員の顧客が多く、居住許可の登録から移転の手伝いまでしてくれるCrown Consultingや、ウィーンに拠点を置き高級不動産の賃貸を専門としているImmototalは、土地勘のない外国人には心強いでしょう。
インターネットサイト
人気のオンラインプラットフォームを使って物件を探すこともできます。フィルターを使うことで、希望の条件(価格、立地、物件タイプなど)に基づいて検索範囲を絞り込むことができます。 主なウェブサイトには、日本語で情報を提供しているProperstarの他、下記のものがあります。
Willhaben
Engel & Völkers
Tranio
Housing Anywhere
Immo Scout24
Flat IO
Tempo Flat
All Luxury Apartments
Silver Door
Privatimmobilien
ホリデーレンタルで有名なAirbnbでも、長期貸しの物件が見つかることがあります。
新聞のクラシファイド
新聞広告(特に週末版)にもテナント募集の広告が掲載されます。住まいのエリアがすでに絞れている場合には、ローカル新聞が便利でしょう。
学生用物件
オーストリアでは大学キャンパス内の居住は一般的ではなく、多くの学生は学生寮か民間の宿泊施設を利用します。基本的に、大学側が入学時に自動的に部屋が割り当てることはありませんので、学生は自分で住む場所を見つけないとなりません。
相部屋または個室を最も手頃な価格で提供しているのは、なんといっても学生寮(University Domitories/Wohnheim)でしょう。基本的なアメニティが備わっており、教育機関に比較的近い場所に位置していることが多いようです。まずは入学予定の大学に学生寮があるか問い合わせてみましょう。
学生に特化して住まいを紹介しているウェブサイトには以下のものがあります。
OeADハウジングオフィス
家具付きの住居を提供しています。これらは、学期中だけでなく夏季休暇中でも利用可能です。
home4students
会員登録をすると、大学寮、アパートシェア、学生用アパートなどを紹介。オーストリアで奨学金を受けている18歳から26歳の学生には特に便宜を図ってくれます。
STUWO
学生寮を運営・建設する、「素晴らしい暮らし。素晴らしい学び」がモットーの非営利団体。
ÖJAB
ウィーン(Wien)、グラーツ(Graz)、ザルツブルク(Salzburg)、アイゼンシュタット(Eisenstadt)、クレムス(Krems)、メードリング(Mödling)、バート・グライヒェンベルク(Bad Gleichenberg)の各都市に、手頃な価格で快適な学生・若者向け宿泊施設を提供。ウィーンの寮の多くには、ジムやサウナなどの充実した設備が備わっています。
賃貸法MRGを知る
オーストリアの不動産賃貸市場は非常に特殊で分かりにくいといわれます。不動産屋やエージェントを通さずに借りる場合には、気をつけるべきことがいくつかあります。
借りる物件に賃貸法(Mietrechtsgesetz/MRG)が完全に適用しているか、部分適用か、あるいはまったく適用されないかによって家賃が大きく左右され、大家が独自の裁量で家賃を決定できるわけではありません。賃貸法適用の違いは賃料水準や当事者の権利と義務に影響するため、大家とテナントの双方が理解していることが重要です。
2.1賃貸法(MRG)が完全に適用している場合
・オーストリアにおける第二次世界大戦終結日である1945年5月8日以前に建設され、2戸以上を有する建物
・第二次世界大戦後から1953年までに建設され、2戸以上を有する建物、および1953年以降に国の補助金を受けて建設された建物
オーストリア各州では、1平方メートルあたりの基本指標賃料率(Richtwertmietzins)が定められています。家賃には、下記のような要因が影響します。
・立地:中心部に位置し、インフラが整備されていると家賃が上がる可能性有り
・住まいの状態:改装や近代化が行われていると家賃が上がる可能性有り
・エレベーター:エレベーターのない高層階は家賃が下がる可能性有り
賃貸法ではさらに、賃貸物件を「広さ」「状態」「アクセスの良さ」に基づいて4つのカテゴリーに分類しています。
カテゴリーA
通常、広さ30平方メートル以上で、簡易キッチン、オーブン、廊下、最新のバスルームが備わっています。洗濯機、食器洗い機、冷蔵庫はオプションですが、多くの場合は賃貸契約に含まれています。また、共用暖房システムも含まれます。
カテゴリーB
寝室、簡易キッチン、廊下、最新の小さなバスルームなど、設備自体はカテゴリーAとほぼ同様に備わっています。
カテゴリーC
使用可能な状態で、水道とトイレが備わっています。
カテゴリーD
水道とトイレは屋内にはありません。したがって、MRGに該当する物件の価値は、基本賃料に加えて、物件の状態、カテゴリー、その他多くの要因によっても決まります。
2.2賃貸法(MRG)が部分的に適用する場合
具体的には、以下の物件が対象となります。
・第二次世界大戦後に建設されたすべての分譲マンション
・1953年6月30日以降に国の支援を受けずに建設された建物内の建物
・2001年12月31日以降に既存の建物に屋根裏部屋などが増築された建物
・2006年以降に増築された建物
上記のような場合には賃料制限が緩和され、家賃は当該地域における類似物件の市場価格の「適正賃料原則」(Adequate Rent/Angemessener Mietzins)に基づいて決定されることが多いようです。
2.3賃貸法(MRG)適用外の場合
家賃は法的制約を受けることなく、大家とテナントの合意により自由に決定されます。これには、一戸建て住宅、2戸以下の独立した居住ユニットを有する建物内のアパート、ホリデー用アパート、2006年以降に建設された新築物件などが含まれます。
賃貸料総額の構成要素
オーストリアの賃貸料はいくつかの主要な要素で構成されています。
基本賃料(Hauptmietzins)
賃貸物件の使用料としてテナントが支払う基本料金。この金額は賃貸法MRGの適用対象かどうかに加え、前述したさまざまな要因によって決まります。
管理費(Betriebskosten)
ゴミ収集、水道、下水道などの公共料金の支払いを含む追加費用
特別費用(besondere Aufwendungen)
エレベーターやランドリーなどの共用設備の維持費
家具レンタル料(Entgelt für mitvermietete Einrichtungsgegenstände)
賃貸物件が家具付きの場合は、家具の使用料として追加料金が請求される場合があります。
付加価値税(Umsatzsteuer)
通常は総賃料の10%ですが、家具やガレージのレンタルなど特定のサービスについてはさらに高くなることもあります。
物件の賃貸価格決定には多くの要因が絡むため、これらの微妙な差異を理解するのは困難かもしれません。オーストリアには、大家が賃料額を正しく算定できるよう支援する弁護士やコンサルタントの専門分野がある一方で、テナント側には、請求された賃料の正確性を確認し、大家側に悪意がある場合には裁判所に賃料額の再計算と不当な請求の回収を求めるための弁護士も存在しています。
賃貸契約(プロセスやリスク)
オーストリアで不動産を借りるということは、単に適切な賃貸物件を見つけて契約書に署名するだけではありません。法律に絡む権利と義務の明確な理解が求められます。契約締結時のミスや誤解は、深刻な経済的・法的結果につながる可能性がありますので、気をつけましょう。
4.1オーストリアにおける賃貸契約の種類
賃貸契約には主に2つの種類があります。
無期限契約(Unbefristeter Mietvertrag)
契約終了日が定められていないため、契約を解除する場合、テナントは、暦月の末日の少なくとも1カ月前までに書面で通知する必要があります。後々の紛争を避けるため、通知は受領確認付きの書留郵便で送付しましょう。一方、大家は法的に正当な理由がある場合にのみ、無期限契約を解除することができます。
有期限契約(Befristeter Mietvertrag)
中期および短期の賃貸借でよく見られる契約。通常、最低3年間の契約期間で締結されます。テナントは、賃貸借開始から1年後から、3カ月の通知期間を経て契約を解除することができます。契約内容にもよりますが、固定契約が最長10年続くこともあります。
4.2賃貸契約締結の重要なプロセス
物件の内覧と物件の状態に関する話し合い:テナントが物件を視察し、設備、状態、家具・家電、賃料、敷金、運営費について大家と話し合います。
賃貸借契約の仮申込(Mietanbot)
賃料、期間、開始日、敷金といった重要な条件を記載した、テナントからの書面による提案です。「拘束力あり(bindend)」または「義務あり(verpflichtend)」と記載され、これに大家が承諾すると法的効力が発生します。
賃貸借契約(Mietvertrag)に署名
賃貸借契約に基づいて、契約書(下記の内容を含む)が作成されます。
・物件の住所と説明(広さ、階数、家具の有無)
・契約期間と更新規則
・賃料体系(基本賃料、敷金、暖房費)
・敷金条件(Kaution)
・メンテナンスおよび公共料金の支払い義務
・解約条件、通知期間、および例外事項
・ペット、改築、転貸に関する規則
上記のいずれかが曖昧、あるいは省略されていると後のリスク要素となりますので、よく確認しましょう。例えば、大家が不当なアクセスや管理権を与える条項を追加する場合もありますが、これには異議を唱えるのが賢明です。
引渡しプロトコル(Übergabeprotokoll)
入居時の住宅の状態が記録されます。家具の有無、目に見える損傷、清潔さなどが記載されている必要があり、退去時のクレームを解決するために不可欠となります。
※契約書に記載されている家電製品などの経年劣化や故障に関しては、大家が交換または修理する義務があります。しかしテナントの落ち度で壊した場合にはテナント自身が修理や交換をする義務があり、交換した物品は退去後も賃貸物件に残します。このような万が一の問題発生に備えて、多くのテナントは住宅保険や賃貸人組合に加入しています。
住民登録(Meldezettel)
テナントは入居後3営業日以内に市区町村役場で住民登録を行う必要があります。
賃貸オファー(Mietanbot)
大家が承諾することで法的拘束力を持つ文書。「物件の住所」「合意された賃料と費用」「賃貸期間と開始日」「保証金額」「テナントの署名」「大家の承諾・署名」が記載されます。大家が承諾し署名した時点で契約書締結となります。大家が後日一方的に条件を変更した場合、それは新たな契約の申し出とみなされるためテナントはそれを拒否する権利があります。
賃貸契約書(Mietvertrag)
中心的な法的文書となる、最終的な賃貸契約書。必須条項として「物件の正確な住所と説明(広さ、階数、家具の有無)」「賃貸期間(固定または無期限)」「賃料とその内訳(管理費の有無、暖房設備の有無など)」「敷金(Kaution)の金額と返還条件」「支払条件(支払期日、口座情報)」「共用部分があればその使用権(階段、地下室、駐車スペース)」「解約条件(通知期間、特別な事情の詳細)」「物件の損害および軽微な修理に対する責任」「ペット、転貸、リフォームに関する制限事項」が含まれます。
重要な条項が曖昧であったり、欠落していないことをしっかり確認しましょう。大家が規定を簡素化したり、一方的に新条項を挿入したりすることもないわけではありません。署名は、契約書を完全に理解した上でするべきです。書面によるやり取りはすべて保管し、必要であれば法的助言を求めましょう。テナントは賃貸借法MRGによって保護されてはいるものの、保護を制限する文言が契約書に含まれている場合もあります。疑問点がある場合には、法律顧問または住宅仲裁機関(Schlichtungsstelle)に相談することをお勧めします。
※賃貸契約の適切なアドバイスサービスを受けたり、賃貸借契約書または購入契約書の合法性を確認するには、テナント協会(Mietervereinigung)、テナント保護協会(Mieterschutzverband)、消費者情報協会(Verein für Konsumenteninformation/VKI)、労働会議所(Arbeiterkammer)のいずれかに連絡しましょう。
家の種類
戸建て住宅(Einfamilienhäuser)
コテージ、ヴィラ、邸宅などが含まれ、そのほとんどは郊外に位置しています。窓からブドウ畑の素晴らしい景色が見えるデープリング(Döbling)や、森や山々が常にすぐ近くにあるペンツィング(Penzing)がそのよい例といえるでしょう。大家族やペットを飼っている人に人気。
タウンハウス(Reihenhäuser)
アパートと戸建て住宅の利点を兼ね備えているのが特徴です。都市部では小さな集合住宅にまとめられていることが多く、各戸に専用の玄関と隣接する屋外スペースを持っています。郊外の暮らしと都会の快適さを融合させた物件です。
メゾネット(Maisonette-Wohnungen)
集合住宅に設けられた2階以上にまたがる物件。高い天井と大きな窓が魅力です。居住空間と仕事部屋を異なる階に分けて配置したいという、自宅で仕事をする方や書斎が必要な方にとっては便利な造り。都市部では、歴史的建造物の内部をメゾネット型に改築した物件をよく目にします。
ペントハウス(Penthäuser)
マンションの最上階がペントハウス。都市部に多く見られ、広々とした間取りと大きな窓、テラスやバルコニーへのアクセスがあり、中にはプールを備えている物件もあります。ウィーンでは、「最上階のマンション」と「ペントハウス」は区別されており、後者は、全周に渡ってテラスやバルコニーが設けられているのが一般的です。歴史的な地域にいながら、贅沢でモダンな環境を求める人に人気。
アパート(Wohnungen)
歴史のある地区であれ、近代的な開発地区であれ、アパートはオーストリアの一般的な住宅形態。市内中心部には特に多く、ワンルームマンション、1ベッドルーム、2ベッドルーム、複数ベッドルームと、サイズにはバリエーションがあり、学生、独身者、カップル、大家族など、どのような家族構成にも適したアパートが存在しています。
シェア(Wohngemeinschaften)
若者や学生にもっとも人気のある宿泊形態である民間のシェアアパート(Wohngemeinschaften)。テナントは個室を持ち、キッチンやバスルームを共有するのが一般的です。シェアアパートはColiging.comで検索できます。
ゴミ収集のルール
オーストリアでは、各家庭が廃棄物処理の申請(Antrag auf Abfallentsorgung Stellen)を提出する必要があります。申請は、土地の所有者、賃借人(居住者/テナント)、または不動産管理者が行います。借家の場合、廃棄物処理の登録は所有者または不動産管理者が行うのが一般的です。廃棄物処理の手続きの方法や内容は地域によって異なるため、居住地域のゴミ収集/廃棄物処理の登録および解約手続きについては、各市町村に問い合わせましょう。ゴミ収集の登録に期限はありませんが、登録自体は必須です。賃貸アパートのように、大家が廃棄物収集の登録責任を負う場合でも、大型廃棄物の処分は必ず入居者自身の責任となります。
定期公共ゴミ収集への物件登録申請は無料ですが、ゴミ収集容器の料金は物件によって異なります。
ゴミの分別は通常、ゴミ箱の色でわかりやすく示されています。
ウィーンの場合は、下記のようになっています
・黒:一般ゴミ(Restmüll)- リサイクルできない燃えるゴミ
・緑/赤のフタと赤のステッカー:紙類(Mülltrennung/Roter Deckel und Roter Aufkleber)- 新聞、雑誌、段ボールなど
※カーボン紙、パンチ紙、感熱紙、ハンカチ、ペーパータオル、ウェットティッシュ、キッチンペーパー、コーティングされた段ボールの容器時は黒の一般ゴミへ
・黄(袋の場合も有り):(Gelbe Tonne/Gelber Sack)- プラスチック、金属、複合包装廃棄物、ペットボトル、テトラパック、飲料用カートン、缶、食品トレイなど
ゴミをどの箱に捨てたらよいか迷ってしまったら、こちらのウェブサイトで、「ピザの空き箱(キレイな場合)(Pizza box – clean, without food leftovers)」、「ピザの空き箱(残りカスが付いている場合)(Pizza box – very dirty)」、「絆創膏のパッケージ(Blister card [aclagomg)」、「窓ガラス(Window glass)」など、具体的なゴミの名前を英語かドイツ語で検索して確認することができます。
オーストリアの日系不動産会社
残念ながら、オーストリアには現在のところ日系の不動産屋はありません。「オーストリア日本人会(Japanische Gesellschaft in Österreich)」では会員に対し、会報誌を通して住宅賃貸情報や帰国時の不用品の売買などの情報交換の場を設けているようです。