ベルギーの教育システム

ベルギーの教育システムは、同国の多言語・多文化的な特徴を反映しており、非常にユニークな構造を持っています。教育の管理は連邦政府ではなく、言語ごとの「言語共同体」によって行われています。

教育の管理体制

ベルギーには以下の3つの言語共同体があり、それぞれが独自の教育制度を運営しています。
・フラマン語共同体(主に北部のフランドル地域)
・フランス語共同体(主に南部のワロン地域とブリュッセル)
・ドイツ語共同体(東部の小規模地域)
このため、教育内容や学校制度、教員の養成方法などは共同体ごとに異なります。

教育の段階と制度

就学前教育(2歳半~6歳)
・義務ではありませんが、ほとんどの子どもが通園します。
・基本的な社会性や学びの準備が行われます。

小学校(6歳~12歳)
・義務教育の開始段階。
・読み書き、算数、社会、理科などの基礎を学びます。

中等教育(12歳~18歳)
中等教育は6年間で構成され、途中から以下の4つのコースに分かれます。

1.一般教育(ASO):大学進学を目指す理論中心の教育
2.技術教育(TSO):実技と理論を組み合わせた教育
3.職業教育(BSO):職業スキルに重点を置いた実践的教育
4.芸術教育(KSO):音楽や美術など、芸術分野に特化

高等教育(18歳以降)
・大学や高等専門学校に進学
・ヨーロッパ共通の「ボローニャ・プロセス」に基づいた学位制度。学士(Bachelor)→ 修士(Master)→ 博士(PhD

学校の種類と教育の自由

ベルギーでは、保護者は子どもをどの学校に通わせるかを自由に選べます。学校の種類は以下の3つに分類されます。

1.公立学校(共同体が運営)
2.地方自治体の学校(地方政府が運営)
3.自由学校(主にカトリック系の私立だが国から補助を受けている)

どの学校でも授業料はほぼ無料で、教育の質も高く保たれています。

教育の特徴と課題

特徴

・多言語教育が充実(仏語・蘭語・独語・英語)
・進路選択の自由が広く保障されている
・国際的な高等教育制度(学位互換性がある)

課題

・言語共同体間で教育の質に格差がある
・移民家庭や低所得層への教育支援が求められている

ベルギーの教育制度は、多様性や自由を尊重する先進的な仕組みが整っており、子どもたちの個性や進路に応じた教育が可能です。一方で、共同体ごとの格差や社会的背景による不平等などの課題も存在しており、今後の改善が期待されています。

学校生活

制服

ほとんどの学校で制服はありません。生徒は私服で通学するのが一般的です。カトリック系の一部の私立校などでは制服があることもありますが、ごく少数です。服装のルール(露出の制限、ロゴ・政治的スローガンの禁止など)はある場合もあります。

ランチ

お弁当が基本で、多くの生徒は自宅からお弁当(brooddoos / boîte à tartines)を持参します。内容は主にサンドイッチ、果物、ジュース、水など。学校での提供がある場合もあります。

・一部の学校では温かい給食が提供されます(希望者のみ、有料)
・献立はスープ+メイン+デザートなど、栄養バランスを考慮
・宗教・文化に配慮して、ベジタリアン対応や豚肉不使用の選択もあり

教科書・学用品

小学校
・一部の学校では教科書は貸与(無料または安価)
・ノートや文房具は家庭で準備するのが一般的

中・高等学校

・教科書は有料で購入するケースが多い
・教科書リストが配られ、保護者が書店などで購入

一部の学校では「レンタル制度」や「リサイクル(古本)制度」もあり、費用負担軽減が図られています。

宿題

・小学校低学年では少なめですが、高学年から中等教育にかけて宿題はしっかり出されます。
・宿題の量は学校や教師によって差があるが、日常的に家庭学習が必要です。
・高校ではレポート、調査、プレゼンなど、自主的な課題も多く出されます。

授業・カリキュラム

・教科は国語(仏語/蘭語/独語)、数学、理科、社会、歴史、芸術、体育、外国語(英語など)
・外国語教育は早期から実施(英語は小学校中~高学年から)
・ブリュッセルなど多言語地域ではバイリンガル授業もあり

 学校行事・アクティビティ

・遠足、自然教室
・スポーツ大会、文化祭
・修学旅行(国内または他のヨーロッパ諸国へ)
・宗教系の学校では、教会行事やミサもあります

親と学校の関係

・保護者会(Ouderraad / Conseil des parents)が活発
・学校との連絡は主に連絡ノート(agenda)やメールで
・成績表(rapport)は学期ごとに配布

各種の手当

ベルギーでは、すべての子どもに平等な教育機会を与えるため、政府によってさまざまな教育関連手当(補助金・支援制度)が設けられています。

子ども手当

・子どもが生まれた家庭に対して支給される基本的な家族手当
・教育に限らず、子育て全般の経済的支援

すべての家庭に支給されます(所得制限なし)。子どもの年齢・兄弟の数・居住地域に応じて金額が変わり、18歳まで支給、就学中であれば最大25歳まで延長可能です。

教育手当

これは、低所得家庭を対象とした「教育関連費用の補助金」です。

・所得制限あり(世帯収入が一定以下)
・小学校・中等教育・高等教育の生徒・学生が対象

学用品の購入費、教科書代、交通費、給食費などの負担軽減を目的とし、年に1回、現金で支給されます。地域(言語共同体)によって金額・条件が異なります。

高等教育の奨学金

大学や高等専門学校に進学する学生には、奨学金制度があります。

・済不要の奨学金(給付型)
・所得に応じて段階的に支給される

世帯収入が一定以下で、一定の学業成績を維持する必要があり、学校にフルタイムで在籍していることが必要です。

通学・交通費補助

通学定期券の補助(主に中等・高等教育)

・公共交通機関(バス・トラム・鉄道)の学生割引制度
・一部の学校では、自治体や州が交通費の一部を負担

※SNCB(国鉄)では「学生定期(Campus Card)」が利用可能。De Lijn(フランドル)、TEC(ワロン)、STIB(ブリュッセル)などでも通学補助あり。

学用品の補助・無償提供(学校によって)

・一部の公立・支援学校では、ノート・教科書・文房具の無償提供あり
・特に低所得世帯向けに配慮されている
・必要な場合は学校に申し出れば、追加支援が受けられることも

保育・就学前支援

・就学前(2.5歳~6歳)の保育・幼児教育は原則無料
・それ以前の保育園も、収入に応じた保育料設定

保育園・幼稚園の費用は家庭の負担を減らす仕組みが整っています。

日系教育機関

ベルギーには、日本人駐在員の家族や長期滞在する日本人子女のための、日本語による教育を提供する学校や補習校がいくつかあります。

ブラッセル日本人学校 Japanese School of Brussels)

設立:1979
場所:ブリュッセル近郊、テルビューレン(Tervuren)という郊外の町
対象学年:小学1年生~中学3年生

・文部科学省のカリキュラムに基づいた日本の学習指導要領準拠の教育を実施
・教科書も日本と同じ(日本政府から無償提供)
・日本人教員が常駐し、日本語で授業が行われる
・現地校への進学サポートや帰国後の学習フォローも充実
・主に日本企業の駐在員の子女(保護者の転勤などで短期滞在のケースが多く一部、ハーフや永住家庭の子どもも在籍)
・現地の子どもたちや国際校との交流も実施
・日本語が中心だが、英語や現地語(オランダ語・フランス語)の授業もあり

​ブラッセル日本人補習授業校(Japanese Supplementary School in Brussels

現地校やインターナショナルスクールに通っている子どもを対象に、土曜日のみ開校

・日本の教科書を使い、国語や算数・数学などを中心に学習
・「日本語力を保つ」ことを目的に設立
・小学1年生~中学・高校生まで
・日本に将来帰国予定の家庭や、子どものアイデンティティ保持を重視する家庭に人気

その他の教育サポート・補習プログラム

 国際学校内の日本語クラス

・一部のインターナショナルスクールでは、日本語補習クラスを持っていることもあります
・例:ISBInternational School of Brussels)では、日本語を母語とする子ども向けの授業が選択可能

民間の日本語学習教室・塾

・ブリュッセル市内などには、日本人向けの学習塾や家庭教師サービスもあり
・個別指導やオンライン授業も利用されている

帰国にあたって

詳細はこちらから