ドイツの健康情報
医療システム・医療保険
国民皆健康保険名称
GKV(公的健康保険/Gesetzliche Krankenversicherung)
国民全員が加入
民間医療保険名称
PKV(プライベート健康保険/Private Krankenversicherung)任意加入
医療保健サービス
公立、民間を問わず、医療水準は非常に高く、また緊急医療体制も整備されています。ただし、診察や入院費用はかなり高額です。
ドイツの医療制度は、入院治療を行うのが病院(KrankenhausまたはKlinik)、通院・外来を扱うのが医院(Praxis)と2分されており、通常、病院にはいわゆる「外来部門」はありません。医薬分業が徹底されており、軽い風邪や頭痛などを除き、医薬品は医師の処方箋を持参して薬局で購入するシステムとなっています。
万一に備え、緊急移送サービスなどを含む十分な保障内容の海外旅行傷害保険に加入しておくことをお勧めします。
緊急時の対応
緊急を要する医療サービスが必要なときは、医師が現場に出動し、救急車や救急助手と協力の上、ときには救急ヘリコプターも使って、高度で迅速な治療にあたります。現場から治療までのコーディネーションは救急指令センターの指示のもと円滑に行われ、救急医療に関する費用は健康保険で支払われます。
緊急に救急車が必要なときは112に電話を。ただし、この番号はあくまでも下記のような緊急性がある場合にのみ使用してください。
・胸痛または心臓発作の兆候
・重度の怪我または事故
・呼吸困難または窒息
・意識喪失
・脳卒中の疑い
・アナフィラキシー(重篤なアレルギー反応)
・止血不能状態
命に別状がない場合の、夜間や診療時間外に利用できる番号は116117です。
かかりやすい病気
呼吸器感染症
季節の変わり目や冬季に、風邪やインフルエンザなどが流行します。
麻疹
ドイツ国内においても予防接種が推奨されています。
花粉症などのアレルギー
春先には花粉症の症状を訴える人が増加します。
ダニ脳炎
いくつかの州で吸血性のマダニ(Zecke)を介したウイルス性脳炎に感染したという事例があります。発熱、頭痛、意識障害などが起こり、ひどい場合には死に至ることも。流行期の3月〜10月に草の茂った場所に入る場合、山歩きやハイキングなどをする方は、肌の露出を控えましょう。
ボレリア症(ライム病)
同じくマダニが媒介する感染症ですが、ドイツ全土で広く発生しています。病原体は野ネズミや小鳥が保菌するボレリアという細菌で、年間感染者数は年によっては4万以上にも達します。初期症状として環状の紅斑性発疹が現れることが多く、発疹が現れない場合でも、筋肉痛や関節痛、発熱、倦怠感など、インフルエンザと似た症状が現れます。
その他の感染症
サルモネラやキャンピロバクターによる感染性胃腸炎、肝炎の他、性的接触による淋病、梅毒、AIDSの報告もあります。
交通事故
優先権のある自動車や自転車がスピードを緩めずに突っ込んでくることが往々にしてあり、事故も多く発生しています。
予防接種
A型肝炎、B型肝炎、破傷風のワクチン接種が推奨されています。
風土病であるダニ脳炎のワクチンは、合計3回(2回目:初回接種1〜3カ月後、3回目:2回目接種9〜12カ月後)の接種が必要です。接種は現地の医療機関で行なっています。3回の接種が終われば、小児は3年間、成人は5年間効果が続くとされています。
日照時間
夏の日照時間は日本に比べると極端に長いため、睡眠時間が短くなり、とかく疲れやすくなる傾向があります。逆に冬は日照時間が短く曇りの日も多くなるため、ビタミン(特にビタミンD)が不足して鬱な気分に陥りやすくなりがちです。日光浴をするなどして気分転換を図り、上手に生活を環境に適応させることが大切です。
歯科治療
質の高い歯科医療を提供するドイツですが、公的健康保険がカバーするのは基本的な歯科治療と義歯にかかる費用のみ。その他の歯科治療、特に最新の歯科処置が必要な場合には自己負担となります。
義歯の費用負担限度額は特に厳しく、ボーナス制度が導入されています。ボーナス給付を受けるには、少なくとも年に1回は歯科検診を受け(予防歯科ケアは保険適用内)、その記録をボーナス冊子に記入する必要があります。補助金は、ボーナスなしの場合は60%、5年間完全な検診記録があれば70%、同10年間なら75%となっています。
歯科治療費用が高額なこともあってか、ドイツ人は虫歯予防に対する意識が高いといわれます。予防歯科処置と定期検診は、口腔の健康を維持し、歯科疾患を回避する上で不可欠。長期的には費用対効果も高くなるでしょう。定期的に歯科検診を受けることで、口腔内の潜在的な問題が早期発見でき、過去に受けた歯科治療の状態も確認もできます。虫歯や歯周病、その他の歯科疾患は、放置すると深刻な合併症につながるおそれがあります。自宅で行う日々の歯磨きや歯間ケアはもちろん大切ですが、口腔の健康は口の中だけにとどまらないことを知っておきましょう。疫学研究では、口腔の健康状態が悪いと、全身疾患のリスクが高まる可能性があることが示唆されています。プロフェッショナルによる定期的かつ包括的なケアアプローチが必要です。
またEUの決定を受け、ドイツでは2025年1月以降はアマルガム(一般的に銀歯と呼ばれる詰め物)を使用することが禁止されています。患者の特定の医療ニーズに対応するために、歯科医師がアマルガムの使用が必要と判断した場合には例外が適用されます。健康保険会社も、追加費用なしで歯の詰め物する権利は引き続き維持することと発表しています(2025年6月時点)。将来的には、追加の接着剤を使わずに装着できるグラス・アイオノマー・セメントなどの自己接着性充填物が使用されるようになる予定です。
※アマルガム充填物には環境に悪影響を与える金属水銀が含まれていますが、アマルガムの詰め物をしている患者に直接的な健康リスクがあるというエビデンスはありません。
視力矯正
ドイツで眼科医を見つけるには主に下記の方法があります。
1. 眼科医/ドイツ眼科学会に問い合わせる
ドイツの眼科医を代表する専門団体「ドイツ眼科学会」のウェブサイト(www.dog.org)には、国内で開業している眼科医のディレクトリが掲載されています。
2. 眼鏡師/ドイツ眼鏡士協会
ドイツの眼鏡士を代表する専門団体「ドイツ眼鏡士協会」のウェブサイト(www.zva.de)には、国内で開業している眼鏡士のディレクトリが掲載されています。
3. 地元のイエローページ
地元のイエローページ(Gelbe Seiten)も便利な情報源。眼科医や検眼医などを、地域や専門分野別に検索ができます。
眼科医の役割分担は下記のようになっています。
街の検眼医
眼科検査、眼鏡やコンタクトレンズの販売など、幅広い眼科サービスを提供。眼鏡やコンタクトレンズを直接購入する顧客には割引価格を提供する検眼医もあります。診療は有料ですが、一般的に民間の検眼医よりも安い料金設定となっています。
公立病院・クリニック
すべての住民に対し、民間の医療機関よりも安い費用で眼科検査や手術などの眼科サービスを提供しています。
民間のクリニック
白内障手術、レーシック手術、その他の眼科手術など、幅広い専門的な眼科サービスを提供。その分、公立の医療機関よりも費用がかかリます。
費用
ドイツの眼科医療の費用は比較的リーズナブルですが、治療を受ける場所やサービスの種類によって、自己負担であったり、健康保険が利用できたり(保険未加入の場合はすべて自己負担)とさまざまです。例えば、都市部での民間眼科クリニックでの眼科検診は20ユーロから70ユーロ、民間の病院での白内障手術は2,000ユーロから4,000ユーロぐらいとなっています。
民間の健康保険に加入している場合、眼科治療の費用の一部または全額が保険でカバーされることもあります。ほとんどの健康保険プランでは、定期的な眼科検診と眼鏡またはコンタクトレンズの費用がカバーされている他、プランによっては、白内障手術やレーシック手術などの専門的な眼科治療もカバー内容に含まれます。
眼疾患の既往歴がある、あるいは目のかすみや眼痛などの症状がある人は、定期的に眼科検診を受けましょう。
その他の医療機関
補完代替医療(Complementary and Alternative Medicine/CAM)は「自然療法(Naturheilkunde)」とも呼ばれ、ドイツにおいては長い歴史を持つ分野です。医学部では特定の治療法とその応用について教えており、特定の適応症に対する有効性を示す科学的研究が数多く行われています。その実践基準は連邦保健省によって設定され、厳しく規制されています。施術者は同省から免許を取得する必要があり、選択したCAMの形態における技術・能力を証明するだけでなく、継続教育や倫理基準の遵守といったさまざまな要件を満たしている必要があります。
このような環境が整っていることもあり、慢性疾患から軽度の病気、ストレス解消といったさまざまな健康問題を抱える多くの人たちが、鍼治療、漢方薬、ホメオパシー、自然療法などを、従来の医療を補完するものとして利用しています。
鍼治療(Akupunktur)
体の特定のツボに細い鍼を刺することで治癒を促進する、日本ではお馴染みの鍼は、CAMを代表する治療法の一つ。ドイツでも従来の医療の代替として広く利用されています。鍼治療を支援する団体の一つに、「ドイツ鍼治療協会(DÄGfA)」があります。 同協会は鍼治療の普及に取り組むと共に、鍼治療師への研修と支援を提供しています。
ハーブ療法(Phytotherapie)
ハーブ療法は、植物や植物エキスを用いて病気の治癒を促進するもので、ドイツ人の生活に深く浸透しています。ハーブ療法を支援する団体の一つである「ドイツ植物療法協会(Gesellschaft für Phytotherapie/GPT)」は、ハーバリスト(薬草療法士)の研修や支援も行なっています。
ホメオパシー(Homöopathie)
ドイツ人医師のハーネマンによって確立された代替医療の一種ホメオパシー。生まれたときから体に備わっているといわれる自己治癒過程に働きかける療法です。ドイツでは医師によって処方されることも珍しくありません。19世紀初頭に設立された「ドイツホメオパシー医師協会(Deutscher Zentralverein Homöopathischer Ärzte/DZVhÄ)」は、ホメオパシーが正当な医療行為として認められるよう運動を続けています。
妊娠と出産
ドイツでは近代的で質の高い一般医療制度と産前医療体制が確立しています。妊娠が疑われたら、まず妊娠初期の判定に使う尿検査キットを薬局で入手しましょう。主要都市の一部では、自動販売機で購入することも可能です。尿検査(精度はおよそ98%)で陽性反応が出たら、適切なケアを受けるために医療機関を受診します。
ドイツの健康保険に登録していれば、検診から出産までほぼすべての費用は公的健康保険で賄われます。民間の健康保険に加入している場合は、保険会社が妊婦向けにどのような保障を提供しているかを確認しましょう。
ドイツで就労し、社会保障制度に加入している場合は、産休や長期の有給産休を申請することができます。ハイリスクの妊娠や医師から休職を勧められた妊婦は、ドイツの社会保障制度のサポートを受けることができます。
初めて医師の診察を受けるときに、日本の母子手帳にあたる「マターパス(Mutterpass)」が発行されます。妊婦に関する必要な医療データがすべて記録されるので、毎回の診察に必ず持参しましょう。
婦人科(Frauenärzte)で担当医を決定したら、妊娠8週目から定期的に診察を受けます。基本的な検査は、血圧測定、体重測定、脈拍数、呼吸数などで、すべてマターパスに記録されます。婦人科医師の指示に従って、血液検査、尿検査、骨盤検査、ベータHCG値の測定を行う場合もあります。妊娠に合併症を引き起こす可能性がある妊娠糖尿病(2~14%の女性に見られる)の検査は、妊娠24〜28週の間に行われます。
一般的に、超音波検査(Ultraschall)は妊婦健診のたびに行われ、妊娠25週目に入ると、胎児に深刻な医学的問題がないかを確認するために、3D超音波検査(Feindiagnostik)が行われます。
ドイツでは、妊婦は特別なケアを受けるための助産師(Hebamm)を指名することができ、ドイツ語が不得手でも、大都市であれば英語を話せる助産師を探すことができます。出産のほとんどは病院で行われ、自宅や出産センターで行われるケースはごくわずかですが、資格を持った医療スタッフと最新の医療機器を備えた病院と、出産センターのどちらかで出産するかを選択するのは妊婦の権利です。
妊娠中に体に起こるであろう変化やその他の合併症についての最新情報を得るために、ドイツでは「出産準備クラス(Geburtsvorbereitungskurs)」に参加するのが一般的。クラスは病院やその他の施設で定期的に開催されます。妊婦は、病院や赤十字のクラスに参加するか、助産師との個人セッションを予約して出産準備をすることが推奨されています。出産準備クラスの費用も公的医療保険でカバーされます。理解を深めるために、パートナーも一緒に参加しましょう。
妊婦のワクチン接種は義務ではありませんが、インフルエンザの予防接種は出産前に受けることが推奨されています。不安なことや不明点があれば、担当医に相談しましょう。
病院(Krankenhausgebert)での出産
出産場所としてもっとも一般的な選択肢は病院。病院には専門の産科病棟があり、出産前、出産中、出産後の医療ケアを受けることができます。出産中は、経験豊富な産科医と助産師のチームが母子の健康と安全を綿密にモニタリングし、緊急時に必要な設備もすべて整っています。
出産センター(Geburtshaus)での出産
助産師が運営する産科センターは病院よりも家庭的な雰囲気があり、経験豊富な助産師が常駐しています。センターでは医療介入を最小限に抑えた自然分娩に重点を置き、出産プールなどの特別な設備もあります。自然分娩を希望する女性には理想的な選択肢ですが、緊急時の対応設備は備えていないため、持病があるなどハイリスクと見なされる妊娠の場合は、病院で提供される専門的なケアを受けましょう。
出産後
出産後の母親は、分娩方法や合併症の有無にもよりますが、最低でも3~5日間は入院し、看護師から継続的な検診の他、赤ちゃんの世話、授乳、おむつ交換、沐浴の介助などの指導を受けます。また、新生児用の冊子型健康診断書(Kinderuntersuchungsheft)が発行され、入院中から退院後に実施される赤ちゃんの基本的な健康診断結果は、この冊子に記録されます。
ドイツでは出産後の出生登録が義務付けられており、これは出産後1週間以内に行わなければなりません。登録手続きの手順は以下の通りです。
①出生証明書の取得
病院または助産師から、赤ちゃんの名前、出生日時、両親の名前が記載された出生証明書が発行されます。
②出生証明書の認証
出生証明書を受け取ったら、赤ちゃんが生まれた市区町村の地方登記所(Standesamt)で認証を受ける必要があります。両親はパスポートなどの有効な身分証明書を提示し、出生証明書に署名します。
③出生証明書の申請
出生証明書が認証されてはじめて地方登記所に正式な出生証明書(Geburtsurkunde)を申請することができます。出生証明書は、赤ちゃんの出生と身元の証明となる法的文書となるので大切に保管しましょう。
水道水・食事
水道水
そのまま飲んでも安全ですが、多くの地域は石灰分(カルキ)が多く含まれる硬水のため、簡易浄水器を利用したり、市販のミネラルウォーターを飲用したりするとよいでしょう。
食物
一般的に、ドイツの料理はボリュームがあり、高カロリー、高タンパク質、高脂肪、高コレステロールの傾向があります。 また、多くのドイツ人が大好きといわれるビールは、500mlあたり200〜250キロカロリー。メタボリックシンドロームにならないよう、食べ過ぎ飲み過ぎには十分注意しましょう。







