イギリスの健康情報
医療システム・医療保険
国民皆健康保険名称
NHS(National Health Service)
医療保健サービス
・イギリスの国民保健サービスは National Health Service(通称 NHS) と呼ばれ、北アイルランドでは Health and Social Care(通称 HSC)という名称になります。
・NHSは税金で運営されており、加入者は自己負担なく医師の診察を受けることができます。通常の居住者(ordinary resident)とみなされる場合は、原則的に外国人でもNHSに加入することが可能です。
・16歳以上の就労者は National Insurance Contribution と呼ばれる保険料を支払います。6カ月以上滞在するEEA国籍以外の一時的滞在者(non-EEA migrants)は、査証の取得や延長時にNHS利用料の支払いを求められます。
・開業医を自由に選択できる日本とは異なり、NHSではどのような症状であっても、原則としてまずは GP(General Practitioner:総合診療医) の診療を受ける必要があります。
・GPの診療後、必要に応じて専門性の高い医師やサービス(専門医、理学療法など)への紹介が行われますが、救急医療の場合はこの限りではありません。
・NHSは「受診時無料」が原則ですが、処方箋や歯科診療など一部のサービスには一定の料金がかかります。
緊急時の対応
緊急で重症の場合
999に電話し、すぐに救急車を呼ぶか、最寄りのA&Eを受診しましょう。
対処に困ったら
111は医学的なアドバイスが受けられる無料の電話番号です。1日24時間、年中無休。111オンラインで情報が入手できます。
救急外来(A&E)
意識不明、胸痛、呼吸困難、重度のアレルギー症状や怪我など、命に関わる緊急症状のある場合は、迷わず NHS病院の救急外来(Accident and Emergency / A&E)へ直接出向くか、救急車を呼びましょう。A&Eでは当直医や看護師が緊急度に応じて診察の順番を決めるので、長く待たされることもありますが、必ず診察してもらえます。症状の説明は、専門医の手配や診察順にも影響しますので、的確に伝えられるように最大限の努力をしてください。緊急症状であっても、命に別状はないという場合は、救急治療ケア部門のある病院(Urgent Treatment Centre)や予約不要のNHSウォーク・イン・センターへ行く選択肢もあります。
救急車
救急車は999に電話して呼びます。この番号は救急車の他、警察、消防、救助などにも使われるので、必ず「Ambulance, please!(救急車をお願いします!)」と伝えます。
患者のいる場所と症状(例えば胸痛(chest pain)や 痙れん(convulsion)など)を落ちついてはっきりと正確に伝えること。相 手からは、意識があるか(conscious or unconscious)、息をしているか(breathing or not breathing)などを聞かれます。
病院では、救急車で運ばれても優先的に診察されるわけではなく、症状で診察順位が決まります。救急医療の初期治療は NHS 国営医療サービスを受け、途中からプライベート医療に切り替えることも可能です。救急時に備えて、持病のある人はあらかじめ英文の診断書を用意しておくとよいでしょう。また、自分に関係のありそうな医療単語は控えておくと、いざというときに役立ちます。
医療機関は症状に応じて選択
意識不明、激しい胸痛、呼吸困難、事故、多量出血の場合
999で救急車を呼ぶ
重症、骨折の疑いがある場合
最寄りのNHS病院救急外来(A&E)へ
軽症、口腔に関わる問題がある場合
111に電話して相談するか、111オンラインで情報入手を。NHSウォーク・イン・センターや GP、薬局の薬剤師に相談することも可能です
命にはかかわらないが緊急症状がある場合
NHSウォーク・イン・センターや救急治療センターへ
救急時に必要な情報
氏名、生年月日、自宅住所、常用薬、アレルギーや既往症(past history)、職業など。
慌てると簡単なことも思い出せなくなるので、緊急時の連絡先や GPの名前と所在地、勤務先、NI(Na tional In surance)番号、保険会社名・保険番号などは携帯しておくと安心です。
かかりやすい病気、感染症、その他
花粉症(Hay fever)
3月から9月頃にかけて花粉が飛びます。イギリスでは芝花粉(Grass pollen)などにより悩む人が多いというデータがあります。薬局では抗アレルギー剤を入手することができますが、症状が継続する場合は医師に相談することをお勧めします。
細菌性髄膜炎(Meningitis)
乳児から若年層に多い感染症で、発熱、頭痛、意識障害などの症状が出現します。特にかかりやすいものではありませんが、注意が必要です。保育園、幼稚園、学生寮などではクラスターが発生することもあります。予防接種はある程度有効とされているため、英国に来てからワクチンを接種すると良いでしょう。
予防接種
成人
特にナシ
小児
日本の定期予防接種を済ませておくと良いです。長期滞在の場合は、イギリスの接種スケジュールに従い、未接種のものを受ける必要があります。小児予防接種スケジュールに含まれる予防接種は、NHS医療の一環としてすべて無償で提供されます。
歯科治療
NHS歯科
NHS制度では基本的に歯科治療は有料です。治療の種類によって支払額が異なります。ただし17歳以下の子ども、18歳以下の全日制の学生、妊婦や1年以内に出産経験のある人、NHS病院の歯科医による歯科治療を受けている場合(義歯治療やブリッジ治療は有料)、低所得者向け給付金の受給者とその扶養家族は無料となります。
プライベート歯科
NHS歯科に比べて割高ですが、高度な精密機器を使った最新治療を受けられる、診察までの待ち時間が短い、治療オプションが多い(歯列矯正、インビザライン矯正、美容歯科など)といったメリットがあります。
治療分野
歯科の専門分野には以下のようなものがあります。
小児歯科(children’s dentistry / paedodonitics)、歯周病治療(periodontics)、口腔外科(oral surgery)、歯科矯正(orthodontics)、根管治療(root canal treatment)、歯内治療(endodontic treatment)、インプラント(implants)、義歯(prosthodontics / removable prothodontic)、インレー(inlay)、クラウン(crown)、ブリッジ(bridge)
日英の違い
英国では日本に比べて予防治療に力を入れる傾向があります。特に子どもに対しては、フッ素塗布治療やシーラント治療(生えてきたばかりの奥歯永久歯の溝に透明な液を塗る治療)をして虫歯予防をします。
英国では歯並びが悪いと美容上だけでなく、健康上にもよくないと考える傾向があります。歯列不正による偏頭痛、肩こり、顎関節問題、特に子どもの集中力不足などは、歯科矯正で解決することもあります。
歯を白くするホワイトニングは、最新の材質を使用すれば、歯のエナメル質を強くする効果もあるようです。
視力矯正
英国でメガネやコンタクトレンズを購入する際には、眼鏡店(optician)で検眼医(optometrist)が行う検眼(eye test)を受ける必要があります。視力に問題を感じたときは眼鏡店へ。
無料検眼
検眼は通常有料ですが、GP登録をしている以下の対象者はNHS扱いで無料検眼が可能です。ただし、それぞれを証明する書類が必要です。
・15歳以下、あるいは60歳以上
・16〜18歳で全日制の学生(学校名記入義務あり)
・視覚障害者あるいは部分視覚障害者として登録されている人
・糖尿病や緑内障の診断を受けた人、またはそれが理由で通院している人
・40歳以上で、両親、兄弟姉妹、子どもが緑内障の診断を受けた人
・眼科医に緑内障になる危険があると診断された人
・所得補助受給者、出所後すぐの人
メガネやコンタクトレンズの度数によっては、NHSから費用の一部をカバーするバウチャーが支給されるケースもあります。ウェブサイトで確認を。
視力検査の結果が記された処方箋(prescription)があれば、どの眼鏡店でもメガネやコンタクトレンズが作れます。
処方箋の有効期限は1〜2年間とされています。個人差もあるので、メガネなどは、処方箋が出てからあまり時間をおかずに作るのがよいでしょう。
コンタクトレンズを作る場合は、カーブや度数などを計るフィッティング(fitting)という検査(有料)も必要となります。
レター
英国の眼鏡店では、検眼で目の病気が見つかった際に、目の専門病院への紹介状を作成するなど医療的なサービスも行います。
その他の医療機関
代替医療
英国では、歴史的実績があるアロマセラピー(aromatherapy)やホメオパシー(homeopathy)、リフレクソロジー(reflexology)、ハーブ薬(herbal medicine)の他、漢方薬(Chinese herbal medicine)、鍼灸(acupuncture)、指圧(acupressure)、レイキ(reiki)などの東洋医療、また、ヨガやマッサージなどの民間療法が代替/補完医療(complementary medicine / therapy)として認められており、公認機関The CHO(The Confederation of Healing Organisations)が規制と同時に療法士(practitioners)の育成も行っています。
The CHOが管轄する代替医療プラクティショナーを探すには、www.naturaltherapypages.co.uk にアクセス。
代替療法は一般的に、風邪の諸症状や肌のトラブル、不眠、アレルギー症状、消化不良、偏頭痛をはじめとした体調不良や慢性症状に効果があるとされ、中には専門のクリニックを紹介してくれるGPもありますので、興味がある方は相談してみるとよいでしょう。
NHSのロイヤル・ロンドン病院統合医療部門(Royal London Hospital for Integrated Medicine)では、近年注目されている統合医療を提供しており、補完医療に関する情報も一般公開しています。
漢方薬
漢方薬は、漢方薬局で調合してもらいます。鍼灸などの診療所を兼ねているところもあります。いずれも予約を入れる方がよいでしょう。
妊娠と出産
妊娠チェック
妊娠した可能性があると思ったら、まず市販の妊娠判定テストキットを使って自分で調べ、陽性であればGPへ行くよう勧められています。
妊娠が確実であれば、妊娠期間中に検診を受ける産婦人科と、出産場所をNHSにするかプライベート病院にするか決定します。
NHSで出産
NHSを利用する場合、登録しているGPに連絡し、産婦人科のある病院を選びます。基本的には自宅に近い病院になります。
NHSでは費用はすべて無料。検診は通常、助産婦(midwife)とGPが行います。入院期間は正常分娩の初産で1〜2日、帝王切開の場合は2〜4日程度が一般的で、日本よりはるかに短いようです。
NHSでの出産・退院後は助産婦が自宅を訪問し、産後ケアを行います。訪問期間は地域によって異なります。詳細はNHSのサイトから。
NHSで出産しても、より細やかに対応してくれる看護&助産評議会所属のプライベート助産師に有料で来てもらうこともできます。興味があれば病院で聞いてみましょう。
プライベート病院で出産
プライベート病院は設備が万全で、個室や産後ケアの期間が選べるなど、いろいろな面で融通がききます。費用は約£6,000〜。
自宅出産
特に希望があれば、助産婦の介助で自宅出産もできます。妊娠中、出産、産後を一貫して一人の助産婦に看てもらえるのが利点。
定期検診
イングランドにおける定期検診は、初めての妊娠では約10回、2人目以降は合計7回程度。出産予定日を知るための11~14週目の超音波スキャン、発育のチェックを診る18~21週目の超音波スキャンを含みます。診察(浮腫、腹部触診、血圧測定)、尿検査、血液検査、胎児心音聴取、胎動チェックなどの他、医師にさまざまな相談をすることができます。
検査スケジュールの詳細
親になる準備
出産準備クラス(antenatal class)は、GPや病院、NCT(National Child Trust)が主催。パートナーも一緒に参加できる夜間コースもあります。
英国での出産に際して
英国での出産は妊婦主導。出産の方法、麻酔や陣痛促進剤の使用の有無、付き添い、立ち会いなどについて、妊婦本人の意思が尊重されます。心配や不安を残さないよう、意思をしっかり伝えましょう。
在英日本人の妊娠、出産、育児を支援するボランティア・ネットワーク「英国なかよし会」が発行する出産情報書『Maternity Book』があります。詳細はこちらで。
避妊用ピル
避妊用ピルは、薬も処方料も無料。GPやファミリー・プランニング・センター(Family Planning Centre)で各自に合ったピルの処方箋を出してくれます。最寄りのセンターはNHSウェブサイトで検索を。
水道水・食事
水道水
日本の水道水と比較すると、アイルランドでは石灰分を多く含む硬水の地域が多いです。水質は地域ごとの水道事業会社によって常に確認されており、通常はそのまま飲んでも問題ありません。ただし、配水管が古かったり、貯水タンクに問題がある可能性がある場合には、市販のミネラルウォーターを利用したり、ろ過器を設置したりすると安心です。
食物
食品の衛生管理は徹底されていますが、食品汚染による集団食中毒が時々報告されています。野菜(カット野菜を含む)は日本と同様に、よく洗ってから調理すると安心です。







