オーストリアの教育
オーストリアの教育システム
年齢別学校の種類
オーストリアの義務教育は、9年間(6歳から15歳)と定められています。子どもが義務教育年齢に達すると、保護者は在住する市または州の教育当局から招待状を受け取り、子どもと一緒に地元の学校で対面登録手続きを行います。ドイツ語があまり得意でない場合には、話せる人を同伴することを検討しましょう。
オーストリアの法律では、9月1日までに6歳になるすべての子どもは小学校に入学しなければなりません。9月1日以降3月1日までに6歳になる場合は、小学校への早期入学の申請も可能です。早期入学を希望する場合、子どもに就学の準備ができているか、必要な社会スキルを備えているかを学校が判断します。
6歳から10歳までの児童(1年生から4年生)が就学する一般的な義務教育機関を「初等学校(Volksschule/VS)」といいます。公立学校の基礎レベル1は1年生と2年生で構成され、このレベルを修了するためには最大3年間かかります。まだ就学の準備ができていない6歳児は、就学前クラスに入学するか、1年生を再履修することができます。保護者または教師の推薦を受けて、学年度中に進級することもできます。公立学校の初等レベル2は、3年生と4年生で構成されています。
小学校を修了した生徒は、5年生から8年生までを対象とする「中等学校/ミッテルシューレ(Mittelschule/MS)」または「一般中等学校(Allgemein bildende Höhere Schule/AHS)」に編入します。法律では、中等教育は5年間(通常10歳から15歳まで)、つまり9学年までと定められています。それ以降は、AHSの高等学校に進学するか、職業訓練または職業中等学校を修了するか、あるいはそれ以上の教育を放棄することもできます。
オーストリアの学校系統図
出典:The OeAD(Österreichs Agentur für Bildung und Internationalisierung)
特別教育
重度の学習障害があるなど特別な教育を必要とする児童を、最初の8~9年間の学校教育期間を通して受け入れる「特別支援学校(Sonderschule)」や「特別教育センター(Sonderpädagogisches Zentrum)もあります。しかし、これらの児童は他の児童と同じく通常の学校の「統合学級」で教育を受けることが多いようです。
ドイツ語が話せない児童や生徒の受け入れ
公立学校ではドイツ語をほとんど話せない子どもを、いわゆる「非正規生徒(außerordentliche/r Schüler/in)」として受け入れています。非正規生徒も他の生徒と共に学校に通い、次の学年に進級することができます。非正規生徒には1年間の就学期間が与えられ、その期間は学期ごとに「中央試験(Messinstrument zur Kompetenzanalyse – Deutsch/MIKA-D*)」を受けます。
*直訳すると「ドイツ語能力分析ツール」。特に非ネイティブスピーカーの学生のドイツ語能力を評価するための標準化された言語スクリーニングとして使われます。
公立学校では通常、語学サポートコースも提供されます。バイリンガルの児童や生徒は第二言語としてのドイツ語の教科書やバイリンガル辞書をリクエストすることができます。
中等学校(MS)
MSは小学校4年生を「適度(Befriedigend)」な成績で修了したすべての生徒を受け入れます。卒業後は「職業中等学校(Berufsbildende Höhere SchuleやPolytechnische Schule)」、高等学校(BMSまたはBHS – 後出)、あるいはAHSの高等学校(9年生から12年生または13年生)へ編入することができます。スポーツまたは音楽を専門とする中等学校への入学には、追加の入学基準(入学試験、健康診断など)が適用されます。
一般中等学校(AHS)
AHSは、生徒に包括的かつ詳細な一般教育を提供します。一般的に「ギムナジウム(Gymnasium)」と呼ばれるAHSは、4年間のローワースクール(5年生から8年生)と4年間のアッパースクール(9年生から12年生または13年生)で構成されています(アッパースクールは、大学進学準備高校に相当)。7年生になると、AHSの重点分野は以下のいずれかに分かれます:
・ギムナジウム:言語(主に英語、ラテン語、フランス語)、人文科学、教養教育
・レアルギムナジウム(Realgymnasium):数学、自然科学、幾何学、技術、繊維学
・経済レアルギムナジウム(Wirtschaftskundliches Realgymnasium):経済、商業、技術、繊維工芸
・音楽ギムナジウム(Musisches Gymnasium):音楽、美術、工芸、舞踏、演劇、文学、修辞学などを含むファインアート
・スポーツギムナジウム(Sportgymnasium):スポーツ
9年目を修了すると、生徒は義務教育を修了したことになります。AHSの生徒のほとんどは、「学校卒業試験/マトゥーラ(Matura)– 後出」に向けて、高等学校に進学します。AHS高等学校のカリキュラムの重要な部分は、12年生で実施される総合的なマトゥーラへの準備を目的としています。この試験に合格することが大学進学の前提条件となっています。
職業中等学校(Berufsbildende Höhere Schule/BHS)
職業訓練のもう一つの選択肢として、5年制の職業教育高等学校(BHS)があります。BHSは、より高度な職業訓練と包括的な一般教育を提供しています:
・高等技術高等学校(Höhere Technische Lehranstalt/HTL)は、技術、工学、または工業デザインが専門
・高等経済職業高等学校(Höhere Lehranstalt für Wirtschaftliche Berufe/HLW)は、ビジネス、コミュニケーション、デザイン・ファッション、観光、栄養学、管理学が専門
・ハンデルアカデミー(Handelsakademie/HAK)は、会計学と経営学が専門
その他の専門分野には、林業や幼児教育などがあります。
BHSの主な利点は、職業訓練(義務的なインターンシップや企業研修も含む)と大学入学資格を組み合わせていること。BHSへの入学には、少なくとも8年間の義務教育を修了することが必須条件で、場合によっては入学試験を受けなければならない場合もあります。BHSを修了するには、卒業試験とディプロマ試験の両方に合格しなければならず、その後晴れて、法的に規制されている職業(特定の法律や規制に基づく資格や免許が必要であったり、特定の行為が制限されたりする職業)に直接就くことが可能となります。BHS卒業生は、専門分野に就職したり、大学に進学したり、起業したりすることができます。
中等職業訓練学校(Berufsbildende Mittlere Schule/BMS)
職業スキルを習得するためのもう一つの選択肢は、3年制または4年制のBMSに通うことです。会計や経営管理といった基本的な職業スキルと一般教養を組み合わせた学習内容で、入学試験はありません。多くの場合、学生は1つ以上のインターンシップを修了することが推奨または義務付けられています。各BMSは、技術、貿易、工芸、経済学、ファッション、ホテル・ケータリング/観光、社会福祉、スポーツ、社会福祉、医療、看護、農業、林業、社会福祉など、さまざまな専門分野を有しています。入学には8年間の義務教育を受けていることが必須で、受講分野によっては入学試験に合格する必要があります。修了時には最終試験があります。
修了後は専門分野で働くことができますが、希望すればディプロマ試験取得につながる上級コースで教育を継続することも可能です。さらに、コースを修了した後に「学校卒業試験/マトゥーラ(Matura)– 後出」を受験することもできます。
基礎職業訓練制度
15歳になると、「徒弟制度(Berufsschule)」を通して約250の中から希望する職業の訓練を受けることができます。期間はほとんどの場合3年から4年で、技術は職場と職業学校の両方で習得します。最終試験に合格すると、「熟練技術者または職人/ゲゼレまたはゲゼリン(Geselle/Gesellin)」となります。
高等教育入試資格
「学校卒業試験/マトゥーラ(Matura)」は、高等教育(大学、アカデミー、工科大学、カレッジ)への進学の前提条件。「中等職業学校(Hauptschule)」の合格者または実習生は、「職業資格試験(BerufsreifeprüfungまたはBerufsmatura)」に合格することで、大学入学の準備を行うことができます。「中等職業学校」の合格者または中退者も、「就学資格試験(Studienberechtigungsprüfung)」に合格することで、大学入学の準備を行うことができます。
オーストリアの高等教育では、技術、人文科学、芸術、その他の分野で多様なコースが用意されています。工科大学では実践的な訓練が提供され、直接職業に就くことができます。「高等教育カレッジ(Pädagogische Hochschule)」では、小学校、中学校、特別支援学校、専門学校の教員養成(下記参照)を行っています。
高等教育は、以下の4つの機関によって提供されます。
・公立大学
・私立高等教育機関(Privatuniversität/HEI)
私立大学は州による維持管理はされておらず、博士課程を含む高等教育課程の運営の認可は「認定評議会(Accreditation Council)」から受けています。※博士課程を提供し、研究者と研究業績に関する基準を満たしている私立大学は、私立大学としての認定を申請することができます。
・専門大学(Fachhochschule)
応用科学大学は、オーストリア品質保証認定機関によって学士、修士、ディプロマプログラムおよび継続教育コースの運営を認可された大学レベルの高等教育機関。
・教員養成大学(Pädagogische Hochschulen)
教員養成大学は、各連邦州における教員の初任研修、現職研修、継続研修のための高等教育機関。教会が運営する私立の教員養成大学もいくつかあります。
私立学校/インターナショナルスクール
公法に基づく私立学校(Privatschulen mit Öffentlichkeitsrecht)は、実質的に正式に認可された学校です。オーストリアでは、このような学校が全体の約8%を占めています。そのほとんどは宗派学校ですが、独自の教育システムに基づいて教育を行う学校もいくつかあります。
公立校の学費が無料なのに対し、はるかに高額な学費がかかるにもかかわらずそれに見合うメリットもあるインターナショナルスクールは、駐在員や国際結婚の家族、国際志向の現地オーストリア人に人気。包括的な教育はもちろんのこと、通常の学校では受けられないような、非常にグローバルな体験とユニークな教育を提供しています。
オーストリアには9つの都市に29校のインターナショナルスクールがあり、そのうち15校は首都ウィーン(Vienna/Wien)に、インスブルック(Innsbruck)とザルツブルク(Salzburg)には3校ずつ、グラーツ(Graz)とリンツ(Linz)には2校ずつ、ブレゲンツ(Bregenz)、クルムバッハ(Krumbach)、フェルデン・アム・ヴェルターゼー(Velden am Wörthersee)、クーフシュタイン(Kufstein)には1校ずつとなっています。
これらの学校の多くは国際バカロレア(IB)のカリキュラムを取り入れています。IBディプロマプログラムの学位は世界中で広く認められており、この資格を取得すれば世界有数の名門大学への入学が可能になるためオーストリアでも非常に人気があります。中にはIBとオーストリアやイギリスのカリキュラムをあわせて採用したり、英語のみならずドイツ語やフランス語、スウェーデン語で授業を行なう学校もあります。
授業料は、寮制であるかどうかや年齢などによって、年間数千ユーロから数万ユーロまでと大きな差がある上、受け入れ生徒の年齢もまちまちですので、それぞれの学校のウェブサイトで確認してみましょう。
ウィーン
・International Christian School of Vienna
・AMADEUS Vienna
・American International School Vienna
・Gymnasium Klosterneuburg International School
・Vienna International School
・Vienna Elementary School
・Danube International School Vienna
・International Highschool Herzogberg
・Stella International School
・Campus Wien West
・Meridian Bilingual Primary School
・Lycée Français Wien
・Amavida International Montessori School
・Mayflower Christian Academy
・Svenska Skolan i Wien
インスブルック
・COLE International Schools
・International School Innsbruck
・Foxhill International Bilingual School
ザルツブルク
・American International School Salzburg
・St. Gilgen International School
・SALIS – Salzburg International School
グラーツ
・Graz International Bilingual School
・BIPS-Krones
リンツ
・Linz International School Auhof
・Anton Bruckner International School
ブレゲンツ、クルムバッハ、フェルデン・アム・ヴェルターゼー、クーフシュタイン
・Sacré Coeur Riedenburg International
・Schloss Krumbach International School
・International School Carinthia
・International School Kufstein Tirol
学齢前の教育
乳幼児および就学前の子どもには、乳幼児向けの「保育園/キンダークリッペン(Kinderkrippen)」、3歳から6歳向けの「幼稚園(Kindergartens)、5歳からの「就学前クラス(Vorschulklassen)」といった施設があります。
9月1日までに5歳に達し、オーストリア国内に主な居住地を有する子どもは、幼稚園または児童クラブに週4日以上、合計で20時間以上通う義務があります。ただし、以下の児童は例外です:
・児童または保護者が病気
・特別な支援が必要
・早期入学している
公立幼稚園への入園はいつでもできますが、11月~12月(主な入園期間)に申し込むと、希望の入園枠を獲得できる可能性が高まります。在住の市区町村役場、または行政機関で入園登録(最大2枠まで可)を行ってください。登録後「幼稚園番号(Kindernummer)」が発行されます。
選択肢としては、私立幼稚園、グループ保育、私立保育士による保育、学童保育などがあります。私立幼稚園に入園するには、入園登録するための「顧客番号(Kundennummer)」を市区町村に申請する必要があります。各私立幼稚園は入園登録の締め切りと入学要件がそれぞれ異なるため、入園希望日の1年前から探し始める保護者が多いようです。
公立幼稚園の多くは終日保育を提供しています。祝日、学期休暇、12月24日と31日を除き、年間を通して開園していますが、夏休みのある幼稚園もあります。給食や特別活動には少額の料金がかかる場合があります。
学童保育とアフタースクール
アフタースクールとは、通常、学齢期の児童の放課後の保育を指しますが、多くの未就学児も、幼稚園や児童会の代わりに、またはそれらに加えて、アフタースクールに通っています。
チャイルドマインダー
「チャイルドマインダー(Tagesmütter)」は、保育園や幼稚園に入園する前の児童を預かり、保育は主に一般家庭で行います。中には、学童の午後の保育や、企業内での保育を提供する場合もあります。チャイルドマインダーは、家庭の日常生活の一部として児童の世話をします。自分自身と児童の食事を用意し、遊具などを提供して児童が遊びや運動をできるように見守ります。多くの場合、保育時間は、保育園や幼稚園よりも柔軟です。
チャイルドマインダーの多くは協会に所属しています。協会は、チャイルドマインダーを雇い、料金を精算し、連絡窓口となったりケアの質を管理したり、必要な研修や追加研修の提供などを行っています。
成人学習プログラム(Erwachsenngerechter Pflichtschulabschluss/ePSA)
ePSAは、通常の学校制度の外で取得できる義務教育修了証*の一種。生徒は4つの必修科目(ドイツ語、英語、数学、キャリアガイダンス)と2つの選択科目を修了する必要があります。
*義務教育修了証とは、中等学校の修了を証明する証書。オーストリアでは、この証書はいつでも無料で取得できます。義務教育修了証を持っていない人は、義務教育修了後に「義務教育修了証試験」に合格することで取得できます。合格すると、職業中等学校(専門学校、商業学校)、一般職業学校、高等職業学校(AHS、HTL、HAKなど)への入学資格が得られ、義務教育修了証があれば、職業訓練(見習い契約)を受ける可能性も高まります。
セカンドチャンス教育(Zweiter Bildungsweg)
基礎教育から義務教育、大学進学に至るまで、教育資格の取得を支援するのが「セカンドチャンス教育」。中等教育・高等教育への移行を促進するのがその目的です。これらのプログラムには中央政府から資金が提供されています。
※職業訓練とは別物ですので、混同しないよう注意しましょう。
セカンドチャンス教育は、基礎教育の受講に加え、学歴の追い上げ(キャッチアップ)の機会も提供します。その対象となる資格は、中等学校修了証(Hauptschulabschluss)、職業準備学校(Polytechnische Schule)修了証、職業訓練資格(Lehrabschluss)、アカデミック中等学校(AHS)または高等職業教育大学(BHS)が発行する外部生向け試験(Externistenreifeprüfung)による高等教育入学試験(Reifeprüfung)、社会人向けアカデミック中等学校または追加コース、公務員キャリアアップ試験(B-Matura)、限定高等教育入学試験(Studienberechtigungsprüfung)、職業訓練学校および職業訓練校(VET)卒業生向け一般高等教育入学試験(Berufsreifeprüfung)です。
授業は、成人向け学校、夜間中等学校、高等継続教育で受けられます。すでに労働市場に参加している、または技術教育または職業教育のコースを修了した人は、夜間コースを受講することで適切な教育資格を取得できます。中等および高等中等教育の一般学校、成人向けの技術および職業学校、追加コース (Aufbaulehrgänge)、高等教育後の VET コースおよびアカデミーの利用も可能です。夜間中等学校(国立の公立学校)では、就労している人はセカンドチャンス教育の高等教育入学試験(Reifeprüfung)を受験する機会が与えられます。さらに、総合大学、私立大学、教員養成大学、専門大学では、さまざまな継続教育が提供されています。また、就労者向けに専門大学研究プログラム(Fachhochschul-Studiengänge)も提供されています。
教育資格は社会保障やキャリアアップを保証するものではありませんが、労働市場における機会を増やし、失業リスクを軽減し、個人の成長を促進し、さらなる教育へのアクセスを向上させます。
学校生活
制服
オーストリアの公立学校では、一般的に制服着用は義務付けられておらず、私服に関する規制もありません。ただし、アメリカンスクールなど一部の私立学校では、独自の服装規定や制服規定を設けていることも少なくありません。
ランチ
EuroNews によると、EUでは子どもの4人に1人が貧困または社会的排除の危機に瀕しており、子どもに十分な食事を与えられない家庭もあるといい、北欧を中心に、少なくとも一部の年齢層に対しては無償の学校給食を提供しています。
オーストリアでもその例に倣うべきとする運動や政治的な活動が起きていますが、現在のところ、国レベルでも自治体レベルでも無料の学校給食を提供するプログラムはありません。しかし首都ウィーンでは、一部の公立小中学校がすべての生徒に無料の昼食を提供している他、公立施設の全日保育に通う、極めて低所得の家庭の子どもも無料の昼食の対象になっている場合があります。
オーストリア政府は2023年に児童保障国家行動計画(National Action Plan/NAP)を提出し、食に関しては下記のことに重点を置いていることを示しました。
・毎日1食は健康的な食事を摂ること:「学校給食ガイドラインとチェックリストの導入」、「幼少期から始める健康的な食生活」、「食に関する知識と消費者教育の導入」
・健康的な栄養バランスを保つこと:母乳育児の推進と幼稚園における給食の品質基準
給食が提供されない学校の子どもたちの多くは弁当を持参します。比較的規模の大きな学校には食堂があり、各々の嗜好に合った食事を選べる他、食餌制限のある学生にも対応していることが多いようです。また、スナックや飲み物の自動販売機が設置されている学校もあります。
一部の大学では食事補助を提供しており、割引価格で食事が提供されていることもあります。
学校によっても異なりますので、昼食のオプションやポリシーに関する具体的な詳細については、教育機関に直接確認することをお勧めします。
教科書
すべての教科書は、品質と正確性を保証するために政府委員会によって承認されています。全教科の教科書はすべての生徒に無料で配布されます。
学校は学校の種類に応じて生徒1人当たりの支出上限を遵守しなければなりませんが、その額は通常、必要な基本図書を購入するのに十分となるよう設定されています。宗教図書、デジタル教科書、幼稚園、特別支援学校、バイリンガル教育、母語による教育、そしてドイツ語を母語としない生徒に対しても、それぞれ支出上限が設けられています。学校は、利用可能な総予算(生徒1人当たりの教科書制限額×生徒数)の範囲内で、学校図書リストから教科書やその他の教材を発注します。
補助教材として、一部の教科書にはデジタル教材(E-Book)が用意されています。インタラクティブでマルチメディアなデジタル教科書の活用により、各学校の予算を通じてデジタル学習が導入されています。
CD-ROM、語学教材用テープ、デジタル学習ゲーム、学習アプリ、その他の印刷教材および視聴覚教材は「自主教材」と呼ばれ、障害のある生徒のための療育教材、視覚障害のある生徒および全盲の生徒のための教科書なども含まれます。これらは、学校教科書予算全体の最大15%まで調達できます。
学校は、費用と資源を節約するために教科書を再利用することを推奨しています。次の人が気持ちよく使えるよう、教科書は丁寧に扱いましょう。
宿題
学校での指導に加え、生徒には宿題が課される場合があります。宿題は、他者の助けを借りずに行うことになっています。宿題の量は、教師が、生徒の課題遂行能力、各日の授業数、学校行事などを考慮して決定します。なお、土、日、祝日と学校の休暇中に宿題を課すことは認められていません。
誕生会
オーストリアでは、子どもの誕生日パーティーに友だちを招待するのが一般的ですが、必ずしもクラス全員を招待する必要はありません。子どもが最も親しくしている友人を招待することを優先しつつも、招待される子やされない子の気持ちを考慮しましょう。通っている学校や在住地域の文化的な習慣もあるかもしれません。不快な思いをする子どもがいないようクラス全員を招待するという方針を打ち出している学校もありますが、厳密なルールではないようです。
少人数の誕生会にする場合は、招待状は授業時間外に配布する、郵送やメールなどの方法を使うといった配慮が必要でしょう。
オーストリアには子どもの誕生会として人気のベニューがたくさんあります。各街には、さまざまなアクティビティを提供する屋内の遊び場がある他、子どものパーティー用パッケージを用意しているテーマパークや博物館、動物園などが各地にあります。
保育料
オーストリアの一般家庭が育児に費やす費用は、非常に少ないといわれます。OECDのデータによると、ヨーロッパで育児に一番お金のかかるとされるイギリスでは両親の収入の約34%であるのに対し、オーストリアでは政府の給付金やプログラムのおかげで4%未満でした。
5歳から始まる就学前教育は義務教育(無料)です。2010年に就学前教育が義務化されてからは、各州の就学前保育料は下記のようになっています:
・ウィーン(Wien):6歳までは終日保育料が無料
・ブルゲンラント州(Burgenland):保育園の場合は月額45ユーロまで、託児所の場合は月額90ユーロまで補助
・ケルンテン州(Kärnten):6歳までは66%の補助
・ニーダーエスターライヒ州(Niederösterreich)とオーバーエスターライヒ州(Oberösterreich):2歳半から6歳まではパートタイム保育料が無料
・チロル州(Tirol):4歳から6歳までのパートタイム保育料が無料
児童手当(Kindergeld)/家族手当(Familienbeihilfe)
オーストリア在住者全員を対象としたユニバーサル制度として、「児童扶養手当(Kindergeld)」が支給されます。雇用主の拠出金と税金によって賄われ、18歳までの子ども(就学中であれば24歳まで)、障害のある子ども(一定の条件を満たせば25歳まで)は、正式な申請に基づき、政府から毎月非課税の現金給付を受けることができます。家族手当に保護者の所得制限はなく、所得税の納付義務がない場合でも支給されますが、手続きは出生や転入から15日以内に行う必要があります。保護者と子どもは同じ住所に住んでいなくてはならず、外国で児童手当の受給資格がある場合にはオーストリアでは支給されません。支給額は子どもの年齢によって異なり、2人以上の子どもがいる場合には追加の手当が支給されます。
「児童税額控除(Kinderabsetzbetrag)」は、1人につき月額67.80ユーロ。給付金に自動的に加算されるため、申請は不要です。
「複数子ども手当(Mehrkindzuschlag)」は、オーストリアに居住し、家族手当が支給される3人目以降の子どもに支給される手当で、1人あたり月額24.40ユーロ。申請月から5年間は遡及的に付与されます。受給するには、課税対象家族所得が一定額(2025年現在は55,000ユーロ)を超えていないことが条件です。
これらに加え、6歳から15歳までの子ども1人につき、毎年8月か9月に121.40ユーロの「就学手当/スタートアップ手当(August Schulstartgeld)」も支給されます。別途申請の必要はありません。
児童扶養手当(Einkommensabhängiges Kinderbetreuungsgeld)には、所得連動型と定額制の2種類があります。所得連動型は、基本的に直近の所得の最大80%までが支給され(1日あたり最高80.12ユーロまで)、定額制では、減額した支給額を長期間受給するか、期間を短くしてその分増額するかの選択ができます。受給するには児童扶養手当申請書を提出する必要があります。
オーストリアではこの他にも各家庭の状況に応じた家族や子ども手当が用意されていますので、調べてみましょう。https://www.migrant.at/wp-content/uploads/FAM-EN-2025.pdf
(上記、すべての手当額は2025年7月現在)
日系教育機関
日本人学校及び私立在外教育施設は、文部科学大臣から、国内の小学校、中学校、若しくは高等学校と同等の教育課程を有する旨の認定を受けており、中学部卒業者は、国内の高等学校の入学資格を、高等部卒業者は、国内の大学の入学資格をそれぞれ有します。ウィーンには、日本人国際学校があります。
ウィーン日本人国際学校/Japanese International School in Vienna
オーストリアに在住する日本人子弟および他国籍者に対し、日本国憲法および学校法令に基づき、現地文化及び現地教育を積極的に吸収しながら、格調高い初等・中等教育を施すことを教育目的としています。「英語検定」「漢字検定」「数学検定」も実施しています。
帰国にあたって
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