ポーランドの健康情報
医療システム
公的医療制度(NFZ:Narodowy Fundusz Zdrowia)
ポーランドの医療システムは、公的医療制度(NFZ:Narodowy Fundusz Zdrowia)を中心に運営されています。NFZは、税金と社会保険料によって資金が賄われており、加入者は原則として医療サービスを無料または低額で受けることが可能です。公的医療には、一般診療(家庭医/GP)、専門診療、入院治療、緊急医療、予防接種などが含まれます。
一般診療はまずかかりつけ医(lekarz rodzinny)で行うのが原則で、必要に応じて専門医や病院へ紹介状を書いてもらいます。救急医療は紹介なしでも直接利用することが可能で、急病や事故の際は緊急病院(Szpitalny Oddział Ratunkowy/SOR)にアクセスできます。
民間医療保険(prywatne ubezpieczenie zdrowotne)
ポーランドでは、民間医療保険(prywatne ubezpieczenie zdrowotne) が公的医療(NFZ)を補完する形で広く利用されています。民間保険に加入することで、予約の取りやすさ、専門医への直接アクセス、待機期間の短縮など、より迅速で柔軟な医療サービスを受けることが可能な上、多言語対応であることも多いようです。また、歯科、眼科(レーシックを含む)、整形外科など、公的医療では自己負担となる分野をカバーできる場合があります。
民間保険は企業契約と個人契約の両方があり、企業契約の場合は福利厚生として従業員が加入するケースが多くです。主要な民間保険会社には下記のものがあり、都市部を中心に全国でサービスを提供しています。
PZU Zdrowie
Allianz
Signal Iduna
Medicover
LuxMed
民間医療保険を利用する際は、契約内容によって対象となる診療範囲、自己負担額、利用できる病院やクリニックが異なるため、加入前に確認することが重要です。ポーランドでは、公的医療の利便性向上や専門サービスの迅速利用を目的として、民間医療保険を併用する人が増えています。
ポーランドでは、公的医療と民間医療が併用されることで、基本的な医療サービスのアクセスが保障されつつ、迅速な診療や専門的サービスを必要に応じて選択できる体制が整っています。
医療保険会社には下記のものがあります。
緊急時の対応
ポーランドで医療緊急事態が発生した場合は、まず緊急通報番号「112」 に電話をかけることが基本です。これはポーランドのみならず、ヨーロッパ全土で共通の緊急番号で、警察、消防、救急車を呼ぶことができます。英語にも対応しており、緊急時には落ち着いて112に連絡し、症状や所在地を明確に伝えることが重要です。
急病や事故で救急医療(SOR:Szpitalny Oddział Ratunkowy)が必要な場合は、直接救急病院に向かうことも可能です。救急病院では24時間体制で救命医療、外傷治療、急性疾患の診療が行われます。軽症の場合はまずかかりつけ医(lekarz rodzinny)や地域クリニックに連絡することが推奨されます。
ポーランドの緊急医療は公的医療保険(NFZ)に加入していれば原則無料で受診できます。保険未加入者や短期滞在者は全額自己負担となる場合があるため、旅行保険や民間医療保険の加入しておくと安心です。
また、軽度の症状であれば、薬局(apteka)でも応急処置や市販薬の相談が可能です。
かかりやすい病気、感染症、その他
風邪・インフルエンザ
秋から冬にかけて流行しやすく、特に乾燥と寒さにより罹患しやすくなります。予防接種を受けることが推奨されます。
ライム病(Lyme disease)
森林や草地に生息するマダニ(tick)によって感染します。ポーランドはヨーロッパでもライム病の発生率が比較的高い地域です。屋外活動時には防虫対策が重要です。
ダニ媒介性脳炎(Tick-borne encephalitis / TBE)
マダニが媒介するウイルス感染症で、神経症状を引き起こすことがあります。森林地域への長期滞在者には予防接種が推奨されます。
食中毒・腸炎
食品衛生は概ね良好ですが、夏季にはサルモネラやカンピロバクターなどによる食中毒が報告されます。地下水などの生水は避け、食品をよく加熱することが大切です。
結核
他の西欧諸国に比べるとやや発生率が高いとされますが、一般旅行者が日常的に感染するリスクは低いようです。
予防接種
ポーランドでは、国家予防接種プログラム(Program Szczepień Ochronnych / PSO)に基づいて、子どもを中心に定期予防接種が実施されています。これらは原則として無償で提供され、出生直後から段階的に接種が行われます。対象となるのは、結核、B型肝炎、ジフテリア、破傷風、百日咳、ポリオ、麻疹、風疹、おたふくかぜ、インフルエンザ桿菌(Hib)などです。
一方で、任意接種(有料) として推奨されるワクチンもあります。これには肺炎球菌、ロタウイルス、髄膜炎菌、A型肝炎、季節性インフルエンザなどが含まれます。また、ポーランドは森林地帯が多く、マダニ媒介脳炎(TBE)のリスクが比較的高いため、自然の中で活動する人にはTBEワクチンの接種が勧められています。
長期滞在者や移住者は、渡航前に日本で定期予防接種を完了しておくと安心です。現地で不足分の接種を補うことも可能で、外国人も公的・民間医療機関で予防接種を受けられます。
歯科治療
ポーランドの歯科治療は、公的医療保険(NFZ)に加入している場合、基本的なサービスを無料または低額で受けることができます。対象となるのは、一般的な虫歯治療、抜歯、歯科検診などですが、無償で受けられる治療内容や使用できる材料には制限があります。たとえば、充填(詰め物)は一部の素材のみ保険適用で、審美的な材料や高度な治療は自己負担となるケースが多いようです。
一方で、多くの人は民間の歯科クリニックを利用しています。民間診療では待ち時間が短く、最新の機器や材料を使った治療、審美歯科やインプラントなど幅広いサービスを受けることができます。費用は保険適用外となるため全額自己負担ですが、西欧諸国に比べると料金は比較的安く、外国人が利用するケースも少なくありません。
都市部(ワルシャワ、クラクフなど)には英語対応可能な歯科クリニックも多くあり、予約や説明もスムーズに行えるため、長期滞在者や留学生にとって安心です。応急処置は夜間診療や緊急歯科センターで対応可能です。
眼科治療
ポーランドの眼科治療は、公的医療保険(NFZ)に加入している場合、基本的な診察や一部の検査・治療を無料で受けることができます。ただし、待ち時間が長くなることが多く、特に都市部では数週間から数カ月待ちとなるケースも珍しくありません。公的保険でカバーされるのは、一般的な視力検査、眼疾患の診察、白内障手術などですが、最新の機器を使った精密検査や特殊レンズを用いた治療などは対象外となり、自己負担となります。
そのため、多くの人は民間の眼科クリニックを利用しています。民間クリニックでは、最新の検査機器による網膜検査や緑内障検査、レーザー治療、レーシックやフェイキックIOLといった屈折矯正手術まで幅広いサービスが
提供されており、待ち時間も短く、快適な環境で診察を受けられます。費用は自己負担となりますが、西ヨーロッパや日本に比べると低価格な場合が多いため、海外からの患者が訪れることもあります。
また、都市部(ワルシャワ、クラクフ、グダンスクなど)には英語対応が可能な眼科医院も多く、外国人駐在員や留学生でも安心して受診できる体制が整っています。眼鏡やコンタクトレンズの処方も民間の眼科クリニックや大手眼鏡チェーン店で受けられ、予約も比較的スムーズです。
英語対応できる眼科クリニック
Optimum Eye Center(ワルシャワ)
Medicover Optyk(ワルシャワ)
妊娠と出産
ポーランドでは、公的医療制度(NFZ:国民保険)に加入している場合、妊婦健診や出産にかかる医療費は原則として無償で提供されます。妊娠が確認されると、産婦人科医や助産師による定期健診が行われ、これには超音波検査や血液検査、尿検査などの基本的なスクリーニングが組み込まれています。
出産は主に総合病院や産婦人科で行われます。自然分娩が基本ですが、医学的に必要と判断されれば帝王切開も保険の範囲で受けることができます。ただし、希望による無痛分娩や計画的な帝王切開は公立病院では制限があり、快適な環境や希望する出産方法を選びたい場合には、私立病院や民間医療保険の利用が検討されます。
大都市(ワルシャワ、クラクフなど)の病院では医療設備が整っており、英語対応が可能な医師や助産師も見られます。出産後は一定期間の入院があり、母乳指導や育児指導が行われ、退院後は小児科医による定期健診や予防接種が続きます。
ポーランドでは公的医療による経済的な負担軽減が図られている一方、利便性や柔軟な出産プランを求める場合には民間サービスの併用が選択肢となります。
水道水・食事
水道水
ポーランドの水道水は、都市部を中心に安全に飲める水として整備されています。水道水は各地域の水道事業会社によって管理されており、定期的に水質検査が行われています。そのため、一般的には煮沸せずにそのまま飲むことができ、料理やコーヒー、洗浄など日常生活には問題なく使用できます。
ただし、地域によって水質や硬度(石灰分の含有量)が異なる他、特に地方や古い建物では配水管が古く、水質に影響を与えることがあります。その場合は、浄水器や市販のミネラルウォーターを利用すると安心です。
食物
ポーランドの食文化は、伝統的に肉類、ジャガイモ、穀物、乳製品を中心とした料理が多く見られます。主食はジャガイモやライ麦パンで、スープ/ズッパ(zupa)や煮込み料理も家庭料理の基本です。代表的な料理には、蒸し・茹で餃子/ピエロギ(pierogi)、キャベツと肉の煮込み/ビゴス(bigos)、カツレツ/コトレット(kotlet)などがあります。
食材はスーパーマーケットや地元市場で容易に手に入ります。夏はトマトやキュウリ、ベリー類、冬はキャベツや根菜が豊富です。肉類は豚肉や鶏肉、牛肉が中心で、ハムやソーセージなど加工品もよく食されます。
食品の衛生管理は比較的徹底されていますが、生鮮野菜やカット野菜はよく洗ってから調理することが推奨されています。また、乳製品や肉製品は冷蔵保存が基本で、購入前に賞味期限や保存状態を確認することが重要です。外食産業も盛んで、伝統的な家庭料理を提供するレストランから、近年増加しているカフェやファストフード店まで幅広い選択肢があります。
ポーランドでは、旬や地域に応じた食材の活用が一般的で、日常生活での栄養バランスを意識しやすい食文化が根付いています。






