医療システム・医療保険

民間医療サービス(Private Healthcare Services)

医療専門家または医療会社によって提供される民間医療サービスは、通常、全額自己負担となります。民間医療の費用を補うために、民間医療保険に加入しておくとよいでしょう。

民間の健康保険は、病院でのプライベート医療やその診療所における医療専門家による医療費の支払いに充てられます。家庭医(General Practitioners/GP)から紹介状を発行してもらったり、特定の病院や診療所の医療サービスを利用したりする前に、その医療サービスと病院が実際に加入している保険でカバーされているかを直接保険会社に確認しましょう。そうでない場合には治療費を自己負担することになりかねません。

入院となった場合、保険会社によっては病院に直接支払いを行うこともあります。外来診療所を利用する場合は、患者自身が支払いを済ませ、後に医療保険会社に請求するという手順になることもあります。詳しくは保険会社に問い合わせましょう。

アイルランドで民間医療保険を提供する主な会社には下記のものがあります。

Irish Life Health
Laya Healthcare
VHI Healthcare
HSF Health Plan*

*キャッシュプランを提供していますが、入院医療保険の提供はありません

アイルランドの民間健康保険には、以下の4つの原則があります。

1. オープンエンロールメント(Open Enrolment)
民間健康保険会社は、年齢、性別、健康状態を問わず、加入を希望するすべての人を受け入れなくてはなりません。

2. 生涯保障(Lifetime Cover)
民間健康保険に加入後は、アイルランドに在住して保険料を支払い続ける限り、非常に限られた状況を除き、保険会社はサービスの提供を停止したり、更新を拒否したりすることはできません。

3. コミュニティ・レーティング(Community Rating)
民間保険会社は、被保険者の年齢、性別、健康状態、病歴にかかわらず、特定のサービスレベルに対して同じ保険料を請求しなければなりません。つまり、すべての成人は同じ給付に対して同じ金額を支払うことになります。自動車保険や生命保険などとは異なり、年齢、健康状態、過去の保険金請求履歴は保険料に影響を与えません。一定の条件下では、通常の成人保険料よりも低くなる場合もあります。また、小児の保険料は、成人保険料の少なくとも50%に減額されます。

4. 健康保険給付の最低水準
民間保険会社には最低限の補償を提供する義務があります。特に、入院医療サービスに対する補償を提供する保険会社は、以下のサービスについても最低限の補償をしなければなりません:
・病院外来治療
・出産給付
・療養
・精神科治療および薬物乱用
・デイケア/入院治療*
*最低限の補償対象となる医療宿泊施設は公立病院の個室ですが、入院時に必ずしも利用できるとは限らず、キャッシュプランまたは外来患者専用プランには適用されません。

上記の他にも、民間保険会社の多くは歯科や眼科などの特定の医療サービスに限定した保険を提供しています。これらの限定契約は、上記で触れた「コミュニティレーティング」、「オープンエンロールメント」、「生涯保障」といった一般原則を満たす必要はありません。また、一般開業医および外来診療のみに関する契約を提供することもできます。

一方、キャッシュプランは、理学療法の受診などの特定の医療状況に対して給付金を支給します。入院医療保険とは異なり、個人患者としての入院はカバーしません。

公的医療サービス(Health Service Executive/HSE)

公的医療サービスは国によって支援されています。多くの公的医療サービスは基本的に無料ですが、中には有料となるサービスもあります。HSEはこれらのサービスの多くを直接提供していますが、他の組織に資金を提供して医療を代行してもらうケースもあります。

公的医療サービスを利用することができるのは、アイルランドの通常居住者(アイルランドに1年以上居住、あるいは1年以上居住する予定がある者)です。旅行者でも、例えば欧州経済領域(EEA)加盟国やスイスの出身者であれば、公的医療サービスを受ける資格があります。同様に、アイルランドの居住者は、ヨーロッパの医療サービスを受けることができます。

一般開業医(Family Doctors/General Practitioners/GP)

健康上の問題が起きたときに最初に受診するのがGPです。在住地域のGPは、HSEサービス検索マップで検索を。GPによっては、往診の手配も可能です。

専門的な医師であるコンサルタントの診察を受けるには、まずGPで紹介状を発行してもらう必要があります。診療時間外にGPの診察が必要になったら、近所のGPの診療時間外サービス(GP out-of-hours service)に連絡しましょう。時間外サービスを提供するGPのリストはこちらから検索できます。

医療カード(Medical Card)

保健サービス執行局(HSE)が発行する医療カードがあれば、医師の診察や公立病院のサービスなど、多くの公的医療サービスを無料で受けることができる他、処方薬の費用もカバーされます。薬を受け取る際に一定額の支払いを求められますが、どの薬に対しても一律料金となっています。

医療カードを取得するには、収入が一定額以下であることを証明する必要があります。資力調査はHSEが実施しますが、この調査なしに自動的に資格を得られる場合もあります。「資力調査なしで資格を得る方法」でご確認ください。年齢によっても条件が異なります。

任意医療カード

収入が限度額を超えていても、医療カード無しでは経済的に困窮する状況にあるという場合には、医療カード(任意医療カード/Discretionary Medical Cardと呼ばれることも)を取得できる場合があります。

医療カードの申請方法

①オンライン申請(最も早い方法)mymedicalcard.ie から医療カードと GP 訪問カード(後述)の申請ができます。申請書に記載されている原本書類の写真、スキャン画像、またはコピーをアップロードできます。
②郵送による申請
申請書はGP、地域の保健所、地域保健事務所から入手するか、下記よりダウンロードし各自で印刷して、必要事項を記入してください。
MC1医療カードとGP訪問カード申請書
70歳以上用MC1(a)医療カードとGP訪問カード申請書

申請書は、必要書類と共にクライアント登録ユニット(Client Registration Unit/PO Box 11745, Dublin 11, D11 XFF3)まで郵送します。

医療カード申請の進捗状況は、HSEのウェブサイトで確認できます。

申請について疑問があれば、01 864 7100 またはローコール(LoCall) 0818 22 44 78 に電話をするか、メール(clientregistration@hse.ie)で問い合わせましょう。

子どもの医療カード

保護者に医療カードがあれば、子ども同じカードの扶養家族として登録され、同様のサービスを受けることができます。保護者に医療カードの資格がない場合でも、子どもが「施設型ケアを受けている」「直接支援を受けている」「過去5年間にがんと診断された」「里親家庭である」のいずれかに該当する場合は医療カードを取得できる場合があります。

医療カードを持つ保護者に乳児がいて、その子どものために児童手当を受給している場合は、乳児用のカードを申請できます。手紙を医療カードユニットに送ってください。

医療カードを持つ保護者の扶養を受けている16歳〜25歳は、医療カードを受け取ることができます。16歳になると、自身の医療カードが送付されます。(収入が資力調査の基準額を超えていて任意医療カード持っている場合は、この限りではありません。)

GP訪問カード(GP Visit Card

収入が医療カードの限度額を超える場合には、GP訪問カードを取得できる場合があります。同カードは、かかりつけ医への無料診察のみを対象としています。申請は上記「医療カードの申請方法」をご参照ください。

緊急時の対応

アイルランドにおける救急医療サービスに関わる政策は保健省(Department of Health)が担当し、公衆衛生緊急医療サービス(Public Health Emergency Health Services)の提供には保健サービス執行局(Health Service Executive/HSE) が責任を負っています。病院前救急ケア協議会(Pre-Hospital Emergency Care Council)は、救急隊員の専門的規制、および認定機関による教育・訓練を担当しています。

事故、心臓発作、その他の突発的な病気や怪我で緊急の治療が必要な場合の救急医療は、通常、GP、救急隊員、急性期病院(Emergency Department of an Acute Hospital)の医師によって提供されます。

救急車サービス

公衆衛生サービスでは、国立救急サービス(National Ambulance Service)が重症患者を病院へ、または病院間で搬送する救急車サービスを提供します。ダブリン大都市圏においては、緊急救急車サービスはダブリン消防隊(Dublin Fire Brigade)が提供します。これらの救急車サービスは無料で、国立救急サービスやダブリン消防隊から料金を請求されることはありません。緊急救急サービスに連絡するには、999番または112番(112番はEU全域で適用)に電話を。通話料も無料です。

緊急時に対応できる救急車が出払ってしまわないよう、緊急を要さない医療機関への送迎や医療機関から病院への送迎の場合には、タクシーやミニバスなどが利用される場合もあります。このような中間ケアサービス(Intermediate Care Service)は、病院やその他の医療施設間で患者を搬送するための車両を提供しています。

民間救急サービス

救急ヘリコプターサービスを含む、民間救急サービスを利用には料金が発生します。民間の健康保険に加入していれば民間救急車の費用の一部がカバーされます。
ボランティア救急サービス
ボランティア救急団体も数多く存在します。これらは通常、公共イベントなどでの緊急支援を提供するために利用されます。

GPによる緊急医療

緊急事態が発生し、GPの診察を受ける場合は、以下の方法があります。
・診療時間内に受診
・GPに電話をし、往診してもらえるように依頼
・診療時間外に電話。留守番電話のメッセージで緊急時電話番号が聞けるので、代行診療サービス(通常の診療時間外に患者の自宅を訪問するサービス)または時間外診療サービスがあるかを確認

GP時間外診療

夜間および週末に、予約時間まで待てない緊急医療のために利用できるサービス。飛び込み診療はないので、必ず予約をしないとなりません。診療時間外にGPに電話すると、最寄りのGP時間外診療サービスの連絡先を知らせる録音メッセージが流れます。保健サービス執行局(HSE)のウェブサイトにも、時間外診療サービスの電話番号一覧が掲載されています。

GP時間外診療に電話をしたら、まず症状について看護師に説明してください。看護師は、以下のうち何が必要かを臨床的に判断します。
・電話による看護アドバイス
・GPの予約
・往診
・救急外来(A&E)への紹介
・救急車の配車

GPの時間外診療の受診が必要と判断された場合には、看護師が予約を入れてくれます。緊急性がないと判断された場合は、診療時間内にGPに連絡をするよう促されます。医療カードかGP訪問カードを持たない患者に対しては料金が発生します。

公立病院の救急科

ほとんどの公立病院は、24時間365日対応の救急サービスを提供しており、緊急の医療ニーズがある人は誰でも受診することができます。公立病院のサービスであっても料金がかかる場合もあります。

公立病院の救急科(Emergency Department/ED)では、医療ニーズに基づいて優先順位が付けられ、緊急性が低いと判断されると治療を受けるまで待たされることもあります。しかし、一部の公立病院には、入院の必要性が低い軽傷のための外傷治療ユニットがあります。
※一部の私立病院やクリニックでも救急サービスを提供しています。私立施設での治療費は全額請求されます。
最寄りの救急科はこちらから検索できます。

アイルランド訪問時の緊急医療サービス

欧州連合(EU)、欧州経済領域(EEA)、スイスまたはイギリスの国籍を持ち、アイルランドに旅行あるいは一時滞在する場合は、病気や事故の際に医療を受ける権利があります。詳しくは「アイルランドへの旅行者向け医療サービス(Health services for visitors to Ireland)」でご確認ください。

EU規制の対象外となる場合は、救急外来の受診費用を自己負担しないとなりません。

治療費

有効な欧州健康保険カード(European Health Insurance Card/EHIC)所持者、共通旅行地域(Common Travel Area/CTA)協定の対象国市民、英国グローバル健康保険カード(European Health Insurance Card/EHIC)所持者、相互医療協定(Reciprocal Health Care Agreement/RHCA)を締結している国(オーストラリア市民など)の市民以外は、通常、急性期病院での医療を含む、追加治療の費用全額を請求されます。渡航前に民間の医療旅行保険に加入することを強くお勧めします。

かかりやすい病気

質の高い医療サービスを提供するアイルランドですが、世界中の国々と同様、アイルランド国民もさまざまな疾患を抱えています。中でも、心血管疾患、がん、呼吸器疾患、精神疾患、感染症は、疾病負担の大きな部分を占めています。これらの健康課題への取り組みには、予防措置、生活習慣の改善、公衆衛生キャンペーンの改善、そしてアクセスしやすい医療サービスの提供など、多面的なアプローチが求められています。

心血管疾患(Cardiovascular Diseases)
心臓病や脳卒中などの心血管疾患は、アイルランドにおける死亡および罹患率の主要な原因となっています。不健康な食生活、運動不足、喫煙、肥満といった生活習慣が、これらの疾患の発症率を高めているといえるでしょう。特に肥満率は年々増加しています。

がん(Cancer)
がんもアイルランドに蔓延している疾患の一つで、全体の疾病負担のかなりの部分を占めています。中でも、肺がん、乳がん、大腸がん、前立腺がん、皮膚がんは、高い罹患率を示しています。要因としては、喫煙や飲酒、環境汚染物質や日光への曝露などが挙げられます。この疾患の撲滅と生存率の向上を目指し、さまざまな公衆衛生活動が実施されています。

呼吸器疾患(Respiratory Diseases)
特に慢性閉塞性肺疾患(COPD)と喘息をはじめとする呼吸器疾患が増えています。COPDは喫煙や大気汚染物質への曝露によって、また喘息は遺伝的要因、アレルギー、環境刺激物質によって引き起こされることが多いと考えられています。一部地域に見られる湿気と寒冷な気候は、これらの疾患を悪化させる可能性も指摘されています。大気汚染を抑制するための法律の制定、禁煙プログラムの実施、適切な医療サービスへのアクセス向上が求められています。

精神疾患(Mental Health Disorders)
近年では精神疾患への関心も高まっています。うつ病、不安障害、双極性障害が、多くの国民に影響を与えています。ストレス、経済的困難、精神疾患を取り巻く偏見などがその要因として挙げられます。政府は、精神保健サービスの優先化、資金の増額、そして支援を求めることへの偏見の払拭に努めており、地域密着型の精神保健支援プログラムや教育キャンペーンも実施されています。

感染症(Infectious Diseases)
確立された医療制度と効果的な予防接種プログラムはあるものの、インフルエンザ、肺炎、性感染症は、依然として大きな脅威となっています。これらの感染拡大を抑制するために、ワクチン接種の促進、安全な性行為の実践、そして適切な衛生習慣を強調した公衆衛生キャンペーンが実施されています。

花粉症(Hay fever)
春から夏にかけて、主に芝、樺の木、オーク、ヨモギ、ブタクサなどの花粉が飛び、花粉症に悩まされる人が多いようです。花粉の種類が日本とは異なるため、アイルランドに来てから初めて花粉症になる人もいます。

細菌性髄膜炎(Meningitis)
1歳以下の子どもに多い感染症で、発熱、頭痛、意識障害などが出現します。かかりやすい病気というわけではありませんが、小さい子どもがいる家庭は注意が必要です。ある程度有効な予防接種があるので、長期滞在する20歳以下の人は渡航後にワクチン接種することが推奨されています(髄膜炎に対する予防接種は、アイルランドの小児予防接種スケジュールに含まれています)。

ダニや虫刺され
多くの病気は、感染したダニや蚊、ノミいった虫に刺されることで広がります。在住先にどのような種類の虫がいるのか、それらが活発になる季節はいつなのか、そしてどのような病気を媒介するのかを調べておきましょう。下記は良い予防策となります。
・露出した肌には認可された虫除けスプレーを使用
・ナイロンやポリエステルなどの織りのきつい素材で作られた、明るい色のゆったりとした服を着用
・靴下を履き、つま先の閉じた靴を着用
・屋外や半屋外に滞在する場合は蚊帳を使用
・屋外活動の後は、人間はもちろんのこと、持ち物や同行しているペットにダニが付着していないかを確認

予防接種

予防接種は、特定の病気を予防したり撃退したりするための安全で効果的な方法です。ワクチン接種は義務ではありませんが、保健省によって強く推奨されているものもあります。予防接種について不明な点があればGPに相談しましょう。

ワクチン接種を受けられる年齢と場所については、下記の表を参照してください。

生後2カ月6種混合ワクチン(ジフテリア、破傷風、百日咳、Hib(インフルエンザ菌b型)、ポリオ(不活化ポリオ)、B型肝炎)GP
肺炎球菌結合ワクチン
髄膜炎菌Bワクチン
ロタウイルス経口ワクチン
生後4カ月6種混合ワクチン
髄膜炎菌Bワクチン
ロタウイルス経口ワクチン
生後6カ月6種混合ワクチン
肺炎球菌結合ワクチン
生後12カ月MMR(麻疹、おたふく風邪、風疹)
髄膜炎菌Bワクチン
水痘ワクチン*
生後13カ月6種混合ワクチン
髄膜炎菌Cワクチン
肺炎球菌結合ワクチン
2歳〜17歳インフルエンザワクチン(鼻スプレー)GPまたは薬局
4歳〜5歳4種混合ワクチン(ジフテリア、ポリオ、破傷風、百日咳)GPまたは学校
MMR(麻疹、おたふく風邪、風疹)**
水痘ワクチン*
11歳〜14歳

(中等教育期間)
HPV(ヒトパピローマウイルスワクチン)学校
Tdap(破傷風と低用量ジフテリア)の追加接種
髄膜炎菌ACWYの追加接種

*2024年10月1日よりも前に生まれた子どもに対する水痘ワクチンは予防接種スケジュールに含まれていません。接種を希望する場合はGPに依頼しましょう。ただし、費用は自己負担となります。
**大人になるまで2度目のMMRワクチンを接種していない人は、18歳〜46歳であればGPにて無料で接種を受けることができます。ワクチン接種記録を紛失して2度目を受けたかどうかわからない場合、念のために再度接種しても害はありません。

上記表中のワクチン接種は無料です。また、16歳未満の子どもはワクチン接種を受ける前に保護者の同意が必要です。

ワクチン接種はスケジュール通りに受けるのが理想ですが、何らかの理由で受けられなかった場合でも、ほとんどのワクチンは後から遅れて接種することができます。

38度以上の発熱がある場合には、ワクチン接種を受けられるかどうかGPの医者か看護師に確認してください。予約の取り直しや変更もGPで行うことができます。

参考ウェブサイト
公的制度情報
ダブリン健康クリニック
日本外務省/世界の医療事情

歯科治療

アイルランドの歯科医療には、公的医療制度(Health Service Executive/HSE)と民間医療サービスがあります。公的医療制度では、特定の条件を満たすと無料または補助金付きの歯科治療が受けられますが、ほとんどの人は民間の歯科医院を利用しており、治療費は自己負担となることが一般的です。
公的医療制度の対象者は主に、医療カード(Medical Card)を持っている低所得者層、子ども(学校の歯科検診プログラムなど)、妊婦や特定の疾患のある患者です。
医療カードを持っている人は、抜歯や詰め物、歯石除去などの基本的な歯科治療を無料で受けることができますが、より高度な治療(例:クラウン、ブリッジ、矯正など)は対象外になることが多いです。
一方で、民間の歯科医療は非常に質が高いとされていますが、治療費が高額になってしまうこともあるので、国からの補助や保険制度を活用し、一定の支援を受けることが可能です。

⚫︎PPSナンバー(Personal Public Service Number)
アイルランドに居住する個人に発行される固有の識別番号で、社会保障、税務、医療などの公的サービスを受けるために必要です。
歯科医療においても、このPPSナンバーがなければ多くの補助制度を利用することができません。

⚫︎治療給付制度(Treatment Benefit Scheme)
アイルランドの社会保険制度に加入している人(および一部の扶養配偶者)を対象とした、医療費補助制度です。雇用主と従業員が支払うPRSI(Pay Related Social Insurance)保険料に基づいて、一定の条件を満たす場合に利用可能です。
この制度では、年1回の歯科検診(無料)やスケーリング(一部補助あり)などが受けられます。

予約から診察までの流れ

① 歯科医院の選び方
インターネット検索やSNS、知人の紹介を通じて、通いやすい場所・評判の良いクリニックを選びます。補助制度を利用したい場合は、その制度に対応している歯科医院かどうか事前に確認しましょう。

② 予約の取り方
基本的に予約制なので、電話やオンライン、または直接窓口で予約しましょう。初診の場合はチェックアップ(Check-up)または、診察(Consultation)として予約を入れます。

③ 受付・問診票の記入
予約時間の5~10分前には来院し、受付で名前や住所、PPSナンバーなどを伝えます。
また、初めての場合は問診票(medical history form)に自分の健康状態や歯の症状などを記入します。

④ 診察・検査・治療
診察が始まったら、歯科医から症状のヒアリング、口腔内のチェック、必要があればレントゲンで歯の状態を確認します。
軽度の虫歯の場合は詰め物やクラウンで治療、歯周病の場合は歯石除去や歯茎のケア、より専門的な治療が必要な場合は、別日での予約を取ることがあります。

⑤ 支払いと次回予約
治療が終わったら支払いを済ませ、次回の予約を取ります。定期的な検診は通常、年に1回が推奨されます。

アイルランドでの歯科医療は、日本と少しシステムが異なりますが、予約から治療までの流れを理解しておけば安心して通院できます。定期的な検診を受けることで、歯の健康を守りましょう。

視力矯正

アイルランドの眼科医療は、GPやオプティシャンでの一次診療と、専門のオフサルモロジスト(眼科医)による二次診療の仕組みで成り立っています。視力検査や眼鏡処方は街中のSpecsaversやVision Expressなどの大手眼鏡チェーン店で簡単に受けられます。

白内障や緑内障、網膜疾患など高度な治療が必要な場合はGPの紹介を通じて公的病院や専門クリニックにアクセスします。費用面では、社会保険(PRSI)加入者やメディカルカード保持者には眼科検診や眼鏡購入の補助制度があります。レーシックやICLといった自由診療の視力矯正手術も盛んで、ダブリンを中心に多くの専門クリニックが存在し、待ち時間も比較的短く最新技術にを受診できます。

アイルランドで眼科医(Ophthalmologist)を探す方法

GPに相談する
まずかかりつけ医のGPに相談し、必要があれば眼科専門医への紹介状をもらうのが一般的です。特に白内障・緑内障など病気の疑いがある場合はこのルートが必須になります。

HSE(アイルランド保健サービス)の公式サイト
HSEの公式サイトには、地域ごとの病院やクリニック、眼科サービスが検索できるページがあります。公的医療を利用するならここが確実な入口です。

オプティシャン(眼鏡・検眼チェーン)経由
SpecsaversVision Express などの眼鏡店では、視力検査後に異常があれば提携する眼科医を紹介してもらえます。日常的な視力の問題から専門医につなげてもらう流れとなります。

自由診療のプライベートクリニックで診療
ダブリンやコークなど大都市には、レーシックやICLなど自由診療を専門にする眼科クリニックがあり、ウェブから直接予約できます。待ち時間も短く、最新治療を受けやすいのが特徴です。

専門医はこちらから検索可能です。
Find an Eye Doctor

その他の医療機関

アイルランドでは補完代替医療(Complementary and Alternative Medicine/CAM)の人気が高まっており、健康管理の一環としてCAM療法を求める人が増えています。アイルランドにおけるCAMには、鍼治療(acupuncture)、カイロプラクティック(chiropractic)、漢方薬(herbal medicine)など、さまざまな治療法が含まれます。

鍼治療:鍼治療はCAMの一種で、体の特定のツボに細い針を刺すことでエネルギーの流れを刺激し、治癒を促進します。アイルランドでは、鍼治療の人気が高まっており、従来の医療と統合されることも少なくありません。
鍼治療を支援している団体の一つに、アイルランド鍼治療評議会(the Acupuncture Council of Ireland)があります。当評議会は1987年に設立された専門団体で、アイルランドにおける鍼治療の普及と規制に取り組み、鍼灸師への研修と支援を提供しています。

カイロプラクティック:CAMの一種で、特に脊椎に影響を与える筋骨格系疾患の診断と治療に重点を置いています。アイルランドでは、カイロプラクティックは広く実践されており、従来の医療と統合されることがよくあります。
カイロプラクティックを支援する団体の一つに、アイルランドカイロプラクティック協会(the Chiropractic Association of Ireland)があります。当協会は1979年に設立された専門団体で、アイルランドにおけるカイロプラクティックの実践の促進と規制に取り組み、カイロプラクターへの研修と支援を提供しています。

ハーブ療法
ハーブ療法は、健康とウェルネスを促進するために植物または植物抽出物を使用するCAMの一種です。アイルランドでは、ハーブ療法が広く利用されており、従来の医療と統合されることも少なくありません。
ハーブ療法を支援する団体の一つに、アイルランド薬草医登録協会(the Irish Register of Herbalists)があります。当協会は1987年に設立された専門団体で、アイルランドにおけるハーブ療法の実践の促進と規制に取り組み、薬草医への研修と支援の提供、ハーブ療法の実践基準の策定をしています。

アイルランドにおけるCAMの規制
CAMは保健省、医薬品規制庁、アイルランド医薬品委員会など、複数の政府機関によって規制されています。これらの機関は、CAMの実践基準の設定と、施術者が適切な研修を受け、資格を取得していることを保証する責任を負っています。
CAMを実践するには、施術者は関係政府機関から資格を取得する必要があります。資格取得には、選択したCAMにおける能力を証明することに加え、継続教育や倫理基準の遵守といったその他の要件を満たすことが必要です。

アイルランドにおけるCAMの課題
CAMの主な課題の一つは、様々な形態のCAMに対する規制や、有効性を裏付ける科学的根拠が不十分であるため、患者や医療提供者は、どのCAM療法が有効で安全であるかを判断することが困難になっています。

妊娠と出産

アイルランドに1年以上居住しているの公的に有効な居住証明書を持つ人の出産は、国籍を問わず、国の公的医療制度(Health Service Executive /HSE) https://www.hse.ie/の下で幅広い選択肢を見つけることができます。これには、自宅出産やプールなどの補助具を使用する出産などの選択肢が含まれます。
HSEの出産に関しては
https://www2.hse.ie/services/births-deaths-and-marriages/
https://www.hse.ie/eng/services/list/3/maternity/homebirth-services.html

出産計画の決め方
医師にあなたの希望や期待を伝えるために、出産計画を作成することをお勧めします。出産計画を作成する際には、
• どこで出産したいですか?
• 誰と一緒に出産したいですか(例:パートナー)?
• どのような出産方法を希望しますか(例:経膣分娩、帝王切開)?
• 出産補助具は必要ですか?
• 痛み止めは必要ですか?必要な場合は、どのようなものが必要ですか?
• どのような出産環境を希望しますか?
など、いくつかの点を考慮する必要があります。

HSEによると、アイルランドの帝王切開率は約20%から25%です。帝王切開を希望する場合、または必要と思われる場合は、かかりつけ医または産科医に相談してください。アイルランドの公的機関では、帝王切開後3日から5日間の入院が必要です。

産科ケア
かかりつけ医と地域の産科ユニット(local maternity unit)が連携する「産科・乳児ケア制度( the Maternity and Infant Care Scheme)」に基づいてケアを受けることができます。
妊娠が確認されると、12週間以内にかかりつけ医による診察を受けましょう。必要に応じて、かかりつけ医は地域の産科ユニットへの紹介状を発行します。初めての妊娠の場合は、かかりつけ医の初回診察プラス5回の診察と産科病棟での診察、初めての妊娠でない場合は、かかりつけ医の初回診察とその後6回の診察を受ける権利があります。
糖尿病などの非感染性疾患を1つ以上患っている場合は、初回診察プラス5回のかかりつけ医の診察を受ける必要があります。追加のケアが必要な場合は、公的機関による入院、外来、救急サービスを無料で受けることができ、費用はかかりません。
出産ケアに加えて、産科乳児ケア制度に基づき、かかりつけ医による産後2回の診察を受けることができます。通常、生後2週間と6週間に行われます。保健師(a public health nurse)による訪問は、通常、退院後72時間以内に行われます。また、乳児はかかと穿刺検査(the so-called heel prick test)を含むいくつかの検査を退院前に、または自宅出産の場合は自宅で受ける権利があります。
公的出産ケアの時期が終了すると、乳児にはGP訪問カードまたは医療カードのいずれかが必要になります。

自宅出産
リスクの低い妊娠であれば、自宅出産も可能です。多くのヨーロッパ諸国と同様に、アイルランドの在宅出産率は低いですが近年、HSEの在宅出産サービスを利用する女性の数は増加しています。
HSEは、自営業の地域助産師(Self-employed community midwives in Ireland/SECM)による全国自宅出産サービスを運営しています。自宅出産を希望する場合は、お近くの保健所に連絡して助産師を紹介してもらいましょう。SECMである担当の助産師が、HSE指定助産官(designated midwifery officer/DMO)に申請書を送り、DMOが適格性を審査します。申請が承認されると、出産前に数回の無料診察と産後に数回の診察を受けることができます。
また、自宅出産に関する全国ガイドラインに従い、GPに母子ケア制度(Maternity and Infant Care Scheme)への登録を依頼し、ご希望の産科病院の予約を取ることをお勧めします。産科病院によっては、自宅出産連絡コンサルタントが常駐しているところもあります。自宅出産が困難な状況が発生した場合は、ご自身と胎児の最善の利益のために、病院でのケアへの転院を勧められる場合があります。
妊婦と指名されたSECMが、契約条件に違反して自宅出産を行った場合、またはHSEに在宅助産サービスを申請せずに自宅出産を行った場合、当該助産師は、その後の医療過誤請求や検死審問において、医療保険制度(Clinical Indemnity Scheme/CIS)の保護を受けることはできません。
したがって、妊婦がSECMと自宅出産のための個人的な契約を結ぶ場合、代替保険に加入するのは助産師の責任であり、妊婦自身も代替保険に加入していることを確認する必要があります。

民間の医療機関で出産する場合
費用全額を負担する必要があります。また、民間の保険で自宅出産することも可能ですが、その場合はSECM(アイルランドの民間医療保険制度)と民間の契約を結ぶ必要があります。SECMが適切な保険に加入していることを確認してください。ご自身の保険証書を確認し、ご自身の妊娠が保険の対象になっていることを確認してください。
コミュニティ助産師協会(Community Midwives Association)

出生届
出生届をするには、戸籍役場への出生届の予約が必要です。ウェブサイトまたは電話で予約でき、一部の事務所では特定の時間帯に予約なしでも出生届を受付ています。出生届は無料。予約が取れたら必要書類を戸籍役場へ持参します。

必要書類
・記入済みの出生届用紙
双子や三つ子など複数の出生届を申請する場合は、子どもごとに別々の用紙にご記入ください。用紙には、子どもの生まれた順番の記入が必要です。
・パスポート・運転免許所・国民IDカード(national ID)などの写真付き身分証明書

出生登録は通常、両親のどちらか一方または両方が登録します。状況によって必要な手続きが異なります。

出生届の予約は、出産後3週間から、出生届は12カ月以内に提出してください。12カ月を過ぎてから提出する必要がある場合は、戸籍役場に電話かくにんしましょう。

自宅出産の場合は出生登録フォーム(birth registration form)をダウンロードして持参しましょう。

産休
従業員は妊娠した場合、フルタイムパートタイムの雇用形態や雇用期間を問わず26週間の育児休暇を取得する権利があります。また、最長16週間の追加産休を取得する権利もあります。
出産予定日の少なくとも2週間前、そして出産後少なくとも4週間は産休を取得する必要があります。
PRSIの保険料を十分に納めている場合は、26週間の基本産休に対して出産手当を受け取る権利があります。PRSIの保険料は、雇用または自営業から納付できます。出産手当は、追加の産休には適用されません。
父親(または母親もしくは出産した親のパートナー、または養子縁組の場合は養子縁組休暇を取得していない親)は、出産または養子縁組後6カ月以内に2週間の育児休暇を取得できます。
出産休暇中の父親は、休暇を延期することはできません。
出産休暇の延期を申請するには、出産後4週間を含む、少なくとも14週間の出産休暇を取得している必要があります。職場復帰後、最長6カ月間、出産休暇を延期することができます。
出産休暇を延期し、赤ちゃんが退院するまで職場復帰する場合は、残りの休暇をまとめて取得することができます。休暇は、赤ちゃんが退院後7日以内に開始する必要があります。雇用主は、病院に対し、赤ちゃんが入院したことを書面で確認し、その後退院日を確認するよう求めることができます。
出産休暇を延期して職場復帰する場合は、出産手当金局(Department of Social Protection/DSP)に書面で通知する必要があります。
赤ちゃんが退院したら、かかりつけ医または病院の医師がDSPに書面で通知する必要があります。その後、出産手当の受給が再開されます。DSPに提出するすべての書類には、個人公務員番号(PPS番号)が記載されている必要があります。

重篤な病気になった場合
従業員は深刻な健康状態の継続的な治療が必要な場合、産休を5週間から52週間まで延期することができます。
重篤な健康状態とは、生命と健康に重大なリスクをもたらす状態であり、医師が診断した身体的および精神的な疾患の両方が含まれます。産休を延期する必要がある場合は、雇用主に2週間前までに通知し、医師の診断書を提出する必要があります。
産休中にその他の病気になった場合、産休を延期して病気休暇終了後に取得することはできません。産休は連続して取得する必要があります。
病気による欠勤は、他の病気休暇と同様に扱われますが、病気休暇終了後に残りの産休を取得することはできません。
追加の産休中に病気になった場合、雇用主に追加の産休を終了できるかどうかを尋ねることができます。雇用主が同意した場合、病気休暇中として扱われます。その場合、傷病手当の受給資格が得られる可能性があります。ただし、追加の産休の残りの部分を後で取得することはできません。
赤ちゃんが入院した場合、産休を延期または遅らせることができる場合があります(ただし、単に体調が悪い場合はできません)。

妊娠中の就労
妊娠中は、妊娠に関連する通院のために休暇を取ることができ、通院のための往復の移動時間や診察時間を含め、必要なだけ休暇を取ることができます。
出産後14週間まで、医師の診察のために休暇を取ることもできます。出産前と出産後の両方において、これらの診察を受けている間は給与を受け取る権利があります。

安全衛生休暇
雇用主は、妊娠中、最近出産したばかり、または授乳中の場合、個別にリスクアセスメントを実施する必要があり、リスクがあれば、それを取り除くか、リスクから遠ざける必要があります。これらの選択肢が不可能な場合は、安全衛生休暇を与える必要があり、妊娠中の場合は、産休に入るまで安全衛生休暇を継続できます。
健康安全休暇中は、最初の3週間は通常の賃金が支払われます。その後は、PRSI拠出額に応じて、アイルランドの社会保護省(The Department of Social Protection/DSP)から健康安全給付金を受け取ることができます。
健康安全局(The Health and Safety Authority)

産休と給与
一般的に、雇用主は産休中の女性に給与を支払う義務はありません。雇用契約書を確認し、産休中に雇用主から給与と年金拠出金を受け取る権利があるかどうかを確認してください。
契約書によっては、産休中に出産給付金に加えて雇用主から給付金を受け取る権利が定められている場合があります。例えば、雇用主は出産給付金から受け取る金額を通常の給与と同額に上乗せすることがあります。
出産給付金を受け取ると、自動的にPRSIクレジットが付与されます。無給の追加産休中にクレジットを継続して取得するには、職場復帰後に雇用主に産休クレジット申請書の記入を依頼する必要があります。

産休の取得
出産予定週の末日の少なくとも2週間前に産休を開始する必要があります。週の末日は通常、土曜日の夜とみなされますが、それより早く開始することもできます。
26週間の基本産休終了後すぐに、最長16週間の追加産休を取得できます。追加産休は出産手当の対象外であり、雇用主はこの期間中の給与を支払う必要はありません。

産休の申請方法
産休開始希望日の少なくとも4週間前までに雇用主に書面で申請し、妊娠を証明する医師の診断書を提出する必要があります。
16週間の追加産休を取得する場合も、少なくとも4週間前に書面で通知する必要があり

出産手当
産休開始希望日の少なくとも6週間前までに、DSPの出産手当課に出産手当の申請をしてください。

診断書
医師の診断書に、医学的理由により予定より早く産休を開始する必要があると記載されている場合、産休はその日から開始されます。その他の通知は必要ありません。

産休と雇用に関する権利
一般的に、産休中または追加の産休中は、就業中とみなされます。つまり、年次休暇の権利を継続的に積み立てることができます。また、産休中に発生する祝日(追加の産休を含む)にも休暇を取得する権利があります。

解雇
産休に関する法律は、不当解雇からあなたを保護します。産休に関する権利について雇用主と紛争がある場合は、職場関係委員会に苦情を申し立てることができます。

産休後の職場復帰
復職の意思を雇用主に少なくとも4週間前までに書面で通知する必要があります。これらの通知要件を遵守しない場合、権利を失う可能性があります。
産休中に給与やその他の労働条件が改善された場合は、復職時にその改善が認められます。
産休期間後に職場に復職しない場合は、契約書に記載されている通常の方法で雇用主に通知する必要があります。

職場での授乳
授乳中は、給与の減額なく、休暇を取得したり、勤務時間を減らしたりできる場合があります。これは、出産後最大2年間(104週間)適用されます。

産休取得に関する問題
産休取得に関して問題がある場合は、まず雇用主に報告してください。雇用主と直接解決できない場合は、職場関係委員会(The Workplace Relations Commission /WRC)に正式な苦情を申し立てることができます。

WRCへの苦情申し立て方法
オンライン苦情申し立てフォームをご利用ください。

問題発生後6カ月以内に苦情を申し立ててください。正当な理由がある場合は、期限がさらに6カ月延長される場合があります。

職場関係委員会 – 情報・顧客サービス(Workplace Relations Commission – Information and Customer Service)

出産手当
出産手当の全額受給資格がある場合、週289ユーロを26週間(156日間)受給できます。すでに特定の社会福祉給付を受けている場合は、半額の出産手当を受給できる場合があります。出産手当は、就労している方および自営業の方で、以下の条件に該当する方を対象としています。

産休中
給与関連社会保険(Pay Related Social Insurance)に加入している方
出産予定日より前に出産休暇を開始する必要があります。
出産予定日の週の末日の少なくとも2週間前までに休暇を開始する必要があり、出産予定日の週の末日の16週間前より前に休暇を開始することはできません。
出産予定週の末日から16週間以内に雇用契約が終了する場合、最終勤務日の翌日から出産手当が支給されます。
有給の出産手当が終了した後、16週間の無給の産休を取得することが可能です。この休暇は有給ではありませんが、無給休暇を取得した週ごとにPRSIクレジットが支給されます。出産手当クレジットを申請する場合は、申請書に記入しましょう。

資格取得方法

PRSI拠出金
出産給付の受給資格を得るには、出産休暇初日の12カ月前までに39週間以上のPRSIを納付している必要があります。就職開始から39週間以上のPRSIを納付しており、かつ当該課税年度または当該課税年度の翌年度に39週間以上のPRSIを納付または加算している必要があります。
または当該課税年度に26週間以上のPRSIを納付しており、かつ当該課税年度の前年度に26週間以上のPRSIを納付している必要があります。
注:PRSIクラスA、E、およびHで納付したPRSI拠出金が対象となります。

従業員として被保険者となる前に被保険者自営業で、クラスSのPRSI拠出金を納付している場合は、出産給付の受給資格を得るのに役立つ場合があります。

従業員の場合の証明
出産予定日を証明する証明書を医師に依頼し、この証明書を雇用主に提出してください。雇用主は出産手当のための雇用主証明書MB2(Maternity Benefit form2)に記入し、交付します。出産手当を申請する際は、雇用主から発行されたMB2証明書を添付してください。

自営業の場合の証明
医師は産休の証明をしなければなりません。医師に出産手当のための診断書MB3(Maternity Benefit form3)に記入し、交付してもらってください。出産手当を申請する際は、医師から発行されたMB3証明書を添付してください。

給付額
出産手当は、26週間(156日間)で週289ユーロです。納税者の場合は、出産手当に対しても税金を支払う必要があります。ユニバーサル・ソーシャル・チャージ(the Universal Social Charge/USC)またはPRSIは支払う必要はありません。

給付金の増額
扶養家族がいる場合、給付金の増額を受けられる可能性があります。申請時に、出産手当金の定額給付額と、病気で仕事を休んだ場合に支給される傷病手当金(扶養家族がいる場合の増額を含む)の給付額を比較します。2つの給付額のうち高い方の給付額が支給されます。
出産手当金は、銀行口座または住宅金融組合の当座預金口座または預金口座に直接振り込まれます。住宅ローン口座への振り込みはできません。
雇用主は、出産休暇中も引き続き全額の給付金を受け取る場合があります。雇用主は、出産手当金を雇用主に支払うよう要求する場合があり、その場合は雇用主に支払うよう選択できます。

早産
早産の場合、出産手当は26週間終了後も追加支給されます。追加支給期間は、通常の26週間の有給産休期間の終了時に開始されます。
追加支給期間は、実際の出産日から、出産予定日(妊娠37週目)の2週間前までの週数です。出産予定日は通常、妊娠37週目となります。この時点で、26週間の産休と給付金の支給資格が開始されます。
出産が早産(産休開始予定日前)の場合は、PPS番号、出産日、当初の出産予定日を記載した医師の確認書を添えて、出産手当課にご連絡ください。

死産と流産
妊娠23週以降(つまり24週目以降)に死産または流産した場合、または出生体重が400グラム以上の場合、PRSIに加入している方は、26週間の産休を取得する権利があります。
死産または流産後に出産手当を申請するには、出産手当申請書を添えて、担当医師からの手紙を保健所の出産手当課に出産予定日、実際の出産日または流産日、妊娠週数を記入し提出してください。手紙には、以下の情報を必ず記載してください。

赤ちゃんが入院している場合
産休と出産手当の最後の12週間を延期することができます。資格を満たしていれば、出産手当を最大6カ月間延期することができます。

資格を得るための条件
・出産手当を少なくとも14週間受給していること
・出産後、少なくとも4週間の産休を取得していること

出産手当の延期をご希望の場合の連絡先
出産手当課(Maternity Benefit Section)
住所:Maternity Benefit Section, Department of Social Protection, McCarter’s Road, Buncrana, Donegal, Co. Donegal, F93 CH79
メールアドレス:maternityben@welfare.ie
電話番号:074 9164496/0818 300600

赤ちゃんが退院した後、出産手当金の支給を再開するには、出産手当課まで、赤ちゃんが退院したことを証明する手紙または証明書、延期した産休を再開する権利があることを示す雇用主からの手紙または証明書を同封の上書面で連絡する必要があります。

MyWelfare 申請
出産手当金を申請する最も簡単な方法は、MyWelfare.ie を利用することです。
MyWelfareは、アイルランド社会保障省が運営する、アイルランドの福祉サービス向けオンラインプラットフォームです。ユーザーは、社会福祉給付の申請、申請状況の確認、個人情報の更新など、様々なサービスに簡単にアクセスできます。これらのサービスにアクセスするには、アイルランドの政府サービスに一括ログインできるMyGovIDアカウントが必要です。
条件を満たすオンライン申請であれば、わずか数秒で給付金が自動で支給され、MyWelfare.ie で申請の進捗状況を確認することもできます。
従業員の方は、産休開始予定日の少なくとも6週間前までに出産手当を申請してください。自営業の方は、産休開始予定日の少なくとも12週間前までに申請してください。

こちらの申請書を使って出産手当を申請することも、こちらから申請書を請求することもできます。

手当に関する詳細は
https://www.gov.ie/en/department-of-social-protection/services/maternity-benefit/

MyWelfareに関する詳細は
https://services.mywelfare.ie/

水道水・食事

水道水

アイルランドの水道水は一般的に安全です。一時的に水質に問題が出ると、アイルランド水道局(Uisce Éireann)から通知が届くシステムになっています。しかし、日本と比べると硬水のエリアが多いことに注意しましょう。硬水は岩石や土壌から得られる天然ミネラルが豊富で、健康に良い影響を与える可能性がある一方で、胃腸の弱い家族がいる、あるいは建物や配水管が古くて貯水タンクに問題があると考えられる場合には、市販のミネラルウォーターや簡易浄水器を使用すると良いでしょう。在住エリアの水道水の硬質度はこちらに住所を入力することで確認できます。

食物

アイルランドの食文化といえば、島の豊かな自然資源に根ざした伝統とシンプルさが特徴。シンプルとはいえ、新鮮な地元産の食材でじっくり丁寧に調理される気取らない料理には満足感があります。中でも、柔らかいラム肉とジャガイモをはじめとするさまざまな野菜を煮込む「アイリッシュ・シチュー(Irish Stew)」は国民的料理といえるでしょう。もう一つの家庭料理の定番「ソーダブレッド(Soda Bread)」や、マッシュポテトとキャベツやケールを合わせた「コルカノン(colcannon)」、アイルランド風パンケーキ「ボクスティ(boxty)」などもこの国の食卓には欠かせないものです。

穀物、乳製品、赤身肉、果物、野菜を豊富に含む典型的なアイルランドの食生活は、一般的に心臓に良いとされる一方で、昨今の足腰をあまり使わない生活習慣や高カロリーの加工食品への容易なアクセスにより肥満率が上昇しています。冬季は日照時間が短く、脂の乗った魚や強化乳製品などの食品の摂取量が少なくなるという地理的条件と気候が、国民のビタミンD欠乏症の大きな要因となっていることも指摘されています。特に、子どもや出産年齢の女性、菜食主義者の間で見られる栄養問題として、鉄欠乏性貧血があります。鉄分を多く含む食品*と共に、鉄分の吸収を助けるビタミンC**も積極的に摂るよう心がけましょう。

*肉類(特にレバーや牛肉)、ほとんどの魚介類(特にカキ)、ドライトマト、ドライアプリコット、生パセリ、ほうれん草、ココナッツ、オリーブ、レーズンなど
**ピーマン、サツマイモ、オレンジ、キウイフルーツなど。鉄欠乏症になりやすい人は、鉄分の吸収を低下させる炭酸飲料、お茶、コーヒーの摂取を控えましょう。