ハンガリーの健康情報
医療システム・医療保険
国民皆保険制度
ハンガリーは、国営の国民健康保険基金(Nemzeti Egészségbiztosítási Alapkezelő/NEAK)によって運営される、税金で賄われる国民皆保険制度を導入しています。ハンガリー国内に住所があって有効な居住許可証(tartózkodási engedély)を持っている人であれば、外国人でもこの制度を利用して無料で治療を受けられます。
ハンガリーで働く外国人
就労目的でハンガリーに入国する外国人は、雇用主との雇用関係の開始時点から被保険者としてみなされるため、その後は雇用主が保険料を支払います。この基準に基づき、外国人はプライマリケア(az alapellátás)と専門医療(例外もあり)を受けることができ、すべての医療給付を受ける権利を取得します。
ハンガリーで働く外国人の扶養親族
ハンガリーで保険に加入している外国人の近親者で、他の法的資格に基づく給付金受給資格を有していない者は、地域健康保険基金との協定に基づき、医療給付金の受給資格を得ることができますが、例外もあるので詳細は確認しましょう。
ハンガリーの社会保障被保険者の範囲からの除外
ハンガリーで働く外国人労働者のうち、派遣国または国際機関の社会保障制度に加入している特定のカテゴリーの者は、一般的な被保険者の範囲から除外されています。
NEAKが提供する医療サービス
予防検診、プライマリヘルスケア、専門入院治療、専門外来治療、特定の歯科治療、リハビリテーション、救急車サービス、患者搬送、事故関連給付、薬剤費償還、医療補助器具費償還、メディカルスパサービス、交通費償還、公平性に基づく給付など、無料の医療サービスが含まれます。NEAKが提供する現金給付には、傷病給付、出産前手当、育児費用、事故関連給付が含まれます。
かかりつけ医(háziorvosi)
診察を受ける際は、社会保障カード(Társadalombiztosítási Azonosító Jel/TAJカード)と、14歳以上の方はパスポートなどの写真付き身分証明書を持参することで、無償で治療を受けることができます。
eカードなどのIDカードが社会保障カードとして使用できるかどうかは、各医療機関の条件によって異なりますので、社会保障カードを持参することをお勧めします。TAJ番号は、社会保障カードに付けられている社会保障番号で医療、社会保障、および私的年金制度に関連する記録の識別コードで、ハンガリーでは個人識別番号の一つとして利用されています。薬は有料で、医者に処方箋を書いてもらい、薬局で処方してもらいます。特殊な治療を受ける場合は別途治療費を請求される場合があります。
予約は電話または病院の受付に出向いて取ります。英語で対応してもらえないことがあるので、ハンガリー語のわかる人に付き添ってもらうか、英語のわかるスタッフが在籍しているか確認しましょう。
かかりつけ医の検索方法
ウェブサイト
e-health.gov.huで「かかりつけ医検索」機能を使って居住地に基づいて検索できます。
保健センター
地域の保健センターに問い合わせることもできます。
オンライン顧客ポータル(eガバメント)
eガバメントシステムで、かかりつけ医の氏名と連絡先を確認することもできます。TAJ番号で検索することで、データの確認が可能です。
ハンガリー政府のウェブサイト
https://www.magyarorszag.hu/
国民健康保険基金 (Országos Egészségbiztosítási Pénztár/(OEP)
OEPのシステムでもかかりつけ医の氏名や連絡方法についての情報を得ることができます。社会福祉サービス提供者:高齢者や障害者など、何らかの社会保障を受けている場合は、担当の社会福祉サービス提供者もかかりつけ医の情報を持っています。彼らの助けを借りて、かかりつけ医の氏名を確認することもできます。
外来専門医療
外来専門クリニックは、高い専門的基準で全国規模でサービスを提供しています。専門クリニック(内科、外科、循環器科、婦人科など)のネットワークは、小規模地域センターから郡立病院まで広がり、NEAKの資金援助によるキャパシティ制限内で運営されています。かかりつけ医または専門クリニックからの紹介制度により、アクセスが規制され、重複診療が最小限に抑えられています。
入院専門医療と病院ネットワーク
・郡立病院および市立病院:最も一般的な急性期医療、産婦人科、一般内科、外科を担っています。
・専門医療センター:大学病院および国立研究所。専門的、希少、または高度に複雑な介入が行われています。
その他のケア
救急サービス(国立救急サービス)は、救急患者ケアの中心的な役割を担っており、24時間365日体制の対応と事前スクリーニングを保証しています。看護師ネットワークは、就学前および学齢期の患者、妊婦、新生児に対し、予防スクリーニングとカウンセリングを提供しています。ホスピスケアと緩和ケアは、特別なニーズに対応し、慢性疾患や進行期の患者に健康と精神的なサポートを提供します。
国立救急サービス(the Országos Mentőszolgálat/OMSZ)は、ハンガリー最大の医療機関で、130年以上にわたるハンガリーの組織的な救命活動の歴史を代表する機関です。OMSZの救急車は、最短15分で全国各地に到着します。20箇所の救急ステーションの新設、60箇所のステーションの更新と200台の救急車を新たに導入しています。
プライベート医療(私立クリニック)
プライベート医療では、患者が民間の病院や開業医を選べ、複数の医師に診察してもらうことが可能です。医療費は、プライベートの医療保険に加入していない場合には患者の全額負担となります。
クリニックによって料金体系が異なり、治療費は高額になりますが、公立病院と比べると待ち時間は短いようです。また、スタッフが英語を話せるので、コミュニケーションがスムーズです。通訳を付けてくれますが、追加費用がかかります。
公立病院との連携ができていて、入院が必要な場合は公立病院に転院されますが、クリニックのスタッフがついてくれて何かとサポートしてくれます。
ブダペストにある主な私立クリニック
Medicover:ウェブサイトの問い合わせフォームから予約可能
Swiss Clinic:ウェブサイトからの予約可能
Rózsakert Medical Center:ウェブサイトからの予約可能
Firstmed Centers:電話予約のみ
Duna Medical Center:ウェブサイトはハンガリー語のみ、サイトからの予約可能
歯科医療
デンタルケアは社会保障支援を受けて利用できます。特定の年齢や妊娠など特定の生活状況において、歯科治療が無料となります。ただし、サービスによっては有料となるので、確認しましょう。
歯科技術費を除き、包括的な基本および専門の歯科治療は、次の場合に無料です。
・18歳以下、62歳以上
・18歳に達した後、公教育機関または職業訓練機関でフルタイムの学びをしている間
・妊娠確認から出産後90日まで
すべての被保険者は、以下のものを無料で受け取る権利があります。
・救急医療
・スクリーニング(特定の頻度で、例:18歳以上は年に1回)
・専門医の紹介がある場合の焦点検査、および他の基礎疾患に関連する歯科および口腔疾患の治療
・歯の保存治療(歯と歯の表面ごとにアマルガムと審美的な充填、歯ごとに年に1回の根管充填、ケアケースごとに根管治療)
・歯科手術ケア
・歯石の除去
・歯茎の変化の治療
緊急時の歯科サービスには、地域のケア義務に関係なく、資金提供を受けた歯科サービス提供者で無料で使用できます。
・歯の新たな偶発的な損傷のプライマリケア(交換、副木、薬用包帯、抜歯)
・虫歯や抜歯など、歯に由来する炎症の治療
・歯窩の炎症、親知らずの周囲の炎症を起こした軟部組織の治療
・口腔内の膿瘍の開口部
・嚥下および/または呼吸を妨げる異物の除去
・口腔粘膜および唇の急性炎症性の治療
・顎脱臼の再配置
・局所麻酔による三叉神経によって誘発される発作の緩和
・口腔内またはあらゆる起源の口腔周囲の出血の緩和
無料の歯科治療を受けるには、TAJカードと身分証明書が必要です。
視力矯正
眼科検診では、眼科医は視力だけでなく、目の健康状態もチェックします。下記の方法で無料眼科検診が、受けることができます。
眼鏡店(Optikai üzletek)
Vision Express、Optic World、GrandVisionなど多くの眼鏡店では、特に眼鏡購入キャンペーン期間中に、無料眼科検診を定期的に開催しています。
眼科クリニック(Szemészeti klinikák)
一部の個人眼科クリニックでは、特別な機会やキャンペーンの一環として無料検診を提供しています。
健康診断プログラム(Egészségügyi szűrőprogramok)
市町村または国の健康診断プログラムには、無料の眼科検診が含まれていることがあります。
教育機関(Oktatási intézmények)
一部の学校や大学では、学生向けに定期的に視力検査の日を設けています。視力の問題は学習障害の一因となることが多いため、学齢期の子供や若者に無料の視力検査を提供しています。
その他の医療機関
ハンガリーの代替医療(Alternatív gyógyászat)にはホメオパシー((Homeopátia)の他、健康増進のための治療法として鍼灸(akupunktúra)カイロプラクティック(kiropraktika)、ハーブや植物薬の使用をする植物療法(fitoterápia)、オステオパシー(oszteopátia)、電気療法、磁気療法、鍼療法などのマグネビット療法(Magnevit terápiát)があります。
慢性呼吸器疾患、心臓病、睡眠時無呼吸症候群、一酸化炭素中毒に効果のある体の組織への酸素供給を改善するために高濃度の酸素を体内に投与するオキシビット酸素療法(Oxivit oxigénterápiás)も利用されています。
ホメオパシー
ハンガリーでは乳幼児から妊婦、授乳中の母親、高齢者、さらには重病の患者まで、服用できるので、幅広い用途で利用されています。ホメオパシーの薬は登録医薬品であり、処方箋なしで薬局で購入でき、その利点は、副作用がなく、アレルギーを引き起こさず、肝臓や腎臓に蓄積せず、鎮静効果もありません。
鍼灸
ハンガリーの鍼灸は禁煙推進、頭痛、歯痛、背中や首の痛み、月経痛の緩和、陣痛の緩和、化学療法や手術によって引き起こされる吐き気と嘔吐の緩和などの治療に利用されています。
カイロプラクティック
神経筋骨格系、特に脊柱の構造的および機能的障害の治療や予防を目的とした手技医療で慢性疼痛症、筋骨格系の問題や姿勢障害の治療に利用されています。
ハーブや植物薬の使用をする植物療法
ハーブ療法としてよく知られている植物療法は、植物から作られた薬やお茶、植物から抽出したオイルなどを使い、自然治癒力を利用して病気を予防します。植物の天然有効成分と人体への総合的なアプローチの組み合わせに基づいているので、健康の維持と病気の治療をサポートします。
オステオパシー
筋骨格系とそれが健康全般に与える影響に焦点を当てて、筋肉、骨、関節の痛み、緊張、機能障害などの問題を治療します。身体の自己治癒力を重視し、症状だけでなく問題の原因を治療することを目指しています。
オステオパシーとカイロプラクティックの違いはどちらも手技療法を含みますが、オステオパシーは一般的に範囲が広く、より広範な筋骨格系、さらには内臓(臓器関連)の問題に対処します。
電気療法、磁気療法、鍼療法などのマグネビット療法
ハンガリー式マグネビット療法は、磁場を用いて身体の自己治癒プロセスを活性化し、生化学的バランスを回復させることを目的とした治療法で、関節や筋骨格系の不調、痛み、炎症、筋肉の問題などに利用されています。マグネビット療法は、鍼を使わない鍼治療の原理に基づき、ツボを刺激することで効果を発揮し、治療時の痛みはほとんど感じません。
妊娠と出産
ハンガリーでは、妊婦は住所に基づいて公立病院に入院できます。公立病院は通常、アクセスしやすいのが利点です。公立病院での出産を希望しない場合は、私立病院の入院届出書を提出する必要があります。この届出に基づいて、病院側は受け入れの可否を判断します。
担当のかかりつけ医と希望する病院の産科と新生児科を調べ、できれば希望の私立病院で出産した方に相談することをお勧めします。
多くの病院では、質問できる産科訪問を実施しています。
公立病院での出産
ケア費用がかからず、公立病院には複数の専門医や専門家が在籍していることが多いため、より複雑なケースでも適切なサポートを受けられるます。自然分娩を推奨し、定められた枠組みの中で現代的なアプローチで出産をサポートしようとしている公立病院もあります。ブダペストには、設備が整った快適な産科病棟も多数あります。
その一方、公立病院では医師を選ぶことはできず、当直医のもとで出産することになります。私立病院に比べ公立の産科病棟は混雑していて、母親と赤ちゃんのプライバシーが確保されていない場合があります。
私立病院での出産
私立病院は通常、プライバシーが保たれ快適に過ごすことができ、食事の選択肢も豊富です。例えば、父親はファミリールームに移動して、出産と最初の数日間を一緒に過ごすことができます。担当の医師と助産師を選べ、個人的な相談、産前産後サポートを受けることができます。
ニーズやサービスに応じて様々なパッケージから選択できますが、病院によりサービスには大きな差があり、38週目からすべての検査が料金に含まれている医療機関もあれば、表示されている金額が出産当日と翌日のみに適用される医療機関もあります。また、費用もかなり高額です。残念ながら、数百万ポンドは覚悟しなければなりません。希望のパッケージに何が含まれているのかをよく確認しましょう。
妊娠した場合は、10週目あたりでブダペストなら各区、地方なら各地域の Védőnői szolgálat (保健婦サービスセンター)を訪れ、担当保健婦から Várandósgondozási könyv (妊婦手帳)を受け取ります。保健婦は、原則、妊婦が登録している居住地で決まっています。
保健サービス訪問員/保健婦/助産婦(Védőnő)
ハンガリーでは、児童と家族の保護は保健訪問員の業務範囲に含まれます。これには、良好な健康状態の維持、疾病予防、健康増進と発達が含まれます。保健訪問員は、他の保健医療従事者と協力しながら、ケア対象者と緊密に連絡を取り合い、医療、社会衛生、精神衛生に関する助言を提供します。
検診プログラム、予防接種プログラム、25歳から65歳までの女性を対象とした子宮頸がん検診などの検診プログラムなどの企画、妊娠中の女性、産褥期、授乳中の母親へのケア、乳児期から就学前の児童や自宅で介護を必要とする学齢期の児童の保育など幅広い業務に携わっています。
育児手当
育児手当は、乳幼児保育手当(csecsemőgondozási díj/CSED)、児童育児手当(gyermekgondozási díj/GYED)、育児支援手当(gyermekgondozást segítő ellátás/GYES)、児童扶養手当(gyermeknevelési támogatás/GYET)があり、これらの補助金は、一度に支給されるのではなく、子どもの成長に合わせて順番に支給されます。
家族扶養給付金を順番に申請する方法は次のとおりです。
①CSED:産休期間中、最大24週間、出産の4週間前までに開始できます。
②GYED:2歳まで(双子の場合は3歳まで)
③GYES:3歳まで(双子の場合は学校が始まるまで)
④GYET:子どもが3人以上の場合のみ、最年少の子供が3歳から8歳まで
CSED
乳幼児保育手当は産休中に支払われ、出産する女性または代わりに新生児を育てる人が請求できます。手当を受け取るには、出産前の2年間に365日以上(被保険日数は連続している必要はなく、保険日数を合計した日数)就労し、社会保障費を支払っている必要があり、出産時に社会保障ステータスが有効な方、失業などの理由で出産前の42日以内に法的関係が終了した方、事故により扶養手当を受けなければならず、事故による傷病手当の支給期間中、または傷病手当の支給期間終了後28日以内に出産した方が受給できます。適切な保険料を支払っている限り、従業員、請負業者、請負人、および一次生産者として保険に加入できます。
GYED
産休終了後、CSEDの適用がなくなった後、引き続き休暇を延長、または仕事に復帰した場合でもGYEDを申請できます。支給額はCSEDより少額ですが、引き続き収入に基づいて計算されます。母親、父親、および親として認められる方は誰でもGYEDの受給資格があります。受給資格は自身の世帯で子供を養育していること、子どもの出生前2年間に365日間保険に加入していたこと(被保険日数は連続している必要はなく、保険日数を合計した日数)、手当の受給資格があり、休暇期間中に失業などの理由で保険契約が終了した場合受給できます。
GYES
CSEDまたはGYED、あるいはその両方の受給資格があった場合、これらの受給資格が終了した後にGYESが支給されます。これらの給付は、同じ子どもに対して同時に利用することはできません。子どもが複数いる場合は、同時に複数の給付を受ける資格がある可能性があります。
GYESは保険関係とは無関係であるため、CSEDまたはGYEDのいずれの受給資格もなかったとしても申請できます。この場合、子どもの出生時からGYESを受け取ることができますが、その期間は半年間就労できません。
GYESは、子どもと同居している両親のどちらかが利用できます。誰が利用するかについて合意できない場合は、後見機関が申請に基づいて決定します。
GYET
3人以上の未成年の子どもを養育している親または子どもを養育している保護者のみに国から支給される、保険に関係のない金銭給付金です。ただし、児童保護保護者および特定の保護者業務を専任で担う里親は例外です。
GYETは、世帯内で3人以上の未成年の子ども(最年少の子どもが3歳から8歳まで)を養育している親に個人ベースで毎月支払われる給付金です。(詳細情報)児童扶養手当(GYET)は、保険関係に関係なく、最年少の子供が3歳から8歳までの少なくとも3人の未成年の子供を養育するために、親またはその他の資格者に国から毎月支給される金銭給付金です。
育児手当の申請には、以下の書類を申請書に添付または提示する必要があります。
・申請者の身分証明書および在留カード
・児童の出生証明書原本
・申請者および児童のTAJ番号を証明する公的身分証明書
・申請者の口座を保有する銀行が発行した、口座の存在を証明する証明書(申請者が銀行口座への振込を希望する場合)
・慢性疾患または重度の障害を持つ児童に関する育児支援の決定を申請する場合、病気の内容を証明する診断書
その他、児童の条件により提出書類が異なるので確認しましょう。
支給
申請が審査された後、支援金は申請日から受給資格者の銀行口座に振り込まれるか、郵便為替で支払われるか、または給与の支払いと同様に支払われます。
水道水・食事
水道水
硬水であるため日本人は一過性の下痢を起こしやすく、市販のミネラル水の飲水がお勧めです。
食物
数種類のパプリカをふんだんに使う料理が多く、パプリカ以外にも何種類ものハーブやサワークリームがよく使われます。
内陸国のため、メインは魚介類より肉が多く、特に豚肉はとてもポピュラーな食材です。魚は淡水魚を揚げたり、スープにします。朝食もボリュームがありますが、基本的には昼食がメインです。夜はパンにサラミとチーズといった軽い食事は多いようです。







