オーストリアの健康情報
医療システム・医療保険
オーストリアの医療制度
オーストリアは世界で最も優れた医療制度を持つ国の一つで、ヨーロッパではベスト15に入るとされています(Legatum Prosperity Index調べ)。その制度は、公的医療、民間医療、社会保険の3つから成り立っています。公的医療は主に強制加入の社会保険料で賄われ、民間医療は病院の個室や特定の開業医へのアクセスなど、追加的な保障を希望する人が利用しています。
この国の医療サービスの特徴は、開業医、専門医、病院を含むすべての医療レベルへのアクセスが比較的自由であること。外来診療では、患者は独立開業医、グループ診療、病院の外来診療科、外来クリニックのいずれかを選ぶことができます。患者は、自分の担当医に、強制的社会保険(Statutory Health Insurance/Sozialversicherung/SHI)と契約している医師(45%)か、契約していない医師(55%)かの選択をすることも可能です。
国民皆健康保険
公的健康保険(Österreichische Gesundheitskasse/ÖGK)
は、社会医療保険基金の3つの柱の一つであり最大なのが健康保険。2020年に9つの地域医療保険基金が合併して設立されました。国民皆保険制度を基本とした公的医療保険には、被雇用者、年金受給者、学生を含むほとんどの住民に加入が義務付けられています。自営業者や無職者なども、加入条件を満たせば社会保険に加入することができます。
医療保険制度の財源は、一般税収(約40%)とSHI拠出金(約60%)です。
公的保険は、医師の診察(開業医と専門医)、入院と治療、予防接種や検診などの予防医療、処方薬(一部自己負担あり)、出産と育児、リハビリテーションと治療サービス、基本的な歯科治療など、幅広い医療サービスを網羅しています。
日本人を含むすべての非EU市民は、健康保険に加入する前に滞在許可証(Aufenthaltstitel)を取得しておく必要があります。滞在許可証の申請は、本国に所在するオーストリア大使館または領事館で行うか、現地到着後にオーストリアの居住当局で行うこともできます。
オーストリアの健康保険は一般的に雇用と結びついているため、被雇用者の公的健康保険の加入手続きは雇用主が行います。雇用主からはパスポート、労働許可証、居住登録書などの書類の提出を求められます。ÖGKに登録手続きをすると、通常、社会保険料(健康保険、年金、傷害保険、失業保険など)は給与から天引きとなります。
自営業者、無職者、学生が社会保険に登録するには、最寄りのÖGK事務所に直接出向くか、ÖGKのウェブサイトからオンラインで行います。その際、居住証明、身分証明、収入証明、学生の身分証明などが求められます。
上記いずれの場合でも、申請書に記入して公的医療保険に登録が完了すると、社会保障番号(Sozialversicherungsnummer/SV-Nummer)が割り当てられ、医療サービスを受けるための電子健康保険証(Eカード)が発行されます。病院や薬局では、必ずこのカードを提示してください。
民間医療保険名称
プライベート健康保険(Private Krankenversicherung/Zusatzversicherung/PKV)は、任意加入の補完的保険。個室または半個室の病室、公的保険制度外の医師や専門医の選択、私立病院や診療所の利用、充実した歯科治療や眼鏡治療、鍼治療などの代替・補完療法、待ち時間の短縮など快適なサービスの追加保障が受けられます。
保険料は所得ベースではなく、年齢、健康状態、選択した保険レベルといった要因によって決まり、保険料は民間保険会社に直接支払います。
駐在員や短期滞在者、旅行者には、民間医療保険の「短期医療保険プラン」も。加入すると、入院、緊急手術、救急車サービスなどの緊急医療サービスが受けられます。どの保険会社を選択するかは、求める医療内容や必要性に応じて各社を比較し、慎重に選びましょう。よく知られた医療保険会社には下記のものがあります。
・Allianz Care
・April International
・Cigna Healthcare
医療費
オーストリアの医療費は、公的健康保険に加入しているか、民間の補助保険に加入しているか、あるいは自己負担しているかによって大きく異なります。
公的健康保険の費用は主に所得に基づき、通常、被雇用者の給与総額の約3.87%が差し引かれます。社会保険料全体の対象となる所得の上限は月額6,450ユーロ(2025年現在)で、この額を超えても保険料は上がりません。(ただし、職種によって多少異なる場合もあります。)
緊急時の対応
オーストリアの緊急医療電話番号は144。オーストリアの救急医療サービス(Rettungsdienst)につながり、救急車を要請することができます。また、EU共通の緊急番号である112にダイヤルすることもできます。112は、医療、警察、消防など、あらゆる種類の緊急事態に対応しています。
聴覚障害者の方は、スマートフォンアプリ「DEC112」のテキストベースの緊急通報で、警察(112および133)、救急車(144)、消防隊(122)、山岳救助隊(140)に連絡することができます。緊急事態(私的領域における暴力など)が発生した際、音声またはテキストベースの緊急通報が不可能出会っても、DEC112アプリから警察に「サイレント緊急通報(Stiller Notruf)」を送信することができます。サイレント緊急通報を行うには、正確な住所をアプリに保存するか、チャットに入力する必要があります。詳しくは、警察の聴覚障害者向けサービス(0800 133 133)をご利用ください。
救急車および患者輸送サービス
ローテス・クロイツ/赤十字(Rotes Kreuz):オーストリア最大の人道支援非営利団体である赤十字。国内外での救急車と医療サービスを提供しています。災害救援サービスも行っており、年中無休で活動しています。
https://www.roteskreuz.at/home
オーストリア労働者サマリア連盟(Arbeiter-Samariter-Bund Österreichs)
さまざまな社会的サービスと人道支援を提供するボランティアの福祉団体。性別、民族、性的指向、宗教、世界観にかかわらず支援を提供しています。連盟の活動は、従来の救助や救急搬送はもちろんのこと、介護、難民申請者、ホームレス支援から、医療、社会福祉、開発協力、災害救援、青少年支援まで、大きく拡大しています。
https://www.samariterbund.net/
ヨハニター・ウンファル・ヒルフェ(Johanniter-Unfall-Hilfe e.V.)
ヨーロッパ有数の救急救命機関として知られる同団体。「常に寄り添う救急医療サービス」を24時間体制で提供しています。最新機器を備え、最先端の救急医療と、技術を習得した救急医と救急救命士が迅速に対応します。サービス内容は、救助・救急、救急車、医療、看護・在宅介護支援、社会福祉、応急処置訓練、災害救援など。
www.johanniter.at
オーストリア・マルテザー病院(Malteser Hospitaldienst Austria/MHDA)
マルテザー騎士団によって設立され、現在は複数のマルテザー援助団体がオーストリア大修道院の管轄下で統合されています。障がい者のケア、病人や孤独な人々への訪問サービス、HIV感染者への支援、末期患者とその家族への寄り添いなどを行っています。一部の州においては、救助・救急サービス、外来診療、応急処置講習を提供しています。さらに、必要に応じて国内外で災害救援活動も行います。
https://www.malteser.at/
オーストリア社会医療サービス(Sozial Medizinischer Dienst Österreich/SMD)
1995年に設立された非政治的かつ非営利の団体で、政治的、民族的、民族的、宗教的所属に関係なく、支援を必要とする一般の人々の生命と健康を守ることを目的としています。救助サービス、救急車輸送、モバイルケアに加えて、さまざまな社会分野にも関与しています。
https://www.osgs.at/organisationen/sozial-medizinischer-dienst-oesterreich/
かかりやすい病気
インフルエンザ
冬季は季節性インフルエンザが流行します。インフルエンザは単なる風邪ではなく、発熱、筋肉痛、激しい頭痛、ひどい喉の痛みがある他、しばしば痛みを伴う咳が出るなどの症状があります。悪化すると、下痢、吐き気/嘔吐を伴うことも。重症化すると、年齢にかかわらず命を落とすケースもあります。インフルエンザウイルスは常に進化しているため、改良されたワクチンで毎年予防接種を受けることが推奨されています。
ダニ脳炎(Durch Zecken Übertragene Enzephalitis/TBE)
春先から秋にかけて森林地帯に入ってマダニに咬まれることにより感染し、脳や髄膜、脊髄の炎症を引き起こす可能性のあるウイルス性疾患。オーストリアは、ヨーロッパで最もTBEの被害を受けている国の一つで、TBEウイルスを保有するダニは全国に生息しています。毎年すべての州で症例が報告されており、オーストリア全体が風土病地域に認定されています。TBEの分布は絶えず変化しているため、以前は発生していなかった地域で今後発生する可能性もあります。
TBEの発生率は、ケルンテン州(Kärnten)とシュタイアーマルク州(Steiermark)で最も高いとされる一方、症例は、オーバーエスターライヒ州(Oberösterreich)とチロル州(Tirol)で最も多く報告されています。長年TBEの症例がほとんど見られなかったフォアアールベルク州(Vorarlberg)においても、現在は毎年数件の症例が報告されています。
ダニに刺されてから発症するまでの期間(潜伏期)は、数日から1カ月と幅があります。発症までは通常2段階あり、第1段階では高熱、頭痛、手足の痛みといったインフルエンザに似た症状が現れ、第2段階は、約1週間の無症状期間の後、感染者の約3分の1の割合で中枢神経系が侵されます。脳と神経系のいずれが侵されるかによって、「髄膜炎」「 脳への重篤な影響(脳炎)」「脊髄への重篤な影響(脊髄炎)」へと進行します。後遺症が残ったり、時には死亡する例も毎年報告されています。現在のところ、ワクチン接種が唯一の予防策とされています。
その他の感染症
サルモネラやカンピロバクターによる感染性胃腸炎、その他の肝炎、性的接触による淋病、梅毒、AIDSの報告もあります。
交通事故
自転車と歩行者や自動車との接触・衝突事故が少なくありません。オーストリア統計局によると、交通事故による2024年度の死亡事故は、前年度より13%減少しているものの、重傷者数は大幅に増加しているとのこと。自転車や電動スクーターの利用者数が1992年以来の最高水準に達したこともその要因の一つに挙げられるかもしれません。薬物の影響で起きた事故による死亡者数も、記録開始以来の最高水準となっています。運転者自身が気をつけるのはもちろんのこと、他の道路使用者にも十分に注意を払って、事故を防ぎましょう。
予防接種
オーストリアにおいては予防接種は任意。子どもにとっては特に、予防接種は病気を防ぐ最も重要な予防策の一つではあるものの、義務ではありません。接種を受けるかどうかは、医師からの情報提供と説明を受けた上で、本人または子ども(14歳未満)の保護者が決定します。
オーストリアには各年齢層の子どもたちを対象とした無料予防接種プログラムがあり、保護者に金銭的負担をかけることなく接種が受けられるようになっています。プログラムは州ごとに実施されており、実施方法も州によって若干異なります。無料予防接種プログラムの参加場所と方法は、各州の相談窓口および予防接種センターで確認しましょう。無料接種対象外の推奨予防接種に関する情報は、最新の予防接種計画に記載されています。かかりつけ医に相談することもできます。現時点では、合計12種類のワクチンが15歳の誕生日まで無料で提供されています。
・6歳以下の子どもに提供される無料予防接種:
インフルエンザワクチン接種、COVID-19ワクチン接種、ロタウイルスワクチン接種(生後7週目から2回接種または3回接種、生後6カ月までに完了)、6つの感染症に対する混合ワクチン接種(ジフテリア、百日咳、破傷風、インフルエンザ菌b型、ポリオ、B型肝炎)、肺炎球菌感染症の予防接種(2歳まで、ハイリスクの子どもは5歳まで、生後3カ月目から3回接種)、3つの感染症に対する混合ワクチンMMR(麻疹、おたふく風邪、風疹、生後10カ月目から2回接種)
インフルエンザ予防接種は、生後6カ月以上のすべての人に推奨されています。9歳までの子どもは、初回のインフルエンザ予防接種として、少なくとも4週間の間隔をあけて2回接種を受ける必要がありますが、その後は年1回の接種となります。2歳以上の子どもは、痛みのない点鼻スプレーで接種を受けられる場合もありますので、医師に問い合わせてみましょう。
インフルエンザの予防接種で副作用が出ることは稀。例外的に予防接種を受けても感染することがありますが、軽い症状で済み、入院する可能性が低くなる場合がほとんどです。
2024/25シーズンは公的インフルエンザ予防接種プログラム(The Austrian Public Influenza Vaccination Program The Austrian Public Influenza Vaccination Program)の一環として、18歳まで無料で予防接種を受けることができました。2025/26シーズンに同様のプログラムが発表されるか注視しておきましょう。
・6歳以下の子どもに提供される有料予防接種:
髄膜炎菌性髄膜炎Bワクチン接種(生後3カ月目から開始)、髄膜炎菌性疾患Cワクチン接種(生後1年以降開始推奨、生後3カ月から接種可能)、ダニ媒介性脳炎(TBE)ワクチン接種(生後1年以降開始)、水痘ワクチン接種(生後1年以降開始推奨、生後10カ月から接種可能)、A型肝炎ワクチン接種(生後1年以降開始)
風土病であるダニ脳炎のワクチンは、合計3回(2回目:初回接種1~3カ月後、3回目:2回目接種9~12カ月後)の接種が必要です。3回の接種が終われば、小児は3年間、成人は5年間有効とされています。
入園・入学前には、ポリオ、DPT、MMR、B型肝炎、インフルエンザ菌b型(Hib)、先出のダニ脳炎などの予防接種証明を求められることがあります。直前になって慌てずに済むよう、入園・入学予定の幼稚園や学校に確認しておきましょう。
公的医療制度がカバーするその他のケア
オーストリアは、公的医療制度を通じて質の高いメンタルヘルスケアを提供しており、精神科医、心理療法士、専門クリニックにアクセスすることができます。一部のサービスでは、紹介状が必要だったり自己負担金がかかったりしますが、他のヨーロッパ諸国と比較すると、待ち時間という点では一般的にリーズナブルといえるでしょう。外国人でも民間医療機関、非営利団体、多言語ホットラインを通じてメンタルヘルスのサポートを受けることができます。一般開業医(GP-Hausarzt)が、メンタルヘルスの問題についての最初の窓口となり、患者のニーズを評価した上で、精神科医、心理学者、心理療法士などの専門家に紹介状を発行します。公的医療サービスを利用するには、Eカード(電子健康保険証)をお忘れなく。
また、オーストリアでは女性の平均寿命はおよそ84歳と男性よりも長生き。公営健康保険ではレディースヘルスケアが充実しており、サービスも幅広くカバーされています。かかりつけ医か、婦人科医もしくは産科医を通して、質の高い女性向けの医療サービスを受けることができます。
歯科治療
オーストリアの歯科医療は非常に高い水準を誇り、都市部には英語を話せる医者も少なくありません。歯科医師の大多数が社会保障制度を使った治療を行っており、人口の約99%がこの制度を通して基本的な歯科医療を受けることができます。
歯医者を見つけるには、知人・友人から情報を仕入れたり、在住地域の「歯医者(ZahnarztまたはZahnŠrzte)」を検索したり、あるいは全国の歯科医師の包括的なリストを提供する「DocFinder.at」などのウェブサイトを使うのもよいでしょう。適当な歯科医が見つかったら、電話をするか直接訪問して患者登録を行います。多くの場合、氏名、住所、保険情報などを求められるので、Eカード(電子健康保険証)と共に準備しておきましょう。
成人の場合、公的健康保険で歯周炎早期発見のための歯科検診(歯周病スクリーニング)とスケーリング(硬い歯垢の除去)が年に2度受けられる他、痛みに対する緊急治療、根管治療、抜歯(麻酔を含む)といった歯科費用にも保険が適用されます。
18歳未満に対する固定式矯正治療も、必要と判断されれば保険が適用されます。
臼歯部のアマルガム詰め物の費用は保険適用内ですが、プラスチック製の白い詰め物は前歯のみに適用され、臼歯部の白い詰め物は自己負担となります。インプラント、ブリッジ、審美治療とみなされる歯列矯正などの特定の処置については、公的医療保険の対象外。幅広い保障が必要な場合には、民間の医療保険に加入するとよいでしょう。歯科治療に特化した保険もあります。
視力矯正
オーストリアの眼科医療のレベルは高く、眼科医は最低5年間の研修を受け、その後1年間の専門研修を修了して初めて診療することができるようになります。最も一般的な眼科医療従事者は、「眼科医(Augenarzt)」と「検眼医(Optiker)」。眼科医は眼科医療を専門とし、検眼医は視力測定と矯正レンズの処方が専門です。検眼医/眼鏡技師は眼科医と同じレベルの研修や訓練は受けていないため、目の健康に不安のある方は、検眼医や眼鏡技師ではなく眼科医に行くことをお勧めします。
公的医療保険制度では、すべての居住者に対して、眼科検診、白内障手術を含む一部の治療や処置が保険適用となり、それ以外の眼科医療サービスは自己負担。一部の公営病院では、高額治療選択肢を提供するための資金不足が懸念されており、必要な特定薬剤が使えないという報告もあります。専門的な眼科医療が必要となる場合に備えて、民間医療保険に加入しておくとよいでしょう。
どこの街でも見かける検眼医のサービスは、一般的に公的医療保険の対象外。一部の民間医療保険でこれらのサービスがカバーされることもあります。
オーストリアで眼科医を見つけるには以下の方法があります。
かかりつけ医の紹介
かかりつけ医が眼科医または検眼医を紹介してくれます。
保険会社
保険会社の多くは、ネットワーク内の眼科医のリストを保有しているので、在住地域の眼科医のリストを提供してくれます。
オンライン検索
多くの眼科医はウェブサイトにサービス内容、料金、連絡先情報を詳しく掲載しているので比較検討ができます。
街でよく見かける有名な検眼医には、以下のものがあります。
Apollo-Optik
オーストリア全土に店舗を持つ検眼店チェーン。視力検査、コンタクトレンズのフィッティング、処方眼鏡とコンタクトレンズの販売を行います。
Fielmann
ドイツに本拠を置く企業で、オーストリアにも複数の店舗を持っています。視力検査、コンタクトレンズのフィッティング、処方眼鏡とコンタクトレンズの販売を行います。
Optik Wölfleder
国内に複数の店舗を持つ家族経営の検眼医。視力検査、コンタクトレンズのフィッティング、処方眼鏡とコンタクトレンズの販売を行います。
その他の医療機関
補完代替医療(Complementary and Alternative Medicine/CAM)とは、従来の医療とは異なる、幅広い治療法を指します。従来の医療は科学的根拠と実証済みの技術に基づいていますが、CAMはより自然でホリスティックなアプローチを採用しているのが特徴です。従来の医療を補完する意味で、多くの人々が代替医療を求めるオーストリアではCAMが広く普及しています。
ホメオパシー(Österreichische Gesellschaft für Homöopathische Medizin/ÖGHM)
高濃度に希釈された物質を用いて、身体の自然治癒力を刺激する自然療法。オーストリアではホメオパシーが広く実践されており、アレルギーや消化器系の問題、慢性的な痛みなど、さまざまな健康状態の治療を求める人々が利用しています。
オーストリア・ホメオパシー医学協会(Österreichische Gesellschaft für Homöopathische Medizin/ÖGHM)は、ホメオパシーに関する情報やリソースを提供し、ホメオパシー施術者による相談を受け付ける団体です。
伝統中国医学(Traditionelle Chinesische Medizin/TCM)
中国医学とは、鍼治療、漢方薬、その他の自然療法を含む医療体系を意味します。オーストリアではTCMが広く実践されており、慢性的な痛み、不安、不妊症など、多岐にわたる健康問題の治療を求める人々が利用しています。
オーストリア伝統中国医学協会(Österreichische Gesellschaft für Traditionelle Chinesische Medizin/ÖG TCM) は、最高水準の伝統中医学を幅広い専門家グループに対して教育し、その意識を広く一般の人々に浸透させることを目的として設立された団体です。
アーユルヴェーダ(Ayurveda)
アーユルヴェーダは、フード、ハーブ、その他の自然療法を通して身体のエネルギーバランスを整えることに重点を置いたインドの伝統医学。オーストリアでは、消化器系の問題、ストレス、慢性疾患の治療を求める人の増加にともなってアーユルヴェーダの人気が高まっています。
オーストリア・アーユルヴェーダ専門協会(Österreichische Gesellschaft für Ayurveda Österreichische)は、アーユルヴェーダの科学とそれに基づいた健康と人生に関する教えを守り、医療分野および非医療分野において推進する団体です。
オステオパシー(Osteopathie)
オステオパシーは、筋骨格系に焦点を当て、健康とウェルビーイング全体の向上を目指す自然療法。オーストリアではオステオパシーが広く普及しており、多くの人が腰痛、頭痛、その他の筋骨格系の問題の治療をオステオパシーに求めています。
オーストリア・オステオパシー協会(Österreichischen Gesellschaft für Osteopathie/OEGO)は、国内のオステオパシー認識の向上に向けて積極的にキャンペーンを行い患者の健康と安全のため、すべてのOEGO会員の高い研修水準を監督する団体です。
妊娠と出産
婦人科医療を含むオーストリアの医療制度とケアの質は非常に高く、外国人にとっては特に心強いでしょう。健康保険オプションが豊富で、子ども手当も充実しているので、妊娠前から出産後まで母子共に安心して過ごすことができます。
自宅出産は選択肢の一つではあるものの、非常に稀。出産の多くは公立の病院または産科センターで行われますが、もちろん民間の病院もあります。民間病院は、公立病院と比べるとより快適でプライバシーも保たれていますが、それ以外の面では公立病院も同等のケアを提供しています。
産婦人科サービスへのアクセス
まずは、自分でかかりつけ医を選ぶか、紹介を依頼するかを決めます。自分で選ぶ場合、その医師が加入している保険会社に対応しているか確認しましょう。オーストリアの医療制度は、公的保険と民間保険の両方に対応しているため、婦人科の医療サービスを受けるのに苦労するということは、基本的にはありません。しかし公的医療には待機リストがあるため、予約が間に合わなくなるケースがあることも考慮し、民間医療保険への加入を検討してみることをお勧めします。
出産費用保険
出産費用はすべて公的保険でカバーされており、入院から超音波検査、血液検査までがすべて無料です。重要なのは、公的医療制度は強制加入の医療保険制度に基づいていること。外国人駐在員の場合、公的医療保険は雇用主を通してすでに加入していることが前提です。加入が確認された後で、産婦人科医で登録手続きを行うことができます。永住権を持つ国がオーストリア以外であっても、「EU健康保険カード(EHIC)」を持っていれば現地の公的医療保険制度を利用することができます。
産前検診
産前検診は綿密に計画されます。産婦人科医が妊娠を確認すると、「母子手帳(Mutter-Kind-Pass/MuKi)」が渡されます。手帳には、赤ちゃんが5歳になるまでの、お母さんと赤ちゃんのためのすべての診察、予防接種、検査内容が記載されます。
法的に健康保険のすべての給付を受けるためには、妊娠14週目までに医師の確認を受けましょう。そうすると16週間の産休に必要な書類をすべて揃えてくれます。出産予定日が近づくと、担当の助産師があらゆる質問に答え、出産計画を作成します。
スキャンと検査、そしてチェック
妊婦健診の情報は下記のとおりです。結果はすべてMuKiに記載されます。
・母体健康診断
・スクリーニング検査
・超音波検査を含む定期検査(ハイリスク妊娠診断のための検査)
・診断検査(ハイリスクと診断された場合の、赤ちゃんの特定の健康状態をより正確に知るための検査)
※オーストリア連邦保健安全局(Bundesamt für Sicherheit im Gesundheitswesen/BASG)は、妊婦にインフルエンザワクチンの接種を推奨しています。
出産前教室
医師は、出産と子育てに関わる精神面・肉体面での困難に備えるために、出産前教室の受講を推奨しています。出産前教室は、すべての病院の産科病棟や成人教育学校(Verband Österreichischer Volkshochschulen)で開かれます。担当の助産師が指導してくれることもあります。
出産
オーストリアでの出産には、病院や自宅の他、いわゆる外来出産という選択肢があります。
外来出産でも出産は病院で行われますが、合併症がない限り出産の数時間後には赤ちゃんを連れて帰宅し、その後は助産師(Hebamme)と小児科医が自宅でのケアを提供します。外来出産を選択する場合には、妊娠のできるだけ早い段階で助産師と小児科医を見つける必要があります。
病院で出産する場合には、分娩室に付き添い(パートナー、家族、または友人のいずれかから選択)が1人だけ入ることができます。歩行が可能であれば、出産後6時間以内に退院できますが、希望者すれば1泊入院することもできます。4日以内の退院は、健康保険が産後ケア費用を負担します。早産や多胎出産の場合の入院期間は、赤ちゃんの発育状況に応じて異なります。帝王切開の場合は出産後5日目以降に退院し、その後は助産師が自宅を訪問することも可能。帝王切開で6日目より前に退院した場合は健康保険が費用を負担します。
産後ケア
外来出産や自宅出産においては、産後ケアは特に重要。外来出産した場合には、まずは小児科医が赤ちゃん検診のために訪問、その後は助産師が少なくとも最初の5日間毎日訪問します。民間保険に加入していてそのサポートを受ける場合は、自宅出産後にも助産師が毎日訪問してくれます。助産師は授乳の手伝い、傷の治り具合の確認、赤ちゃんの体重測定をし、精神面での健康についても相談に乗ってくれます。妊婦健診票には、診察の予約を含め一連の診察内容が記載されます。
出産後には、他の新米ママさんたちと交流しアクティブに過ごせる産後教室がたくさん用意されています。産院は、子どもと一緒に参加するヨガ教室やベビーマッサージなど、さまざまなコースを提供しています。
首都ウィーンの親子センター(Eltern-Kind-Zentrum Wien)では、誰もが無料で参加できる産前・産後の教室が開催される他、親も赤ちゃんも共に楽しめる出会いの場にもなっています。遊びを中心としたさまざまなプログラムや、子育てについて学ぶ機会も用意されています(ただし主な言語はドイツ語)。
予防接種
オーストリアでは予防接種は任意となっており、保護者は、子どもがどの予防接種を受けるかどうか、受けるならいつにするかを決める権利があります。現時点では、合計12種類のワクチンが15歳の誕生日まで無料で提供されています。
・6歳以下の子どもに提供される無料予防接種: インフルエンザワクチン接種、COVID-19ワクチン接種、ロタウイルスワクチン接種(生後7週目から2回接種または3回接種、生後6カ月までに完了)、6つの感染症に対する混合ワクチン接種(ジフテリア、百日咳、破傷風、インフルエンザ菌b型、ポリオ、B型肝炎)、肺炎球菌感染症の予防接種(2歳まで、ハイリスクの子どもは5歳まで、生後3カ月目から3回接種)、3つの感染症に対する混合ワクチンMMR(麻疹、おたふく風邪、風疹、生後10カ月目から2回接種)
・6歳以下の子どもに提供される有料予防接種: 髄膜炎菌性髄膜炎Bワクチン接種(生後3カ月目から開始)、髄膜炎菌性疾患Cワクチン接種(生後1年以降開始推奨、生後3カ月から接種可能)、ダニ媒介性脳炎(TBE)ワクチン接種(生後1年以降開始)、水痘ワクチン接種(生後1年以降開始推奨、生後10カ月から接種可能)、A型肝炎ワクチン接種(生後1年以降開始)
保育園と託児所
子どもが生まれたらできるだけ早くに在住地域の市役所または行政機関を通して、託児所、幼稚園、またはデイケア施設に申し込みましょう。1歳未満の赤ん坊を受け入れる保育園を見つけるのは困難なため、母親は通常、出産後1年間(あるいはそれ以上)の産休を取ります。3歳になるとすべての子どもが入園資格を得ます。実際には、子どもたちの多くは産休が終了する前に保育園に入園しているようです。
母乳育児
オーストリアでは母乳育児が一般的。しかし、生後6カ月になると、完全母乳育児をする女性は約10%にまで減少します。通常、病院と助産師の両方が授乳サービスを提供しています。
出生証明書の申請
病院で出産した場合には、病院が地域の住民登録事務所に出生届を行い、その際に住民登録用紙(Meldezettel)が交付されるのが普通です。赤ちゃんがオーストリア国籍の場合は、市民権証明書(Staatsbürgerschaftsnachweis)が交付されます。出生登録、出生証明書(Geburtsurkunde)、市民権証明書の発行は無料です(出生証明書は、手数料を払えば郵送可)。
赤ちゃんの出生届は生後1週間以内に行う必要があり、出生届を行うにはまず出生証明書が必要になるので、自宅出産の場合は3日以内に申請してください。
出生届には、以下の書類が必要です:
・両親の出生証明書
・両親の婚姻証明書
・両親の国籍証明書
・主な居住地が海外の場合は、住所証明書
・(すでに決まっていれば)赤ちゃんの名前
・出生登録用紙(Anzeige der Geburt)*
*病院長、医師、または助産師が出生登録していない場合のみ
住民登録事務所(Standesamtsverband)は、こちらから検索できます。
非居住者、訪問者、観光客のオーストリアでの出産
オーストリアでは、観光客や短期滞在者を含むすべての人が医療サービスを受けることができます。しかし、社会保険を払っていない場合には全額負担となることもあるので、入国する前に必ず旅行保険に加入しておきましょう。
EUやEEA(欧州経済領域)、スイスの国民と法的居住者が取得できる「EU健康保険カード(EHIC)」を持っていれば、現地の人々と同様の保険医療が受けられます。ただし、EU加盟国ごとに受診できる医療内容が異なるため、母国では無料の処方箋がオーストリアでは有料というケースもあります。
育児休暇
他の多くの国と比べ、オーストリアの育児休暇はとても手厚いといえるでしょう。特にユニークなのは、出産予定日の8週間前から、産後8〜12週間まで続く「母子保護制度(Mutterschutz)」。この期間中の就労は認められておらず、育児休業期間中は給与が全額支給されます。雇用主側もこの法律をかなり厳格に遵守する傾向があります。この制度を享受するためには、妊婦は妊娠と出産予定日が分かり次第雇用主にその旨を知らせ、雇用主は出産休暇開始予定日の4週間前までに妊婦の産休開始予定日を知らせなければなりません。
母子保護制度期間が終了すると同時に「育児休業(Karenz)」が開始され、健康保険から「育児手当(Kinderbetreuungsgeld)」が支給されます。
オーストリアでは、両親が育児休業を分担するのが一般的。希望すれば、育児休業期間中に少なくとも2カ月の間隔をあけさえすれば、父親と母親が2度交代することができます。育児休業中の給付金は期間によって異なりますが、基本的に、休業期間が長いほど給付額は少なくなります。1年目は基本給の100%が支給されますが、2年目は50%に減額されます。
出産の3年以上前から同じ勤め先に勤務していた人は、パートタイム勤務(Elternteilzeit)の申請ができます。雇用主はあなたと相談の上、双方に都合のよいパートタイム勤務時間を見つける義務があります。パートタイム勤務の期間中は、雇用者も被雇用者もそれぞれ1度だけ勤務時間の変更を申請することができます。また、この権利を行使しても、子どもが4歳になるまで解雇されることはありません。
さらに、2019年に父親育児休暇法(VäterKarenzgesetz/VKG)が改正されて以降は、父親は子どもが生まれた後1カ月間の休暇(無給)を取得できるようになりました。この休暇は「パパ月間」と呼ばれ、子どもの誕生の翌日から取ることができます。ただし、出産予定日の3カ月前までに雇用主に通知しないとなりません。
水道水・食事
水道水
オーストリアでは地域ごとに水の供給を注意深く監視する義務があるため、湖水は定期的にチェックされています。どの地域も衛生状況は良好で、水道水は新鮮で安全です。環境面においても、プラスチックゴミを減らし、輸送によって排出される排気ガスを避けるために、水道水を飲むことが推奨されています。
食物
立地上、イタリア、ドイツ、フランス、ハンガリーなど複数の異なる文化から影響を受けたオーストリア料理の歴史は何世紀も前に遡ります。多くのヨーロッパ諸国と同様に、オーストリアは文化と伝統のるつぼで、その豊かで多様な料理はそれを反映しているといえるでしょう。興味深いことに、現在オーストリアの郷土料理として愛されているものの多くは、実は異国の地で生まれた料理。例えば、オーストリアの国民食とも称される「ウィーン・シュニッツェル(Wiener Schnitzel)」は、北イタリアから伝わった可能性が高く、日本ではウィンナーソーセージとして人気の高い「ヴュルストヒェン(Würstchen)」も、南ドイツでは古くから珍味として食されてきました。世界でもよく知られる「グーラッシュ(Goulash)」はハンガリー生まれです。
また、濃厚なチョコレートスポンジをさらにチョコレートでコーティングした「ザッハトルテ(Sachertorte)」や、マジパンとバターをたっぷり使ったりんごの焼き菓子「アプフェル・シュトゥルーデル(Apfelstrudel)」など、日本では「ウィーン菓子」と呼ばれる伝統的なお菓子もたくさんあります。
このようにオーストリアの食事は一般的にカロリーが高く、乳製品を多用する傾向にあります。メタボリックシンドロームにならないよう、おいしい食事もほどほどにしましょう。







