今では世界中の国々で生産されているチェダーチーズ。 日本のスーパーマーケットのチーズコーナーでも「チェダー」という文字をよく目にします。 しかし、 そもそも「チェダー」とは一体何であるのかを定義することは実は非常に難しいのです。

発祥地はイギリス西部のサマセット州チェダー村。 チーズを熟成していた同村の洞窟の名称である「チェダー渓谷」にちなみ、 16世紀あたりに「チェダー」というチーズ名が確立したとされています。
ときは流れ、 特有の酸味と凝縮感のあるボディ、 そしてナッツを思わせる味わいを生み出す製造工程が、 いつしか「チェダリング」と呼ばれるようになりました。

18世紀から19世紀にかけての産業革命期に、サマセットの酪農家であるジョセフ・ハーディング氏が科学的なアプローチを採用し、チーズの生産効率性を大幅に向上させました。生産過程が標準化したことでその技術は世界中に広まり、また産業革命期という当時の時代風潮も手伝って、「チェダー」は世界のチーズ工場で量産されるようになりました。「チェダーチーズの父」とも呼ばれるハーディング氏は、上質なチェダーについて次のように述べています。

締まったボディと凝縮感のあるテクスチャーを持ちながらもまろやかで、口の中で溶ける濃厚な味わいは芳醇かつ高貴なものであり、ちょうどヘーゼルナッツ(ハシバミ)ようである。


© Culture&Culture

現在のイギリスでは、工場で大量生産された真空パックの「ブロック型チェダー」と、1980年代から続く農家製チーズ復興期に蘇った、円柱型チーズを布で巻いた伝統的な「クロスバウンドスタイル・チェダー」が共存しています。前者は、イギリスであればお財布に優しい価格でスーパーマーケットなどでも大量に出回っており、後者は、特別な機会に味わいながら楽しむちょっとした高級感が漂うチーズとして、専門店やデパートなどで販売されています。

昨今ではヨーロッパ、特にフランスのチェーンのスーパーマーケットでブロック型チェダーが売られていたり、チーズ専門店ではクロスバウンドのチェダーでさえ見かけることもありますが、各国それぞれが主に自国産チーズを取り扱うため、ヨーロッパ大陸でチェダーを見かける機会はまだまだ稀のようです。

イギリスを訪れる際には、ぜひ本場のチェダーチーズを探してみては。イギリス伝統の味を楽しむことができますよ。

https://living-in-eu.com/wp-content/uploads/2025/04/2504_cheese.jpghttps://living-in-eu.com/wp-content/uploads/2025/04/2504_cheese-150x150.jpgLiE特別寄稿シリーズ楽しみたい食今では世界中の国々で生産されているチェダーチーズ。 日本のスーパーマーケットのチーズコーナーでも「チェダー」という文字をよく目にします。 しかし、 そもそも「チェダー」とは一体何であるのかを定義することは実は非常に難しいのです。 発祥地はイギリス西部のサマセット州チェダー村。 チーズを熟成していた同村の洞窟の名称である「チェダー渓谷」にちなみ、 16世紀あたりに「チェダー」というチーズ名が確立したとされています。 ときは流れ、 特有の酸味と凝縮感のあるボディ、 そしてナッツを思わせる味わいを生み出す製造工程が、 いつしか「チェダリング」と呼ばれるようになりました。 18世紀から19世紀にかけての産業革命期に、サマセットの酪農家であるジョセフ・ハーディング氏が科学的なアプローチを採用し、チーズの生産効率性を大幅に向上させました。生産過程が標準化したことでその技術は世界中に広まり、また産業革命期という当時の時代風潮も手伝って、「チェダー」は世界のチーズ工場で量産されるようになりました。「チェダーチーズの父」とも呼ばれるハーディング氏は、上質なチェダーについて次のように述べています。 締まったボディと凝縮感のあるテクスチャーを持ちながらもまろやかで、口の中で溶ける濃厚な味わいは芳醇かつ高貴なものであり、ちょうどヘーゼルナッツ(ハシバミ)ようである。 © Culture&Culture 現在のイギリスでは、工場で大量生産された真空パックの「ブロック型チェダー」と、1980年代から続く農家製チーズ復興期に蘇った、円柱型チーズを布で巻いた伝統的な「クロスバウンドスタイル・チェダー」が共存しています。前者は、イギリスであればお財布に優しい価格でスーパーマーケットなどでも大量に出回っており、後者は、特別な機会に味わいながら楽しむちょっとした高級感が漂うチーズとして、専門店やデパートなどで販売されています。 昨今ではヨーロッパ、特にフランスのチェーンのスーパーマーケットでブロック型チェダーが売られていたり、チーズ専門店ではクロスバウンドのチェダーでさえ見かけることもありますが、各国それぞれが主に自国産チーズを取り扱うため、ヨーロッパ大陸でチェダーを見かける機会はまだまだ稀のようです。 イギリスを訪れる際には、ぜひ本場のチェダーチーズを探してみては。イギリス伝統の味を楽しむことができますよ。