イスタンブルのマルマラ海に浮かぶ島々「プリンスィズ諸島(Prens Adaları)」をご存知でしょうか。同諸島のうち、4つの島々へはフェリーボートで気軽に訪れることができます。

フェリーはヨーロッパとアジアの両サイドから発着し、アジアサイドのカドゥキョイ港(Kadıköy İskelesi)から近い順にクナルアダ(Kınalıada)、ブルガズアダ(Burgazada)、ヘイベリアダ(Heybeliada)、ビュユックアダ(Büyükada)と並びます。(「アダ」は島を意味するトルコ語。)

一番大きなビュユックアダまではフェリーで約1時間20分、島と島の間は約15分で結ばれています。デッキで風に吹かれていると、都会の喧騒など忘れてしまうことでしょう。

ヘイベリアダの本屋さんでは可愛いネコがお店番
 © tomoedagli

島には避暑地として栄えた当時の美しい木造建築の邸宅や教会、修道院などが多く残されています。ハイキングやピクニックを楽しむ地元の家族連れやグループに加え、外国からもたくさんの旅行者が訪れます。

ビュユックアダやヘイベリアダでは貸し自転車で回ることもできますが、島はアップダウンが多く、上りはかなりハード。そのため自転車よりも、島の眺望や美しい家並みを楽しみながら歩き、疲れたら主要道路を巡回する電気バスを利用するという方法がお勧めです。

島で見られる典型的な建物(ヘイベリアダ)
© tomoedagli

夏は海水浴客で大変な賑わいとなりますが、オフシーズンの静かな雰囲気もまた味わい深いものがあります。春にはミモザの黄色い花が咲き誇り、3月最初の週末にはミモザフェスティバルも開催されます。

春の訪れを前に島を彩るミモザ(ヘイベリアダ)
© tomoedagli

見どころは、ヨーロッパでは最大、世界でも2番目に大きい木造建築物といわれる、ビュユックアダの丘の上に残る木造5階建て建築「ルム・イェティンハーネスィ(Rum Yetimhanesi)」。

港から30分ほど坂道を上ると、この歴史的遺産を目にすることができます。当初はホテルとして建てられたものの必要な許可が下りなかったため、1903年から1964年までギリシャ人の孤児院として運営されていました。現在ではかなり老朽化が進み、柵に覆われて立ち入り禁止の状態となっていますが、柵の外からでも十分に全体像を眺めることができます。

木造5階建て建築、ルム・イェティンハーネスィ 
© tomoedagli

ビュユックアダの港から歩いて15分ほどの場所にあるのが、イスタンブル市運営の図書館「タシュ・メクテプ・ミュゼスィ(Taş Mektep Müzesi)」。ちなみに、タシュ・メクテプとは「石の学校」という意味です。

もともと19世紀後半に建てられたこの建築物は、綿密で包括的な修復工事を経て島の学習の場へと生まれ変わりました。ワークショップスペースも併設され、2階の展示スペースでは展覧会が催されます。庭にあるカフェや階段で景色を眺めながら、ひと息つく場所としてお勧めです。

石の学校という名の図書館、タシュ・メクテプ・ミュゼスィ
 © tomoedagli

静かに過ごすことがお好みなら、ブルガズアダへ。この島では、現代トルコ文学の先駆者といわれる「サイト・ファイク・アバスヤヌク(Sait Faik Abasıyanık)」の生前過ごした家が博物館となっており、自由に見学することができます。

当時の生活の様子が垣間見える、サイト・ファイク・アバスヤヌクの博物館
 © tomoedagli

素朴さとビーチの美しさで人気なのが、一番小さなクナルアダ。港を出ると、左手には左右対称に建てられた木造3階建アルメニア建築の「スィラクヤン・イキズ・エヴレェリ(Sirakyan İkiz Evleri)/双子の家」があります。急勾配の屋根、窓やドアのデザインなど、細部にまでこだわった美しい姿で私たちを出迎えてくれます。

「双子の家」と呼ばれる姿が印象的なアルメニア建築 
© tomoedagli

しかし、島の歴史は決して穏やかなものだけではありませんでした。ビザンティン時代、ローマ皇帝コンスタンティヌスがイスタンブルを首都とした後、廃位させられた皇帝や権力闘争に敗れた皇子たちが流刑された場所でもあり、島に暮らしていたギリシャ人が国外強制退去になったという歴史もあります。

ビュユックアダのアダラル博物館(Adalar Müzesi)では、島に暮らしたこうした人々の痕跡にも触れることができます。所狭しと並ぶ同館の展示品は多岐にわたり、島々の歴史をさまざまな角度から紹介しています。

躊躇なく膝に飛び乗ってくる、とてもフレンドリーな島のネコ(クナルアダ)
© tomoedagli

イスタンブルを訪れるなら、ぜひこれらの島へも足を伸ばしてみてはいかがでしょうか。

 

投稿者プロフィール

トモエ ダール
トモエ ダール
トルコ・イスタンブルで「SUFi トルコキリムの店・スーフィ」を営む。趣味は水泳、ボスポラス大陸間水泳大会に出場経験あり。古典楽器のクラシックケメンチェを弾くのが日課。
Web: https://sufirugs.com/
https://living-in-eu.com/wp-content/uploads/2026/03/10_2603_tur-prens_top.jpghttps://living-in-eu.com/wp-content/uploads/2026/03/10_2603_tur-prens_top-150x150.jpgトモエ ダールイスタンブルのマルマラ海に浮かぶ島々「プリンスィズ諸島(Prens Adaları)」をご存知でしょうか。同諸島のうち、4つの島々へはフェリーボートで気軽に訪れることができます。 フェリーはヨーロッパとアジアの両サイドから発着し、アジアサイドのカドゥキョイ港(Kadıköy İskelesi)から近い順にクナルアダ(Kınalıada)、ブルガズアダ(Burgazada)、ヘイベリアダ(Heybeliada)、ビュユックアダ(Büyükada)と並びます。(「アダ」は島を意味するトルコ語。) 一番大きなビュユックアダまではフェリーで約1時間20分、島と島の間は約15分で結ばれています。デッキで風に吹かれていると、都会の喧騒など忘れてしまうことでしょう。 ヘイベリアダの本屋さんでは可愛いネコがお店番
 © tomoedagli 島には避暑地として栄えた当時の美しい木造建築の邸宅や教会、修道院などが多く残されています。ハイキングやピクニックを楽しむ地元の家族連れやグループに加え、外国からもたくさんの旅行者が訪れます。 ビュユックアダやヘイベリアダでは貸し自転車で回ることもできますが、島はアップダウンが多く、上りはかなりハード。そのため自転車よりも、島の眺望や美しい家並みを楽しみながら歩き、疲れたら主要道路を巡回する電気バスを利用するという方法がお勧めです。 島で見られる典型的な建物(ヘイベリアダ)
© tomoedagli 夏は海水浴客で大変な賑わいとなりますが、オフシーズンの静かな雰囲気もまた味わい深いものがあります。春にはミモザの黄色い花が咲き誇り、3月最初の週末にはミモザフェスティバルも開催されます。 春の訪れを前に島を彩るミモザ(ヘイベリアダ)
© tomoedagli 見どころは、ヨーロッパでは最大、世界でも2番目に大きい木造建築物といわれる、ビュユックアダの丘の上に残る木造5階建て建築「ルム・イェティンハーネスィ(Rum Yetimhanesi)」。 港から30分ほど坂道を上ると、この歴史的遺産を目にすることができます。当初はホテルとして建てられたものの必要な許可が下りなかったため、1903年から1964年までギリシャ人の孤児院として運営されていました。現在ではかなり老朽化が進み、柵に覆われて立ち入り禁止の状態となっていますが、柵の外からでも十分に全体像を眺めることができます。 木造5階建て建築、ルム・イェティンハーネスィ 
© tomoedagli ビュユックアダの港から歩いて15分ほどの場所にあるのが、イスタンブル市運営の図書館「タシュ・メクテプ・ミュゼスィ(Taş Mektep Müzesi)」。ちなみに、タシュ・メクテプとは「石の学校」という意味です。 もともと19世紀後半に建てられたこの建築物は、綿密で包括的な修復工事を経て島の学習の場へと生まれ変わりました。ワークショップスペースも併設され、2階の展示スペースでは展覧会が催されます。庭にあるカフェや階段で景色を眺めながら、ひと息つく場所としてお勧めです。 石の学校という名の図書館、タシュ・メクテプ・ミュゼスィ
 © tomoedagli 静かに過ごすことがお好みなら、ブルガズアダへ。この島では、現代トルコ文学の先駆者といわれる「サイト・ファイク・アバスヤヌク(Sait Faik Abasıyanık)」の生前過ごした家が博物館となっており、自由に見学することができます。 当時の生活の様子が垣間見える、サイト・ファイク・アバスヤヌクの博物館
 © tomoedagli 素朴さとビーチの美しさで人気なのが、一番小さなクナルアダ。港を出ると、左手には左右対称に建てられた木造3階建アルメニア建築の「スィラクヤン・イキズ・エヴレェリ(Sirakyan İkiz Evleri)/双子の家」があります。急勾配の屋根、窓やドアのデザインなど、細部にまでこだわった美しい姿で私たちを出迎えてくれます。 「双子の家」と呼ばれる姿が印象的なアルメニア建築 
© tomoedagli しかし、島の歴史は決して穏やかなものだけではありませんでした。ビザンティン時代、ローマ皇帝コンスタンティヌスがイスタンブルを首都とした後、廃位させられた皇帝や権力闘争に敗れた皇子たちが流刑された場所でもあり、島に暮らしていたギリシャ人が国外強制退去になったという歴史もあります。 ビュユックアダのアダラル博物館(Adalar Müzesi)では、島に暮らしたこうした人々の痕跡にも触れることができます。所狭しと並ぶ同館の展示品は多岐にわたり、島々の歴史をさまざまな角度から紹介しています。 躊躇なく膝に飛び乗ってくる、とてもフレンドリーな島のネコ(クナルアダ)
© tomoedagli イスタンブルを訪れるなら、ぜひこれらの島へも足を伸ばしてみてはいかがでしょうか。