オランダの花といえば、何といってもチューリップですが、実はその開花期は短く、リッセの街にあるチューリップ栽培で世界的に有名なキューケンホフ公園(Keukenhof Park)も、開園は3月から5月までの約2カ月間に限られています。
しかし、チューリップを見逃したとしても、その後にダリアのシーズンが控えているのをご存知でしょうか。オランダ第二の国花ともいえるダリアは、栽培規模こそチューリップに及ばないものの、種類の多さや目の覚めるような美しさ、迫力のある咲きっぷりで、チューリップに劣らぬ魅力を放っています。
ダリアの開花期は8月初めから10月半ば頃まで。この時期、オランダの南部・西部を中心に次々とダリア園がオープンします。中からキューケンホフ城(Kasteel Keukenhof)の庭園とデ・チュルパレイ(De Tulperij)農園の2カ所を例にとり、オランダでのダリアの楽しみ方をご紹介します。

童話に出てきそうなたたずまいのキューケンホフ城 ⓒ Akiko Shimizu
キューケンホフ城はライデン(Leiden)からバスで30~40分の距離。オランダ最大の花の名所、キューケンホフ公園のすぐ脇にあります。昔は城と公園共に貴族が所有していましたが、現在は財団が両方を管理、運営しています。夏に訪れると、春に賑わう公園の方は閉鎖され、更地になっていますが、代わりに城の庭園のダリアが大ぶりの花を咲かせて出迎えてくれます。

城の庭園であざやかに咲き誇るダリア ⓒ Akiko Shimizu
ダリアはキク科の多年生植物で、色、形、サイズが非常に多様であることで知られています。ここのダリア園には約550種が植えられ、球状の「ボール咲き」やゴージャスな八重の「デコラティブ咲き」など、バラエティーに富んだ花容が見られます。サイズは中輪から大輪が多く、迫力ある開花ぶりが圧巻です。
17世紀築の城はそれほど大きくありませんが、周囲に庭園、牧場、牧草地、森が広がり、敷地は広大な面積を誇っています。次の目的地デ・チュルパレイ農園は、この森を抜け、約6キロ南へ行ったところ。車でない場合は、バス(停留所が遠くやや不便)や貸自転車が使えますが、天気の良い日はハイキング気分で歩くのもいいでしょう。

城から農園へ向かう途中の景色。並木や花畑が美しい ⓒ Akiko Shimizu
今回訪ねる2カ所は、どちらもオランダ西部の「球根地方(バルブ・リージョン)」と呼ばれるエリアにあり、名前が示す通り、この一帯では球根植物の栽培が一大産業となっています。園芸農家が育てるのはチューリップを中心にスイセン、ヒヤシンス、グラジオラス、ダリア(ダリアは正確には塊根植物)など。四方に花畑が広がり、緑濃い並木が続き、水辺に陽の光が反射して・・・と、移動中にも五感で楽しめる風景が展開します。そんなカントリーサイドの道を、時折サイクリストの集団が猛スピードで通過していくのも、「花と自転車の国」オランダらしい景観の一コマです。
倉庫のような建物に花のマークが目印のデ・チュルパレイに到着。ここは家族経営の園芸農園で、春にチューリップ園、夏にダリア園を運営しています。どちらも観賞用の「ショー・ガーデン」と摘み取り用の「ピッキング・ガーデン」の2つの畑があり、入場は無料で、花を摘み取ったらその分の料金のみ支払う仕組みになっています。

デ・チュルパレイ農園のカラフルなショー・ガーデン ⓒ Akiko Shimizu
ショー・ガーデンに入場した途端、目に飛び込んできたのは太陽の下でまぶしく輝くダリアの花、花、花。それが色の洪水となってはるか彼方まで続く光景。美しさに誘われるまま、背の高いダリアの間を散策して回ると、まるで「ダリア浴」をしたかのような爽やかな気分が味わえます。
こちらで栽培されているのは、約600種。ピンクの濃淡のまだら模様、黄色に赤の縁取り、また精巧な切り紙細工のような造りから大輪の花火を思わせるものまで色、形ともさまざま。間近でダリアに向き合うと、自然の驚異を感じずにいられません。

インテリアの参考にしたくなるカフェの活け花と名物ダリア・アイスクリーム・ペイストリー ⓒ De Tulperij
園内にあるカフェで目に入るのは、各テーブルにダリアの切り花を配した素朴にして心温まるセッティング。ここで畑を見ながら、名物のダリア・アイスクリーム・ペイストリー(ダリア型をしたチョコレートとアイスクリームのお菓子)をいただくと、ダリアづくしの特別なティータイムになります。
ピッキング・ガーデンの方では、花を摘むだけでなく、花束の作り方や活け花の手ほどきも受けられます。また、この園では花刺しゅう教室や植栽講座など花関連のワークショップも開かれているので、日程が合ったら参加してみるのもいいでしょう。加えて、夏の終わりはダリア祭りの季節。「ダリア・デイズ」「ダリア・モザイク・コンペティション」などのイベントで、地元の人も観光客も盛り上がります。このように、オランダでは一つの花を巡っていくつもの楽しみ方が用意されています。

(左)デ・チュルパレイのおみやげショップ ⓒ Akiko Shimizu、(右)ドレスアップしたダリア祭りの参加者 ⓒ De Tulperij
オランダはチューリップだけではありません。夏休みに行ける「ダリア観賞の旅」を計画してみてはいかがでしょうか。ダリアの花言葉は「気品」と「華麗」。園芸大国オランダで体験するダリア園探訪は、華やかで明るい色が記憶に焼きつく、忘れられない思い出となるでしょう。
INFORMATION
キューケンホフ城 Kasteel Keukenhof
デ・チュルパレイ農園 De Tulperij
投稿者プロフィール
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清水晶子 / Akiko Shimizu
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ロンドン在住ジャーナリスト。東京都出身。出版社勤務の後独立。英国/ヨーロッパ文化についての原稿を雑誌、ウェブマガジン、書籍用に執筆。著書に「ロンドンの小さな博物館」(集英社新書)、「ロンドン近未来都市デザイン」(東京書籍)、「英国ヘンな旅先案内」(平凡社)など。
ミュージアム・インスタグラム
https://living-in-eu.com/european-cities/202607_dahliahttps://living-in-eu.com/wp-content/uploads/2026/07/14_2607_dahlia_top.jpghttps://living-in-eu.com/wp-content/uploads/2026/07/14_2607_dahlia_top-150x150.jpg清水晶子 / Akiko Shimizuオランダの花といえば、何といってもチューリップですが、実はその開花期は短く、リッセの街にあるチューリップ栽培で世界的に有名なキューケンホフ公園(Keukenhof Park)も、開園は3月から5月までの約2カ月間に限られています。
しかし、チューリップを見逃したとしても、その後にダリアのシーズンが控えているのをご存知でしょうか。オランダ第二の国花ともいえるダリアは、栽培規模こそチューリップに及ばないものの、種類の多さや目の覚めるような美しさ、迫力のある咲きっぷりで、チューリップに劣らぬ魅力を放っています。
ダリアの開花期は8月初めから10月半ば頃まで。この時期、オランダの南部・西部を中心に次々とダリア園がオープンします。中からキューケンホフ城(Kasteel Keukenhof)の庭園とデ・チュルパレイ(De Tulperij)農園の2カ所を例にとり、オランダでのダリアの楽しみ方をご紹介します。
童話に出てきそうなたたずまいのキューケンホフ城 ⓒ Akiko Shimizu
キューケンホフ城はライデン(Leiden)からバスで30~40分の距離。オランダ最大の花の名所、キューケンホフ公園のすぐ脇にあります。昔は城と公園共に貴族が所有していましたが、現在は財団が両方を管理、運営しています。夏に訪れると、春に賑わう公園の方は閉鎖され、更地になっていますが、代わりに城の庭園のダリアが大ぶりの花を咲かせて出迎えてくれます。
城の庭園であざやかに咲き誇るダリア ⓒ Akiko Shimizu
ダリアはキク科の多年生植物で、色、形、サイズが非常に多様であることで知られています。ここのダリア園には約550種が植えられ、球状の「ボール咲き」やゴージャスな八重の「デコラティブ咲き」など、バラエティーに富んだ花容が見られます。サイズは中輪から大輪が多く、迫力ある開花ぶりが圧巻です。
17世紀築の城はそれほど大きくありませんが、周囲に庭園、牧場、牧草地、森が広がり、敷地は広大な面積を誇っています。次の目的地デ・チュルパレイ農園は、この森を抜け、約6キロ南へ行ったところ。車でない場合は、バス(停留所が遠くやや不便)や貸自転車が使えますが、天気の良い日はハイキング気分で歩くのもいいでしょう。
城から農園へ向かう途中の景色。並木や花畑が美しい ⓒ Akiko Shimizu
今回訪ねる2カ所は、どちらもオランダ西部の「球根地方(バルブ・リージョン)」と呼ばれるエリアにあり、名前が示す通り、この一帯では球根植物の栽培が一大産業となっています。園芸農家が育てるのはチューリップを中心にスイセン、ヒヤシンス、グラジオラス、ダリア(ダリアは正確には塊根植物)など。四方に花畑が広がり、緑濃い並木が続き、水辺に陽の光が反射して・・・と、移動中にも五感で楽しめる風景が展開します。そんなカントリーサイドの道を、時折サイクリストの集団が猛スピードで通過していくのも、「花と自転車の国」オランダらしい景観の一コマです。
倉庫のような建物に花のマークが目印のデ・チュルパレイに到着。ここは家族経営の園芸農園で、春にチューリップ園、夏にダリア園を運営しています。どちらも観賞用の「ショー・ガーデン」と摘み取り用の「ピッキング・ガーデン」の2つの畑があり、入場は無料で、花を摘み取ったらその分の料金のみ支払う仕組みになっています。
デ・チュルパレイ農園のカラフルなショー・ガーデン ⓒ Akiko Shimizu
ショー・ガーデンに入場した途端、目に飛び込んできたのは太陽の下でまぶしく輝くダリアの花、花、花。それが色の洪水となってはるか彼方まで続く光景。美しさに誘われるまま、背の高いダリアの間を散策して回ると、まるで「ダリア浴」をしたかのような爽やかな気分が味わえます。
こちらで栽培されているのは、約600種。ピンクの濃淡のまだら模様、黄色に赤の縁取り、また精巧な切り紙細工のような造りから大輪の花火を思わせるものまで色、形ともさまざま。間近でダリアに向き合うと、自然の驚異を感じずにいられません。
インテリアの参考にしたくなるカフェの活け花と名物ダリア・アイスクリーム・ペイストリー ⓒ De Tulperij
園内にあるカフェで目に入るのは、各テーブルにダリアの切り花を配した素朴にして心温まるセッティング。ここで畑を見ながら、名物のダリア・アイスクリーム・ペイストリー(ダリア型をしたチョコレートとアイスクリームのお菓子)をいただくと、ダリアづくしの特別なティータイムになります。
ピッキング・ガーデンの方では、花を摘むだけでなく、花束の作り方や活け花の手ほどきも受けられます。また、この園では花刺しゅう教室や植栽講座など花関連のワークショップも開かれているので、日程が合ったら参加してみるのもいいでしょう。加えて、夏の終わりはダリア祭りの季節。「ダリア・デイズ」「ダリア・モザイク・コンペティション」などのイベントで、地元の人も観光客も盛り上がります。このように、オランダでは一つの花を巡っていくつもの楽しみ方が用意されています。
(左)デ・チュルパレイのおみやげショップ ⓒ Akiko Shimizu、(右)ドレスアップしたダリア祭りの参加者 ⓒ De Tulperij
オランダはチューリップだけではありません。夏休みに行ける「ダリア観賞の旅」を計画してみてはいかがでしょうか。ダリアの花言葉は「気品」と「華麗」。園芸大国オランダで体験するダリア園探訪は、華やかで明るい色が記憶に焼きつく、忘れられない思い出となるでしょう。
INFORMATION
キューケンホフ城 Kasteel Keukenhof
デ・チュルパレイ農園 De Tulperij清水晶子 / Akiko Shimizu晶子
清水auther08@a-concept.co.ukAuthorロンドン在住ジャーナリスト。東京都出身。出版社勤務の後独立。英国/ヨーロッパ文化についての原稿を雑誌、ウェブマガジン、書籍用に執筆。著書に「ロンドンの小さな博物館」(集英社新書)、「ロンドン近未来都市デザイン」(東京書籍)、「英国ヘンな旅先案内」(平凡社)など。
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