夏の旅行シーズンが終わり、早くもクリスマス休暇の過ごし方をお考えの方もいらっしゃるかもしれません。しかしEU域外居住者の移動を追跡する規則が改正されることをご存知でしょうか。

さらに、来年末までには、渡航許可を得るための「欧州渡航情報認証制度(European Travel Information and Authorisation System/ETIAS)も導入される予定です。

Image by Gerd Altmann from Pixabay

新しいルールの内容

29カ国からなるシェンゲン協定圏への旅行者に関わるルールは2つあります。

① 出入域システム(EES System)
シェンゲン協定国への渡航方法を一変させる新しいデジタル国境システム、EES。EUの対外国境管理の近代化・効率化を目的とした制度で、2025年10月12日(日)から導入されます。旅行者はシステムに登録し、顔や指紋のスキャンなどの生体認証チェックを受けることになります。パスポートにスタンプが押される時代の終焉かもしれません。

シェンゲン圏への初回入国時に、空港、鉄道駅、フェリー港の専用ブースで指紋を提出し、写真撮影を行うことでデジタル記録を作成します。EU加盟国内でのステータス確認のためパスポートもスキャンし、場合によっては質問を受けることもあります。手続きは自国での事前登録はできず、シェンゲン圏の渡航先で行い*、手数料などはかかりません。12歳未満の子どもの場合は顔のスキャンのみで、指紋採取はありません。EES記録は3年間有効で、この期間中は再入国も可能ですが、入国するたびに指紋と写真が確認されます。
*ドーバー、ユーロトンネル、ユーロスターを経由してシェンゲン協定国へ旅行する場合のみ、旅行前にチェックが行われます。

29カ国からなるシェンゲン協定圏*内に、180日以内で最長90日間の短期滞在で渡航する場合は、EESシステムを利用する必要があります。
*オーストリア、ベルギー、ブルガリア、クロアチア、チェコ共和国、デンマーク、エストニア、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、アイスランド、イタリア、ラトビア、リヒテンシュタイン、リトアニア、ルクセンブルク、マルタ、オランダ、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、ルーマニア、スロバキア、スロベニア、スペイン、スウェーデン、スイス。
キプロスとアイルランドはEU加盟国ですが、これらの国に渡航する場合は、引き続きパスポートにスタンプが押されます。

EESシステムは2025年10月12日より段階的に導入され、来年4月までに完了する予定。陸海空、どの経路を使っても最終的にEESに登録する必要があります。

例外:
クルーズ船でイギリスの港を出発し、イギリスの港に戻る場合には、シェンゲン協定国に立ち寄ったとしても、EESに登録する必要はありません。
※クルーズ乗船のためにEU加盟国へ渡航する場合や、クルーズの最終目的地がEU加盟国の場合には、EES手続きを完了する必要があります。

② 欧州渡航情報認証制度(European Travel Information and Authorisation System/ETIAS)

ETIASとは、日本やイギリスを含む59カ国の「ビザ免除」国からの渡航者にEUへの入国許可を求める新たな規則です。前出のEESシステムに参加している国への渡航には、このETIASが必要となります。

渡航者ごとに、氏名、生年月日、性別、国籍、自宅住所、メールアドレス、電話番号などの個人情報の他、パスポートの詳細、学歴、現在の職業、渡航予定の詳細、過去の紛争地域への渡航歴も提出しなくてはなりません。

ETIASの導入はこれまでに何度か延期になっていますが、現在のところは2026年末が予定されています。いよいよETIASが発効されたら、公式のETIASウェブサイトまたはアプリから申請書に記入して許可を取得することになります。申請は早い人なら数分で処理される場合もある一方、面接が必要と認定されると最大30日かかる場合もあるようです。面接は訪問先の国の大使館か領事館で行われ、書類の説明やセキュリティチェックで指摘された情報が確認されます。旅行前に認可が下りないという事態を避けるためにも、ETIASは十分な時間を取って申請することをお勧めします。

ETIASの有効期間は3年間。ただし、ETIASは申請時に使用したパスポートなどの渡航書類にリンクされるため、有効期限前にパスポートの有効期限が切れると、新しいETIASを申請する必要があります。

EITASの申請には20ユーロがかかりますが、18歳未満または70歳以上の場合は無料です。

参照記事:European Commission Migration and Home Affairs
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https://living-in-eu.com/wp-content/uploads/2025/10/06_2510_top.jpghttps://living-in-eu.com/wp-content/uploads/2025/10/06_2510_top-150x150.jpgLiE 編集部夏の旅行シーズンが終わり、早くもクリスマス休暇の過ごし方をお考えの方もいらっしゃるかもしれません。しかしEU域外居住者の移動を追跡する規則が改正されることをご存知でしょうか。 さらに、来年末までには、渡航許可を得るための「欧州渡航情報認証制度(European Travel Information and Authorisation System/ETIAS)も導入される予定です。 Image by Gerd Altmann from Pixabay 新しいルールの内容 29カ国からなるシェンゲン協定圏への旅行者に関わるルールは2つあります。 ① 出入域システム(EES System) シェンゲン協定国への渡航方法を一変させる新しいデジタル国境システム、EES。EUの対外国境管理の近代化・効率化を目的とした制度で、2025年10月12日(日)から導入されます。旅行者はシステムに登録し、顔や指紋のスキャンなどの生体認証チェックを受けることになります。パスポートにスタンプが押される時代の終焉かもしれません。 シェンゲン圏への初回入国時に、空港、鉄道駅、フェリー港の専用ブースで指紋を提出し、写真撮影を行うことでデジタル記録を作成します。EU加盟国内でのステータス確認のためパスポートもスキャンし、場合によっては質問を受けることもあります。手続きは自国での事前登録はできず、シェンゲン圏の渡航先で行い*、手数料などはかかりません。12歳未満の子どもの場合は顔のスキャンのみで、指紋採取はありません。EES記録は3年間有効で、この期間中は再入国も可能ですが、入国するたびに指紋と写真が確認されます。 *ドーバー、ユーロトンネル、ユーロスターを経由してシェンゲン協定国へ旅行する場合のみ、旅行前にチェックが行われます。 29カ国からなるシェンゲン協定圏*内に、180日以内で最長90日間の短期滞在で渡航する場合は、EESシステムを利用する必要があります。 *オーストリア、ベルギー、ブルガリア、クロアチア、チェコ共和国、デンマーク、エストニア、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、アイスランド、イタリア、ラトビア、リヒテンシュタイン、リトアニア、ルクセンブルク、マルタ、オランダ、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、ルーマニア、スロバキア、スロベニア、スペイン、スウェーデン、スイス。 キプロスとアイルランドはEU加盟国ですが、これらの国に渡航する場合は、引き続きパスポートにスタンプが押されます。 EESシステムは2025年10月12日より段階的に導入され、来年4月までに完了する予定。陸海空、どの経路を使っても最終的にEESに登録する必要があります。 例外: クルーズ船でイギリスの港を出発し、イギリスの港に戻る場合には、シェンゲン協定国に立ち寄ったとしても、EESに登録する必要はありません。 ※クルーズ乗船のためにEU加盟国へ渡航する場合や、クルーズの最終目的地がEU加盟国の場合には、EES手続きを完了する必要があります。 ② 欧州渡航情報認証制度(European Travel Information and Authorisation System/ETIAS) ETIASとは、日本やイギリスを含む59カ国の「ビザ免除」国からの渡航者にEUへの入国許可を求める新たな規則です。前出のEESシステムに参加している国への渡航には、このETIASが必要となります。 渡航者ごとに、氏名、生年月日、性別、国籍、自宅住所、メールアドレス、電話番号などの個人情報の他、パスポートの詳細、学歴、現在の職業、渡航予定の詳細、過去の紛争地域への渡航歴も提出しなくてはなりません。 ETIASの導入はこれまでに何度か延期になっていますが、現在のところは2026年末が予定されています。いよいよETIASが発効されたら、公式のETIASウェブサイトまたはアプリから申請書に記入して許可を取得することになります。申請は早い人なら数分で処理される場合もある一方、面接が必要と認定されると最大30日かかる場合もあるようです。面接は訪問先の国の大使館か領事館で行われ、書類の説明やセキュリティチェックで指摘された情報が確認されます。旅行前に認可が下りないという事態を避けるためにも、ETIASは十分な時間を取って申請することをお勧めします。 ETIASの有効期間は3年間。ただし、ETIASは申請時に使用したパスポートなどの渡航書類にリンクされるため、有効期限前にパスポートの有効期限が切れると、新しいETIASを申請する必要があります。 EITASの申請には20ユーロがかかりますが、18歳未満または70歳以上の場合は無料です。 参照記事:European Commission Migration and Home Affairs Mail Online