ロッテルダムから南東約20キロに位置する落ち着いた小都市、ドルトレヒト。多くの河川が交差する立地から、かつて貿易や国防の鍵を握り、オランダの長い歴史の転換点で繰り返し重要な役割を担ってきたホラント州最古の街です。レンガ造りの建物が立ち並ぶ旧市街は風情があり、立ち止まってよく見てみると手の込んだ装飾も多く残っており豊かさを感じさせます。

ヨットハーバーの先にはゴシック建築のドルドレヒト大教会が見える
© Ibuki&Pen

観光地としてはあまり広く知られていないドルトレヒトですが、オランダの学校では必ず教える、この街とは切っても切れない歴史的な出来事が2つあります。

1つ目は、当時「アウグスチノ会修道院」であり、現在は「ヘット・ホフ」と呼ばれるこの街の一角で、オランダが独立国家としての第一歩を踏み出したことです。16世紀後半、カトリックのスペイン国王の支配下にあったネーデルラント北部諸州は、プロテスタントに対する弾圧等に耐え兼ねて反乱を起こしました。1572年にはヘット・ホフで第1回自由州会議を開催し、現在のオランダ国王にまでつながるオラニエ公ウィレム1世を総督に任命し、更なる戦いに備えました。その後も、この国が今の形になるまでにはまだ多くの紆余曲折がありましたが、独立国家としてのオランダは、まさにこの場所で産声を上げたことから、ドルドレヒトは「オランダのゆりかご」と呼ばれています。

質素を好むプロテスタントらしさを感じさせるオランダのゆりかご「ヘット・ホフ」
© Ibuki&Pen

2つ目は、17世紀初頭にオランダで吹き荒れた聖書の解釈を巡る大論争に終止符を打った「ドルト会議」です。その舞台の一つとなった「ドルトレヒト大教会」の雄姿は現在も街のシンボルとなっており、高さおよそ65メートルの塔からはロッテルダムやユトレヒトまでをも見渡すことができます。

アンティークやビンテージアイテムを扱う店も多い
© Ibuki&Pen

旧市街は複数の小さな島の上にまたがって広がっており、モニュメントやミュージアムだけでなく、骨董屋やカフェも多くあります。小さな橋をいくつも渡りながら、歴史が動いた瞬間を見守ってきたスポットを散策し、ヨーロッパで最も交通量が多い広大な河川を眺めながら時の流れに思いを馳せれば、きっとオランダという国の生い立ちを深く感じ取ることができるでしょう。

一息つける心地よいカフェは街の至るところにある
© Ibuki&Pen

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https://living-in-eu.com/wp-content/uploads/2025/08/2508_04-netherlands_01.jpghttps://living-in-eu.com/wp-content/uploads/2025/08/2508_04-netherlands_01-150x150.jpglieロッテルダムから南東約20キロに位置する落ち着いた小都市、ドルトレヒト。多くの河川が交差する立地から、かつて貿易や国防の鍵を握り、オランダの長い歴史の転換点で繰り返し重要な役割を担ってきたホラント州最古の街です。レンガ造りの建物が立ち並ぶ旧市街は風情があり、立ち止まってよく見てみると手の込んだ装飾も多く残っており豊かさを感じさせます。 ヨットハーバーの先にはゴシック建築のドルドレヒト大教会が見える
© Ibuki&Pen 観光地としてはあまり広く知られていないドルトレヒトですが、オランダの学校では必ず教える、この街とは切っても切れない歴史的な出来事が2つあります。 1つ目は、当時「アウグスチノ会修道院」であり、現在は「ヘット・ホフ」と呼ばれるこの街の一角で、オランダが独立国家としての第一歩を踏み出したことです。16世紀後半、カトリックのスペイン国王の支配下にあったネーデルラント北部諸州は、プロテスタントに対する弾圧等に耐え兼ねて反乱を起こしました。1572年にはヘット・ホフで第1回自由州会議を開催し、現在のオランダ国王にまでつながるオラニエ公ウィレム1世を総督に任命し、更なる戦いに備えました。その後も、この国が今の形になるまでにはまだ多くの紆余曲折がありましたが、独立国家としてのオランダは、まさにこの場所で産声を上げたことから、ドルドレヒトは「オランダのゆりかご」と呼ばれています。 質素を好むプロテスタントらしさを感じさせるオランダのゆりかご「ヘット・ホフ」
© Ibuki&Pen 2つ目は、17世紀初頭にオランダで吹き荒れた聖書の解釈を巡る大論争に終止符を打った「ドルト会議」です。その舞台の一つとなった「ドルトレヒト大教会」の雄姿は現在も街のシンボルとなっており、高さおよそ65メートルの塔からはロッテルダムやユトレヒトまでをも見渡すことができます。 アンティークやビンテージアイテムを扱う店も多い
© Ibuki&Pen 旧市街は複数の小さな島の上にまたがって広がっており、モニュメントやミュージアムだけでなく、骨董屋やカフェも多くあります。小さな橋をいくつも渡りながら、歴史が動いた瞬間を見守ってきたスポットを散策し、ヨーロッパで最も交通量が多い広大な河川を眺めながら時の流れに思いを馳せれば、きっとオランダという国の生い立ちを深く感じ取ることができるでしょう。 一息つける心地よいカフェは街の至るところにある
© Ibuki&Pen