フランス西端、ブルターニュ地方に静かに佇むカンペール。観光地の喧噪から距離を置き、暮らしや手仕事を大切に守り続ける姿が、人々を惹きつけてやみません。

サン・コランタン大聖堂は15世紀建立のゴシック様式。空へと伸びる尖塔は、夕暮れに黄金色をまとい、訪れる人を中世の時代へ誘う。
Photo by Arnauld van Wambeke

中世の面影を残す旧市街には石畳の小路が続き、木組みの家が寄り添うように並んでいます。その中心にそびえるのは、15世紀に建立されたゴシック様式のサン・コランタン大聖堂(Cathédrale Saint-Corentin)。空へと伸びる荘厳な尖塔を仰ぐと、まるで時代を越えて中世に誘われるかのようです。夕暮れの光を浴びて大聖堂が黄金に輝く瞬間は、訪れる人の心をとらえて離さない、忘れ得ぬ情景となるでしょう。

街の文化を知るならブルターニュ博物館(Musée Départemental Breton)へ。古代から伝わる生活道具や美術作品、この地特有の民族衣装などが展示され、地域の暮らしを身近に感じることができます。

古代の道具や民族衣装が語る、地域の歴史と文化。ブルターニュの暮らしを身近に感じさせてくれるブルターニュ博物館
El Funcionario(Creative Commons)

かつて陶器の街として栄えたカンペールでは、今も「カンペール焼き(Quimper Faience)」が一部の工房で作られています。素朴な絵付けの器にはブルターニュの生活が息づき、日常に寄り添う美しさが感じられます。

そして旅の楽しみといえばやはり「食」。ブルターニュ名物のそば粉のクレープは、地元で「ブレ・ノワール/黒い麦(Blé Noir)」と呼ばれ親しまれています。旧市街の中心にある「バター広場(Place au Beurre)」にはクレープ店が密集し、それぞれ個性豊かな一枚を焼き上げています。

土地に根ざした名物料理。左はマスの燻製とほうれん草、右はチーズ・卵・アンドゥイユソーセージ

美食を求める方には、街から約28キロ離れたプロモディエルヌの「オーベルジュ・デ・グラジック(Auberge des Glazicks)」がお勧め。海と山に囲まれた自然豊かな地に立つ、曾祖母の代から続く宿付きレストランです。

クラシックの基本を守り抜き、常に最高のクオリティを追求する料理人、オーベルジュ・デ・グラジックのシェフ、オリヴィエ・ベラン氏。ロブションに学んだ 完璧さを胸に、ブルターニュの自然を皿へと映す

シェフのオリヴィエ・ベラン氏は、ジョエル・ロブションのもとで腕を磨き、2010年から今日までミシュラン二つ星を守り続けています。ブルターニュの新鮮な魚介を中心とした料理は、伝統と現代性を融合させたもの。素材の旨味を生かしつつ、意外性のある香りや食感を組み合わせ、洗練された調和を生み出しています。足を延ばして訪れる価値のある、記憶に残る一軒です。

海の恵みを中心に紡ぐ、繊細で調和のとれた料理で知られるレストラン、オーベルジュ・デ・グラジック。五感で味わうブルターニュ地方の美食体験を!

旅の記憶をやさしく彩ってくれるカンペールには、静けさの中に歴史と食の豊かさが息づいています。

時を重ねた石畳と木組みの家並み。静かな街角に息づく中世の面影が立ち上がる

INFORMATION
オーベルジュ・デ・グラジック Auberge des Glazicks
7 rue de la Plage 29550 Plomodiern

投稿者プロフィール

魚住桜子
魚住桜子パリ在住のフリーランス・ライター
食と映画を中心にライフスタイルにまつわる取材や執筆を行う。
著書『映画の声を聴かせて フランス・ヨーロッパ映画人インタビュー』森話社
https://living-in-eu.com/wp-content/uploads/2025/09/06_2510_quimper_top.jpghttps://living-in-eu.com/wp-content/uploads/2025/09/06_2510_quimper_top-150x150.jpg魚住桜子フランス西端、ブルターニュ地方に静かに佇むカンペール。観光地の喧噪から距離を置き、暮らしや手仕事を大切に守り続ける姿が、人々を惹きつけてやみません。 サン・コランタン大聖堂は15世紀建立のゴシック様式。空へと伸びる尖塔は、夕暮れに黄金色をまとい、訪れる人を中世の時代へ誘う。 Photo by Arnauld van Wambeke 中世の面影を残す旧市街には石畳の小路が続き、木組みの家が寄り添うように並んでいます。その中心にそびえるのは、15世紀に建立されたゴシック様式のサン・コランタン大聖堂(Cathédrale Saint-Corentin)。空へと伸びる荘厳な尖塔を仰ぐと、まるで時代を越えて中世に誘われるかのようです。夕暮れの光を浴びて大聖堂が黄金に輝く瞬間は、訪れる人の心をとらえて離さない、忘れ得ぬ情景となるでしょう。 街の文化を知るならブルターニュ博物館(Musée Départemental Breton)へ。古代から伝わる生活道具や美術作品、この地特有の民族衣装などが展示され、地域の暮らしを身近に感じることができます。 古代の道具や民族衣装が語る、地域の歴史と文化。ブルターニュの暮らしを身近に感じさせてくれるブルターニュ博物館 El Funcionario(Creative Commons) かつて陶器の街として栄えたカンペールでは、今も「カンペール焼き(Quimper Faience)」が一部の工房で作られています。素朴な絵付けの器にはブルターニュの生活が息づき、日常に寄り添う美しさが感じられます。 そして旅の楽しみといえばやはり「食」。ブルターニュ名物のそば粉のクレープは、地元で「ブレ・ノワール/黒い麦(Blé Noir)」と呼ばれ親しまれています。旧市街の中心にある「バター広場(Place au Beurre)」にはクレープ店が密集し、それぞれ個性豊かな一枚を焼き上げています。 土地に根ざした名物料理。左はマスの燻製とほうれん草、右はチーズ・卵・アンドゥイユソーセージ 美食を求める方には、街から約28キロ離れたプロモディエルヌの「オーベルジュ・デ・グラジック(Auberge des Glazicks)」がお勧め。海と山に囲まれた自然豊かな地に立つ、曾祖母の代から続く宿付きレストランです。 クラシックの基本を守り抜き、常に最高のクオリティを追求する料理人、オーベルジュ・デ・グラジックのシェフ、オリヴィエ・ベラン氏。ロブションに学んだ “完璧さ” を胸に、ブルターニュの自然を皿へと映す シェフのオリヴィエ・ベラン氏は、ジョエル・ロブションのもとで腕を磨き、2010年から今日までミシュラン二つ星を守り続けています。ブルターニュの新鮮な魚介を中心とした料理は、伝統と現代性を融合させたもの。素材の旨味を生かしつつ、意外性のある香りや食感を組み合わせ、洗練された調和を生み出しています。足を延ばして訪れる価値のある、記憶に残る一軒です。 海の恵みを中心に紡ぐ、繊細で調和のとれた料理で知られるレストラン、オーベルジュ・デ・グラジック。五感で味わうブルターニュ地方の美食体験を! 旅の記憶をやさしく彩ってくれるカンペールには、静けさの中に歴史と食の豊かさが息づいています。 時を重ねた石畳と木組みの家並み。静かな街角に息づく中世の面影が立ち上がる INFORMATION オーベルジュ・デ・グラジック Auberge des Glazicks 7 rue de la Plage 29550 Plomodiern